保育ICT化を経験してみて

はじめに

保育士の仕事には子どもと向き合うこと以外にも書類の仕事が多い。

以前は「ただ子どもと遊んでいるだけの仕事」と思われていたようだけど、最近はいろいろな人のおかげでよく知られていることになってきた。

書類のほとんどは自治体などの監査でチェックされる。
手は抜けない。

今はICT化が推奨され、補助金も出ているようだ。
経営者ではないのであまり知らないが、｢補助金を使ってうちのシステムを導入しませんか｣という営業の電話やDMを目にすることがある。

私は、導入している園の後に、導入していない園に移ったので、どちらも経験している。

保育士が実務で感じるメリットとデメリットを書いていきたい。

使っていたICTツールはタブレットアプリで、2人～6人(時間によって変動)の保育者に2台のタブレットがあった。
回線契約はしておらず、園内にWi-fiを飛ばして使っていた。
保護者とデータの共有はなし。日々の連絡はペーパー(連絡帳)で行っていた。

メリット

・文章の書き直しが容易
・コピー＆ペーストが使える
・文字が汚くても漢字が思い出せなくても書ける
・原本を管理したりコピーしたりしなくてよい
・ファイリングしなくてよい
・過去の情報を探すのが簡単
・紙で手を切ることがない

メリットしかないじゃん！って思いたくなるくらいメリットが並ぶ。

特に上の3つはデジタルの強み。
とはいえ、日本人として大事な能力も失われていくような気がする。

保育士の立場ではなく、管理職の立場としても、事務室からすべてのクラスの書類が管理できるというのはメリットなんだと思う。
複数園あるところにはさらにメリットは大きいのではないかな。

でも、いいことだけではなく、デメリットももちろん存在する。

デメリット

・端末の台数が作業できる人数
・複数ページを同時に見れない
・Wi-fiが不調だと何も作業ができなくなる
・うっかり充電し忘れる
・落としたら壊れる、子どもの上に落としたらケガをする
・ちょっとしたメモや図が書き込めない、付箋が貼れない

ICT化の第一印象は「すごい！」だったけど、毎日使ううちにだんだんデメリットを感じていった。

3つ目のWi-fiは特に致命的。
端末に仮保存できるシステムではなかったので、本当に何もできなかった。

他には、１つの項目を入力したいときに、１タップごとに0.5秒くらいの待ち時間が「塵も積もれば山となる」で地味に時間がかかる。

①スリープ状態のタブレットを起動　0.5秒
②ホーム画面から「身体測定」のタブを選択　0.5秒
③名簿から該当の子どもの名前をタップ　0.5秒
④「身長」の項目を選択　0.5秒
⑤数字のキーボードが出てくるまでに0.5秒
⑥数字を打ち込んで｢登録｣ボタンを押して0.5秒
⑦「戻る」を押して名簿に戻るまでに0.5秒
⑧次の子どもの名前を選んで･･･　③～⑧をクラスの人数分繰り返す

と待ち時間を少しずつ挟むことになる。

他のことが何もできない待ち時間というのはせっかちな私にとってはかなり苦痛。

少なくとも⑥のステップで「登録」を押したら、自動的に名簿に戻ってほしい。

紙だったらファイルを探したりページを開いたりしなければならないが、手を動かしているので何もしていないわけではないし、一度そのページを開いたら複数の子どもを手際よく記入することができる。

ICTを取り入れていない園の方が効率的に感じた。

もっと、複数の園児を扱うことを想定してほしいなぁと思う。

保育士転職サイトを見ていると「ICT導入で書類が楽です！」とうたっている園がある。
就職には至らなかった別のICT導入園の見学時に「うちは書類はタブレットに打ち込むだけです」と言われた。
打ち込む文章は考えないといけないので、ICT化＝楽という考え方には疑問。

まとめ

ICT化にはメリットもデメリットもある。

以前は導入していなかった園も、私が退職して数年後には一部導入していたので、時代の流れはどんどん導入していく方向だと思う。

現場の保育士の声に耳を傾けて、システムが改善されていくといいなと思う。

ちなみに、先ほどの身体測定の記録、
「□□組　身体測定の記録入力！
○○ちゃん、身長××センチ、体重××キロ！
△△くん、身長××センチ、体重××キロ！」
と言うだけで記録してくれるシステム(スマートピーカー)があったら助かる。

これなら本当に楽だと思うし、数年後には実現していそうだなぁ。