観える世界は 見たままではないのかも
大人になって
ずっと絵の具を使うことを避けてきた
子供ころ学校の写生大会が
きらいだった
決められた景色を
決められたサイズで
見えるものをそのままに描くことが
どうしても苦手だった
絵の具は
その写生大会を、思い出してしまう
ものごころがつく前はきっと
自由に自由に
絵を描いていたはずなのに
家ではノートに鉛筆で
空想のお姫様ばかり描いていた
*
部屋にぽつんと
娘が残していった絵の具があった
カピカピに乾いて出ない色もあったけど
まだ使えるみたい
ふと使ってみようかなと思った
子供の頃よく描いた
お姫様のような絵
絵の具で塗った
きっと現実は
こんな人いない
こんなドレス着てこんな髪長い人
見たことない
こんなに花舞ってるの
見たことない
でも私が描きたいのは
いつもこんな絵ばかり
きっと写生大会では選ばれない絵
先生に「ちゃんと見たまま描きなさい」
‥って言われる絵
*
なんだか自由になった気がした
これからは絵の具も使ってみよう
カピカピに乾いてしまってた
黄、青、紫色
なくなっていた白色
今度、買いに行こう