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尊敬している大先輩

保育士資格と幼稚園教諭免許を取得する際に実習を5回している。

2度目の保育所実習の担当だった4歳児クラスの先生が、私にとっての忘れられない先生だ。

エピソード1 もうすぐ〇〇組と言わない

年度末の2月中旬から2週間。
卒園式を数週間後に控え、5歳児クラスへの進級を意識し始める時期だった。

ちょうどその1年前の同じ時期に別の保育園で実習をしていたので、「もうすぐ○○組になるから」という声掛けが当たり前にあると思っていた。

「もうすぐ〇〇組だから、△△しようね」
「〇〇組さんになるから、××はしないよ」
「もうすぐ〇〇組だから頑張って」

ところが、2月から3月にかけての実習期間にも関わらず、その先生はそうは言わなかった。

「みんなは□□組だよね」

心に響く一言だった。

「□□組になったばかりのころは、〇〇だったけど今は△△だよね」

実習生でありながら私もその時に4歳児クラスの一員であることを誇りに思ったことを覚えている。

その先生は、必要のない背伸びをさせなかった。

背伸びをさせなくても、子どもたちにはできる力があると信じることを学んだ。

エピソード2 できないならあとで先生とゆっくりやろう

折り紙でお雛様を作った日があった。

クラスの子どものうちの1人がどうしても上手にできなくて、「できない!!やりたくない!!もうやらない!!」と投げ出した。

この子の言葉通りに受け止めれば、「もうやりたくない」ということになる。
先生は「できなかったんだね。あとで、先生とゆっくりやろう。大丈夫だよ。折り紙もまだあるし」と言った。

パニックになっている子どもを安心させるための声掛けだと解釈してその日の日誌にそう書いた。

そしたら、本気で後でやればいいと言ったのだとコメントを書いていただいた。

4歳児クラスにもなれば、折り紙は一斉保育で行うものだと思っていたし、もらえる折り紙も1人1枚で「大事に使いなさい」と渡すものだと思っていた。

なので、失敗したり破れてもそれを使うものだと思っていた。
だから、「折り紙もまだあるし」には本当にびっくりした。

この日の活動の目的は「折り紙でお雛様を作ること」であって、それに付随して「友達と一緒に作ること」や「折り紙を大切に使うこと」があるんだと学んだ。
4歳児だからといって、全員が一度に全部達成しなくてもいいこと、一人ひとりの「できた」を大切にすることを学んだ。

エピソード3 一人ひとりを受け止める

エピソード1と2が忘れられない出来事ベスト2だけど、3つ目は決めきれなかった。

候補に挙がったのは4つ。

・転園児が自分のグループに来てほしくて泣いて怒ったAくん
・「先生、Bくんが壊さないように抱っこしてて」
・白いご飯が苦手なCちゃん
・怖い紙芝居をそっと見るDちゃん

わずか2週間の間でこれだけのエピソードが出て、濃い実習だったと今でも思う。
他の実習にも忘れられない場面はあるが、数は少ない。

手短に書いていくことにする。

転園児が自分のグループに来てほしくて泣いて怒ったAくん

思い通りにならなくて泣いて怒ったAくんへの対応も勉強になったけど、その後のクラスの他の子どもたちへの話がとても素敵だった。

「先生、Bくんが壊さないように抱っこしてて」

雨の日にカプラ(積み木のようなもの)をしていた時のこと。
諸事情は省略するが、この日の帰りの会で、「Bくんはどんな子なのか」という話をして、「どうしたらいいのか」を話し合った。
とてもセンシティブなテーマだったけど、子どもたちの言葉を否定せずに話をまとめていた。

白いご飯が苦手なCちゃん

食べ物に関する絵本を読んで、「Cちゃんは白いご飯が苦手だから、ふりかけをかけるね」という話。
要するに、「Cちゃんは特別扱い」なのだけど、伝え方がスマートで、他の子どもからの反発は一切なく、むしろCちゃんを応援するような雰囲気になった。

怖い紙芝居をそっと見るDちゃん

鬼などの出てくる紙芝居を読み手側からそっとのぞくDちゃん。これも、特別扱いがOKされていた話。最初に見たときは「なんで正面に座らせないんだろう」と思った。
Dちゃんの気持ちに寄り添っているのは先生だけでなく、他の子どもたちも分かっていたのが印象的だった。

このエピソードは平成の話だけど、私が令和に大切にしていきたいこととして、以前のnoteの話にもつながっている。


わずか2週間だったけれど、1年間その先生が積み上げてきたものがよく分かった実習だった。
どの場面でも「今の子どもたち」「一人ひとりの子どもたち」を大切にクラス運営していた先生。

自分も先生と呼ばれる立場になったけれど、当り前のことを当り前に行うのって本当に難しい。

今はどうされているか知らないが、約10年「私のあこがれている保育士」第一位の座をキープしている。

いつかまたどこかで会えたらいいなと時々思い出しては、日々あの先生に近づけるよう精進中。

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