歌舞伎観てきました12『弥次喜多流離譚』
2022年8月 歌舞伎座にて観劇。(※別のSNSより転載)
「弥次喜多」何度も上演されているが、わたしは今回初めて観る。お目当ての染五郎さん、團子さんが19日からコロナで出られず、濃厚接触者で休んでいた幸四郎さんは、22日から再登場!
そんなトラブルにもかかわらず、この八月の歌舞伎座は熱かった!
猿之助さんの超人的な活躍のおかげで、3部を休演したのはわずか一日。猿之助さんは、幸四郎さんの代役で2部の主役をほぼ初見で務めながら、3部を演出。染五郎さん、團子さんの代役4人を探し出し、演出を手直しする。
染五郎さんの一人二役(オリビアと梵太郎)は、猿弥さん、笑三郎さんの二人が演じ、團子さんの一人二役(お夏、政之助)を、隼人さんと笑也さんが演じた。隼人さんがやるはずだった芳沢綾人役は門之助さんが。
世紀の美少年といわれる染五郎さんの代役として、金髪の反抗期少年みたいな梵太郎役を演じた猿弥さんは、御年55歳。ちょっと小太り。沙悟浄や金太郎みたいなお役が似合いそうな風貌です。(謝)
この代役ニュースに半ば怖いもの見たさだったが、それは全くの杞憂。猿弥さんは群舞の場面も、宙乗りも難なくこなした、というかそもそもコメディのこの作品。猿弥さんは登場しただけで、普通に台詞を言っただけで、笑いがまき起こる。
観る前に、誰が誰の代役をして、あれがこうしてこうなってと予習するだけで頭がこんがらがっていたけれど、観ている間も、一人二役だったら、ここは早替わりだったシーンだったけど、二人だから大丈夫ねとか、あれこれ別の楽しみで盛り上がってしまいました。
そして演出の端々、台詞のそこここに現れていたのは、コロナ禍での劇場運営の不如意さ、伝統芸能にたいする危機感、また再び演じられることの喜び、激しすぎる歌舞伎への愛でした。
舞台に立つ人、支える人たちすべてが最後の一滴まで絞り出さないと、可能ではなかった、そんな舞台を観た喜びで、笑いながら泣き出さずにはいられなかった、そんな夜でした。
※その後、猿之助さんのいない澤瀉屋さんですが、歌舞伎への愛は少しも衰えていないことを感じます。