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歌舞伎観てきました13 『盛綱陣屋』

2019年3月 歌舞伎座夜の部観劇。(別のSNSより転載)

義太夫狂言 「盛綱陣屋」。敵味方に分かれた兄弟、親子の情愛を描いた時代物です。兄・高綱の子である小四郎(勘太郎)を生け捕りにした盛綱(仁左衛門)は、兄を思う気持ちから、小四郎に切腹をすすめるよう母・微妙(秀太郎)へ頼んでいたが、高綱のものと思われる首が届けられ、盛綱はその真偽を確かめる“首実検”を北條時政(中村歌六)から命じられるが……。というあらすじ。

千秋楽も近い時期にみたので、若い人の成長、本当に凄いことになっています。とにかく、中村勘九郎さんの長男・勘太郎くんの小四郎がすばらしくて、何度も泣いてしまいました。まだ幼いけれど、遠くまでよく響く声。従順でありながら、芯の強い動き。

ああ、なんて可愛らしくて健気なんでしょう(涙)。

周りを取り囲む、松嶋屋ファミリー勢ぞろいで、お役がそれぞれハマっているので、一層感情移入できます。片岡秀太郎さんの盛綱の母・微妙は、洒脱でこれ以上ないぐらいナチュラル。片岡孝太郎さんは、妻の早瀬役。
仁左衛門さんの実兄の秀太郎さんが母役で、実息子の孝太郎さんが妻役ということですが、見た目は全く年齢差を飛び越えた仁左衛門さんです。いつも若々しい!

仁左衛門さんの声は、抑制が効いていたのに、三階席までクリアに聴こえてきました。しかし秀太郎さん、人間国宝の仁左衛門さんだって、勘太郎くんの脇役にみえるほど勘太郎くん凄いんです。

勘太郎くんは、同じ舞台に父の勘九郎さんも、叔父の七之助さんもいない中で、重鎮のおじいさんたちに囲まれて、大事に大事に育てられているようです。舞台上でも、「あっぱれあっぱれ」と皆から褒められながら切腹し、切腹したにも関わらず、ずっと息絶えず、懸命に喋っているのです。

この演目を見るのは初めてですが、勘太郎君の熱演、松嶋屋さんの勢ぞろいで、きっと人の記憶に残る舞台になったことと、勝手に思っています。

その後、秀太郎さんは、2020年12月京都南座『熊谷陣屋』が最後の舞台になってしまいました。この時も南座まで観に行きたいと思いながら叶いませんでした。歌舞伎は高年齢の方が多いので、いつも、これが最後なのかもと思って拝見すべきですね。まだまだ大丈夫なんて、ただの主観。

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