鎌倉駅徒歩8分、空室あり 越智月子
人には言えない言いたくない、そんな過去や事情を抱えたちょっぴり癖ありの人たちが暮らすシェアハウスの物語。
彼女たちはみんな、理解してもらいたい辛さを抱えながら生きている。
でも同時に理解されるわけないこともわかってもいるのだろう。
私も昔、他人に辛さを分かって欲しい時期があった。
聞いてもらってもイマイチ分かってもらえなくて、苛立って悲しくなって…。
今なら苦しみを理解してもらうなんて不可能だと分かるけど、
その頃はできると信じていたから辛くて堪らなかった。
(ちなみにこれ裏を返すと、他人を理解できると思っていたということで、若かったとはいえ浅はかっぷりがすごい。)
そんな面倒極まりない私にも、根気強く付き合ってくれた人たちがいた。
「しんどいんやなぁ。でも経験ないし全然分からへんから、どうして欲しいんか言うてや。」と言い続けてくれた。
分からへんと言われ一気に心が楽になった。
あれほど共感を望んでいたのに。
それからは、よし頑張ろう、私を助けられるのは私だけだ、と思えるようになった。
すごく子供っぽいけど、ただ見守ってくれる人が欲しかったのかもしれない。
ただ見ていてもらうだけで、こんなに安心できるのかと驚いた。
それ以来、私が誰かの助けになれることはないという前提の上で、でももし万が一できることがあるなら何でもするよ、といつでも応えられる準備をしていたいと思うようになった。
このシェアハウスの彼女たちも、隠しすぎたり暴露しすぎたりを繰り返しながら、ちょうど良い距離を探していくのだろう。
誰もが生きていれば色々ある、そんな当たり前のことをよくわかっている彼女たちなら、きっといい感じになっていくはず。
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