米やめました⑧ なまけ者のための糖質制限
知人に糖質制限について話すとストイックですねと言われるのだが、自分的には楽しいし面白いからやっているのであって、少し違うかなと思ったりする。
もちろん糖尿病の一歩手前と宣告された当初は、否も応もなく血糖制御を始めなければならない上、何をどうしたものか完全に手探りであったので、楽しいなどというポジティブな感情とは無縁だった。
とはいえ、何事も楽しくなければ続けることができない。レシピを試行錯誤することは面白いし、健康体でいられることにも意義がある。
何か新しく運動を始めたり、新しい道具を導入する必要はない。食品交換表のようなややこしい代物と向き合う必要もない。自炊も必須ではない。私のような、努力が嫌いで本質的に怠惰な人間には向いている。
1、2ヶ月の短期間で結果が出せてしまうこと、理論的な裏付けがあり、QOLが改善する理由が明らかであるという点も、特に意味の分からないものには興味すら持てない種類の人間にとっては、とても心強い。
裏を返せば、糖質を我慢するというマインドでは必ずや失敗してしまうのだろう。無論自分の体が糖代謝から脂質代謝に移行するまでの期間は、ある程度の我慢は必要かもしれないが、我慢しているということは、本来あるべきものがないという認識なので、あるべきものに対する渇望をいつまでも引きずる羽目になる。つまり糖質はあるべきものではなく、なくてもいいものだという認識を持つことが重要になる。
日本の糖尿病学会の説明では「糖質を我慢すると空腹になりやすく、間食を取りがちになる」となっているのだが、私の実態とは異なる。まず空腹になりやすいということはなく、1日2食で十分である。多少の空腹感を感じても困るほどにはならない。また、間食も取らないことはないが、そこでも糖質を摂らないので、特に問題にならない。
何より、我慢しているという意識がない。いつの間にか我々が「糖質を我慢している」という前提になっているのだが、無根拠な決めつけか、糖質は我慢するものというマインドセットで凝り固まっているとしか思えない。
糖質制限と糖質をゼロにすることとはイコールではない。というか日常生活において糖質ゼロを厳密に実行することは不可能だろう。米・粉・砂糖などの目立つところをゼロにするぐらいのつもりで丁度いい。結局私は試したことがなかったが、夕食のみの糖質抜きでも十分に効果があるという。
また、これは自分の場合だが、一旦脂質代謝に移行すると、週に1食ぐらいうっかり糖質を摂ってしまっても簡単にリバウンドしたりはしないし、次から再び糖質を制限すればいい。依存症の治療など比べると、だいぶゆるやかに実行できる。
うっかりしてもすぐに戻れるということは、手段の目的化を防ぐ利点もあるだろう。糖質制限はあくまで手段であり、健康体を維持することが目的だ。当然ながら目的が達成できれば、手段の方はやめてしまっても構わない(私の場合はやめられないが)。糞真面目に糖質制限を目的化してしまうと、たった一度の過ちも許せないということになり、そんなことで挫折したりする。あるいは悪くするとアンチ糖質制限などというものに変貌するらしい。
糖代謝で問題がない人間と、そうでない人間がおり、要は人によるというだけの話なので、アンチになるというのもよくわからない。深く考えすぎるのはやめよう。
さて糖質制限に役立つ料理本を一冊挙げたいのだが、こちらも肉の調理法について科学的に再検討した、エビデンスに基づく肉料理本である。ステーキの焼き方やサラダチキン、ローストポーク(ビーフ)など参考にしている。
ローストについては、オーブンを100度に設定して行なっている。70分ほどローストした後、本書を参考に、内部温度63℃まで徐々に寄せていく。時間はかかるが、オーブンは放置すればいいので楽だし、数日分のストックが手に入る。