本当の話
「ウソという鳥がいます。ホントです。」
或るところに虫がいます。名を蜮(ウィ)と言います。
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ほんとうはね、主に泣いています。
旅行は言うまでもなく、花火大会、それからコンサート、…挙げだせばきりがないけど…おおよそ人々が楽しみに行くところに。
花火大会は銃撃戦だ。
あたりが眩く輝いた、次の瞬間。爆音に貫かれ、私の心は息絶える。
耐え難い痛みに、歯を食いしばりながら気づかれぬよう涙をこぼす。
コンサートは津波だ。
音が大群をなして襲ってきたかと思えば、
私からすべてを引き剥がして奪い去る。
耐え難い喪失感に呆然と号泣する。
旅行は私刑だ。
向かうところ敵ばかり。奴らは意味のわからぬ言葉を発しながら次々と現れる。私は必死に抵抗し、要求と主張を通すためにもがくばかり。
耐え難い恐怖に、涙すらでない。
何が美しいのか、何に惹かれ、あんなに大勢の人間が集まるのか未だに分からない。
***
蜮は私の中にいます。
私の心の臓に、しがみついていています。
臆病でちいさなそれは、私の心臓に食い込むほどしがみついています。
ぷるぷると震えています。
***
痛くても寂しくても怖くても、私がそれらをやめられないのは。
心とともに蜮がちぎれ飛ぶのが、
たまらなく、快感だからだ。
蜮は、ちぎれてもぷるぷると震えながら再生する。
奴を閃光のもとにあぶり出し、潰すためなら、
私は何度でも心を殺そう。
殺すたび空虚になる心には、
ますます奴が食い込むのだけど。
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