早生まれの子と遅生まれの子、保育園で同じクラスに入っても大丈夫?
1つの学年が4月から始まって3月で終わるからには、子どもたちは遅生まれと早生まれの2つのグループに分かれます。
この2つの中で、遅生まれの子たちは早生まれの子に比べて保育園や小学生で有利だと昔から言われてきました。
なぜなら、幼少期における月齢の差が発達に大きな差を生むからです。
しかしながら、これらの格差は子どもとの関わり方や日常生活の送り方によっていくらでもなくすことができるのです。
実はデメリットではない!?
と言うわけで、まずは早生まれの子どもを持つ保護者が不安に思ってしまい、デメリットにやすいところを見ていきたいと思います。
デメリットだと思ってしまうこと⑴
できないことが多くて心配になる
最もデメリットとして感じられるのがこれ。
周りの子によりも発達の面で劣っていると思ってしまうところでしょう。
例えば周りの子はパンツが外れ始めているのに、自分の子にはそういった気配すら見当たらない。
周りの子は色んな言葉を覚えてきて、大人と会話のようなやりとりをしているのに、まだうちの子は「ママ」のような簡単な単語しか言えない。
などと言ったように、保育園に通っているとどうしても周りにいる同じ歳の子が目について、ついつい見比べてしまうものです。
特に0〜2歳のうちは月齢による発達の差が大きく、心配になってしまいがちです。
しかし、発達の差はある時点でのみんなの姿を一斉に見比べてしまうからそう感じるのであり、早生まれの子どもだって同じ月齢を迎える頃には全く同じようにできるようになっているわけです。
みんなが同じ1歳児クラスの子でも月齢には大きな差がありますから、発達に差があるのは当然のことでしょう。
つまり、ある月齢でできるようになることの大体の目安を知っておくことで、心配になってしまうのを防ぐことができます。
デメリットだと思ってしまうこと⑵
いつも言い負かされてしまう
月齢の差は頭の回転する速さにも関わってきます。
頭の回転は主に言葉に表れます。
例えば、ケンカの時にいつも言い負かされてしまう。
いつも自分の意見を通すことができない。
3歳児クラスにもなれば、こんな経験も増えてくるでしょう。
また、0〜2歳ぐらいだとなかなか言葉が出ないことから、嫌なことがあると友だちのことを噛んでしまうなど、そんな姿へと繋がってしまいます。
特に噛み付きなんかは周りの友だちやその保護者に迷惑をかけてしまうため、どうしても悩みの種になってしまいますよね。
しかし、保育園はできないことを保育士や友だちと関わりながら「できる」に変えていく場所でもあります。
となれば、特に生活面においては4月生まれの何でも出来る子より、早生まれの子の方が一つ一つ保育士に丁寧に見てもらえるということです。
周りの子どもたちよりもしっかりと見てもらえるのは、保護者の方からするととても嬉しい話です。
デメリットだと思ってしまうこと⑶
体格的な差が大きい
一般的に体格の差は中学校ぐらいまで続くと言われています。
体格に差があるという事は、体力や筋力において差が出てしまうことです。
つまり、運動能力にも差が生じるですね。
子どもたちの世界は「速く走れる子」のように運動できる子がクラスのスターです。
となると、早生まれの子たちは運動においてクラスでみんなより優れていて、みんなから認めてもらえるような体験ができる可能性がちょっぴり低いということになります。
こうやって幼少期に友だちから認められる体験をできるかそうでないかは自己肯定感などに影響し、その後の性格や考え方などに大きく関わってきます。
しかし、いずれも体力では差が大きいというだけです。
「絵がとても上手」「文字が読める」などのように、違った側面で他の子に負けない優れたところを自覚させてあげることで、運動が得意なのと同じような体験ができるのです。
デメリットのまとめ
ここまで早生まれが大変なところばかり見てきました。
一体この差はいつ頃まで続くのでしょうか?
平均的に見ると身長や体重、体力などの差は中学校ぐらいまで続くものの、学力については早期に差が見られなくなると言われています。
しかし、つい最近には東京大学経済学部の教授である山口 慎太郎氏がこの生まれ月によって起きる格差は幼少期に限らず、大学の進学率や収入などに格差が出ている傾向であることを発表しました。
その一方で、このデータでも中学3年生ぐらいになって学力の差が縮まってくることが分かっています。
では、どうして学力の差は無くなっていくのに収入などといったところに格差が出てくるのでしょうか?
その答えとして、将来的な格差は学力ではなく、非認知能力によって生まれるからです。
(非認知能力とは諦めないで頑張る力・人とのコミュニケーション能力などといった目に見えない(数値化されない)能力のことです。)
つまり、先程お話しした3つの「デメリットだと思ってしまうこと」で挙げたように早生まれの子たちは
⑴自分だけできないことが多い
⑵友だちに勝つなどといった良い思いをする体験が少ない
⑶あまり目立つ機会がない
といった経験が多く、非認知能力が育ちにくいことが原因なのです。
そのため、その子の得意を見つけてあげることで他人から認めてもらえる体験をして、そこから非認知能力を育てていけば良いのです。
とは言え、保育園においては特に発達に差のある0〜2歳児は高月齢児と低月齢児のクラスに分かれていることがほとんどです。
集団としての活動を基本とする3歳児以上とは違い、0〜2歳児は一人一人に対して個別の対応ができるように配慮されているのです。
そのため、保育園では早生まれや遅生まれということはあまり気にする必要がありませんね。
早生まれのメリットは?
さて、ここまでデメリットとなる部分を多く見てきました。
最後にメリットについて見てから終わりにしたいと思います。
早生まれのメリット⑴⑵
育児の負担が少ない
色んなことが早めにできるようになる
早生まれと遅生まれでは4月入園の場合、家庭で過ごす期間が最大で1年間も違います。
保育園に早く入れば、その分家庭で進めなくてはいけないことが減ります。
0歳児なら離乳食
1歳児なら靴、靴下を履けるようにすることなど…
これらをある程度保育園に任せるとなれば保護者の育児負担は当然減るわけですが、遅生まれの子を持つ保護者はこれらを一人で進めていかなければなりません。
メリット⑶
できなくても寛容に見ていられる
もしも遅生まれの子が早生まれの子に負けていると、遅生まれの子を持つ保護者としてはとても焦ってしまいます。
その一方で、早生まれの子はその子だけができないことがあっても、「月齢による差だからね」と保育士や周りの人たちから寛容に見てもらえます。
そのため、遅生まれの子の保護者とは違い、「どうしてうちの子はまだできないの!?」などと焦ることなく、ゆとりを持って子どもに接することができます。
まとめ
0〜2歳児は一人一人の子どもの生育歴、心身の発達、活動の実態などに配慮した上で私たち保育士は保育を行っていきます。
そのため、早生まれの子どもたちでも先ほど話した非認知能力が育つような活動、関わりができる環境が整えられています。
その子に合わせた活動を毎日考えているため、早生まれや遅生まれなどにこだわらず、安心して通ってくださいね。
ライター:中村大我(保育士・保育ライター)
東京都の23区内で働く保育士。子育て支援のための活動を精力的に行っている。最近はnote(うほうほ保育園)に子育てノウハウの記事を書いたり、絵本の制作協力を行ったりしている。
「口だけではない子育て支援」をモットーに日々力を入れて活動中。24歳、2児の父。
note (うほうほ保育園):https://note.com/back_hoikushi