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憧れの万年筆

わたしは万年筆にちょっとした思い出がある

きっとそれは、私と彼だけのちょっと特別な約束なのだ




私が初めて万年筆という物の存在を知ったのは
ある人からの手紙だった

そう、おじいちゃんからの手紙




おじいちゃんと私の関係を一言で表すのであれば
文通友達


おじいちゃんは筆まめな人だ
事あるごとに手紙を送ってくれる

毎年見に来てくれていた運動会の後は
撮った写真の焼き増しと共に手紙が添えられていた


おじいちゃんの手紙はいつも縦書きで
青色のインクで文字が書かれていた


万年筆で書かれた文字はだいぶ崩れた文字で
解読に時間がかかる時もあった


最初の頃はお母さんに頼まれて
返事を書いていたが
気づいたら自分から返事を書いていた
これがおじいちゃんとの文通の始まり



きっと今でも手紙を書いたり文字を書いたりする事が好きなのは、おじいちゃんのおかげ





私はおじいちゃん子だ

"お父さんみたいな人と結婚したい"というフレーズがあるが
私は結婚するならおじいちゃんみたいな人と結婚したい



家族の中で1番居心地がいいからだと思う
私の話を、いつもいつもそうだよね〜と
優しく受け入れてくれる

それがあってても間違っていても
まず聞いてくれることが嬉しかった



おじいちゃんは教養人で
昔から難しい話をよくしてくれた
小さい頃は全然理解できなくて


でも中学受験のために塾に行くようになってから
おじいちゃんの話がわかるようになってきた


それが嬉しくてもっともっと社会のことを知りたいと思った
おじいちゃんと同じラインに立って話ができることが嬉しかった


多分日本史が好きになったのも
おじいちゃんのおかげ

昔の人の考えや生き方を知ることが未来の自分のためになる
その考えを小さい頃から教えてくれたから
社会の授業が暗記科目と思ったことは一度もない



人に干渉せず、
この人はこういう性格だからと受け入れる
そんな懐の深さをずっと見てきた


だからこそ、そんな人が書く文章は
私に考えを押し付けることもなく
彼の多角的な考えがつまっていた



そんな憧れであり大好きなおじいちゃんが使っていたのが万年筆

だから小学生の私は
"中学生になったら万年筆を買ってもらう"
とおじいちゃんと約束した



でも中学生になった私は
新しい環境に夢中になってしまい
そんな約束をしたことを忘れてしまった

高校生になっても大学生になっても留学をしても
おじいちゃんとの文通は続いていたけど

万年筆のことは過去の思い出になっていた




社会人になり
毎日PCPCPCの生活に飽き飽きした時
久しぶりに万年筆の話を思い出して
おじいちゃんに伝えてみた


そしたら手紙と共に送られてきた
青色の万年筆


しかもその万年筆は
おじいちゃんがお仕事をしていた時
昇進のお祝いで社長さんから
いただいたものだという

私のために修理をしてくれたとのことだった



万年筆をくれたことも嬉しかったが
それ以上に私に自分の思い出の品を
受け継いでくれたことが嬉しかった


おじいちゃんが教えてくれたこと
私に受け継いでくれたこと
きっと何年経っても私の軸として
私を支えてくれるだろう
目に見えないことも含めて
もらったものの多さは計り知れない


おじいちゃんがくれた万年筆で返事を書いた
今回ばかりはいつもと違って縦書きの便箋で

でもやっぱり直接会って感謝を伝えたい
お互い恥ずかしいから
いつも直接話す時はそっけないけど
でも今回ばかりは顔を見て伝えようと思う


ありがとう



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