写真の中の人に、会いに行きました。
それは、波打ち際に腰を落とし片膝をついて、モリのような道具を今にも放り投げて何かをとろうとしている人の写真。うひゃあ。かっこいい、
いったい何をしているのでしょう?
なんと、昆布漁なんです。
拾い昆布といって、海の中の岩盤から強い波のチカラでひっぱがされ、岸に打ちあがった昆布を拾う漁です。
この写真は拾う、って感じじゃないですよね。獲る。
えりも岬の東、十勝の広尾町にお住まいの漁師、☆君@昆布と海の人さんです。
こんな漁は見たことがなくて、
このひとに、いつか会ってみたいと願っていたら機会がやってきたのです。
☆君@昆布と海の人さんはその日、昆布が打ち上げられている浜に連れていってくれました。
下の写真をご覧ください。波頭の下に、黒く見えるのが昆布です。
上の写真では、もっと沖にマッケ(モリのような道具)を放り込んで、手繰り寄せています。
うひゃー!!!よく立っていられるなぁ!!!そのうえ重い昆布を手繰り寄せるなんて、どんな筋肉マンなんだろう。
この土地での昆布漁の記録があるのは、1800年代の始め。江戸時代にエトロフ航路ができて、道東の昆布が本州に運ばれるようになった年から間もない時期です。
こうして打ち上がった昆布は、まさに宝の山でしたし、それは今も変わりません。
こうして集めた昆布は、トラックで近くの滝に運び、きれいに洗います。
フンベ(クジラ)の滝。道路沿いにありますよ。(動画を見てね😉)
洗った昆布は再びトラックに乗せて、干場に運びます。
☆君@昆布と海の人さんの干場は、この滝の上のほうにあります。
おてんとさまで、ほぼ干せている昆布。
今まで見てきた日高昆布よりも、細く、長いです。
日高昆布と道東の長昆布と、両方の性質を持った昆布なんですって!!!
なんと、広尾オリジナル昆布じゃないですか!!!
やわらかくなりやすく、厚く育ったのからも濃い出汁がとれるってこと。
ちなみに、小さめで平らな石は海の石。表面温度が50度くらいになります。欠点は平らなために昆布がくっついてしまうことがあること。そこで川の石も投入しています。丸くて表面がガサガサした石です。(赤い石は川の石です)
え?川の石???
そうなんです。
この干場の周りは広葉樹林。
森できれいになった水は、滝になったり海に注ぐ小さな川になっているのです。
さて、すっかり乾いた昆布は、こうして集めます。
お父さんとお母さんです。
昆布の仕事は、家族で行います。
いくつかの産地で聞いた話では、昔はこどもたちも学校に行く前に手伝ったとか、昆布仕事のお手伝いで遅刻したこどもは叱られなかったとか。
年齢や体力に応じて、できる仕事をするのが昆布仕事の歴史です。
さぁ、こちらの方こそが☆君@昆布と海の人さんです!!!会えました!!
保志弘一(ほしひろかず)さん。
広尾町の漁家の三代目。林業にも6年間携わった保志さん。
意欲的に漁業に取り組む中で、ツブ貝は昨年の赤潮の被害に直面。がんばっていた計画はふっとんでしまい。。もうほんとにがっかりで。。その時、彼を助けたのは、広尾未来塾で繋がっていた異業種の仲間たち。
その中の建築デザイナーの言葉に、保志さんは、違う視点からのものの見方で世界が変わることを実感します。
「この仲間といっしょだったら、このキツイ経験を乗り越えた時にネタにできるんじゃないかなと思った」
一等昆布にするためにカットする昆布からはどうしてもロスが出ます。それをどう加工したら昆布のポテンシャルを引き出した使いやすい商品になるのか。
昆布漁師としては新米に近かった保志さんは、勉強に没頭しました。歴史、種類の特徴、成分。この町の昆布を知るほどに夢中になりました。
学ぶうちに、そして仲間との時間の中に、方向が見えてきました。
およそ250年もの間、この地に引き継がれてきた昆布漁、昆布の価値を高めよう。
そして生まれたのが、ロスになっていた部分を砕いた「星屑昆布」です。
広尾の昆布を最高のパフォーマンスを出す大きさに砕くこと。成分分析をしながらベストを追求しました。
保志さんの後ろに見えるのは、その建築家がデザインした、コンテナを使った昆布の乾燥室と、加工場です。
コンテナのブルーグリーンは、森と空に溶け込む色です。
ここを人が集まる場所にすることが保志さんの目下の目標です。
乾燥機。コンテナの中を温風が吹き抜けます。
乾燥後の昆布を電動ミルで粉砕します。1.5ミリ角にたどり着きました。
粉になった部分ももちろん、別に使いますよ。
この仲間たち、広尾町のガイドブックを作っています。
なんというパワーでしょうか。うう、、ま、まぶしいー。
次の写真は、昆布が集まる浜のもうひとつの顔です。ヨロヨロになった昆布が溜まる場所。こうして腐っていきます。
保志さんは、この昆布を肥料にすることも考えています。
昆布で人が集まる場所、町にしたいと、保志さんはまっすぐに進んでいます。
昆布浜では、遠くから来たシニアグループが、昆布集めを手伝ったり。
ほら、それって昔ながらの北海道の昆布の産地でのこと。
そうやって彼は、昆布の産地の文化を伝えているのです。
異業種の仲間たちに出会ったことで、広尾の昆布の可能性を見つけたこと、
仲間たちへのリスペクトが言葉の端々に出る保志さん。
その仲間たちとのスクラムの中に、「星屑昆布」があるんだなぁ。。
一枚の写真が出会わせてくれたひとは、それはそれは素敵な昆布漁師だったのです。
どうです?北海道にはこんなにすてきな人たちがいるんですよー。
えっへーん!!