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【競争戦略論】ポーターの礎!SCP理論について 経営02

全スライド

先に僕のまとめスライド6枚を載せますね.
なお、Part2にある、「図表2」および「図表5」は、「世界標準の経営理論」からの引用です.

SCPの概要と系譜
SCPの2つの主張(A)
SCPの2つの主張(B)
企業の外部環境の確認
外部環境をもとにしたSCPの打ち手の整理とその補完
SCP理論について・まとめ

イントロ

マイケル・ポーターの競争戦略論.
5 Force分析や差別化戦略、コスト戦略などのジェネリック戦略は有名でしょう.
今回はその礎となった、SCP理論についてまとめました.

きっかけ

知人と、「世界標準の経営理論」という本の輪読会をしており、この章のまとめを担当したのがきっかけです.

世界標準の経営理論は、早稲田MBAの入山先生の本で、経営理論が体系的にまとまった良書なのですが、なにせ鈍器.
読み進めるには輪読会形式などだと心折れずにこなせるかも?

それでは各スライドのコメントに入っていきます.

各スライドのコメント

Part1 SCPの概要と系譜

SCPの概要と系譜

2つの主張と1つの特徴をピックアップ、2つの主張については図式化しました.
VCっていうのは、バリューチェーンです.
それから、ふんわり「儲かる」ことを「高収益」としましたが、「安定した超過利潤」が、教科書でも用いられていた表現であり、また、これが競争を対象に扱う文脈ということからも、本来用いるべき適切な表現かと思います.
文字数が多いため高収益としているだけで、実際最後のまとめスライドでは「安定した超過利潤」というフレーズを使っています.
また、スライド作りとしての反省点は、いきなり系譜書いたり、ゴチャゴチャした1枚目にせず、イントロと語義、目次だけのスライドを別に最初に持ってきた方が読み手への負担が少なかったかも?と.
とはいえ私的なまとめなので圧縮してもいいかと思い、こんな1枚目になりました.

Part2 SCPの主張 A

SCPの2つの主張(A)

1つ目の主張が、「独占→高収益」.
1930年ごろから、産業組織論/IO、特にOld IOから、「企業の独占を規制すべき」との主張がありました.
その論拠がこの①かと.

いくつか気になったことを.

・「独占→()→高収益」のギャップを埋めるのは、価格支配力
シェアとかじゃないんだーていう.
厳密にはシェアだったら、独占→シェアはほぼ同義で、同義反復は意味をなさないので、販売量の方がいいか.
収益=量*単価として、独占による超過利潤は、数量ではなく価格経由なのかと.
これは対を考えると一応しっくりくるのですが、独占の対となる完全競争の場合、完全競争→価格競争→価格下げに陥る、だから、価格ね、と.うーん..

・価格支配力がある ⇔ P ≠ P(Q)
Pは価格、Qは数量(需要量・供給量)です.つまり、
右式の意味は、「価格が量の関数ではない」、
和訳すれば、「価格が数量に影響されない」ということ.
これもよく考えると数学的には微妙※ですが、
「数量に影響されず無関係に価格を決められる、高止まりさせられることが価格支配力である」という換言はしっくりきます.

※(些末な議論なのでスルーして結構です)
価格Pが数量Qとは無関係でも、価格Pは数量Qの関数といえるのでは?
関数の定義は忘れましたが、
たとえば、価格支配力によって価格が高止まりしている状態を、
「P = const. for any Q」としたとき、
たしかに、定数ですが定数関数も関数であり、
一応、一つのQの入力に対し、一つのPの値が(常に一定値ではありますが)出力されるわけです.
なので、「P ≠ P(Q)」とは言い難いのでは、と.
ただ、あくまで、「価格支配力とは、数量と無関係に価格を決められる、高止まりさせられること」が本旨なので、正直どうでもいい話です.
社会科学を過度に数学に落とし込もうとせず、引き際を知りつつ、それが議論の進展に寄与しそうであれば、当面の議題と並行して私的に追求すればいいかなと再確認です.

・演繹が不安
「前提2つと導出1つ⇒結論」という記述への論理学的な不安です.
展開した論理の内容の大枠はこれであっているはずなのですが、
前提と導出の定義、どこまでが前提でどこからが導出かがわからんなと.
導出とは、前提とおいた議論材料の料理方法であり、論理的にガチャガチャする、その作業だけしか指しませんよね?
例えるなら、カツを作るとき、パン粉は材料か調理工程か.
この話だと厳密には、導出と分類した需給曲線の交差さえも、少なくとも各曲線の定義くらいまでは前提に区分されそう.

Part2 SCPの主張 B

SCPの2つの主張(B)

2つ目の主張です.
ベインは、産業ごとの収益性とその産業における寡占度の実証分析から、寡占度が高いほど収益性が高いと証明したのちに、産業の寡占、独占を進めるには、参入障壁が必要としました.
たとえば、石油化学のような装置産業は参入のために巨額投資が不可欠で、規模の経済という参入障壁があるといえます.
それに対し、ケインズとポーターは、
ベインの主張する参入障壁だけでは、企業の収益性を説明するには不十分で、
産業の中にも、商材や進出地域などの類似性から、「企業グループ」という(僕の理解では産業の低位版のような、ミニ産業的な)ものが存在し、
産業の内部にも、企業グループが異なれば、企業間の移動障壁があるとしました.
たとえば、自動車業界の中でも、軽自動車メーカー、ラグジュアリー車メーカーはそれぞれ違う企業グループです.
そして、産業内の企業グループの概念を踏まえた上で、超過利潤を得るためには、自社のグループの特性を他グループの特性に似せないこと=差別化が必要.
つまり、儲かる市場環境の仕組みは、「差別化→移動障壁→寡占/独占」(スライド中の④)というのが、教科書の論調でした.

そしてここが僕の気になった箇所です.
④、ケインズとポーターが言うところの、差別化の流れが腑に落ちませんでした.
差別化しても移動障壁にはつながらなくないか?
たとえば、リーダー的立場の企業なら、製品ラインナップを増やせばいいのでは?他社が差別化した商材を出そうがラインナップの拡充により差別化を潰せてしまえるのでは?と.
とはいえ、たとえばフェラーリが大衆向け軽自動車作ったらブランド毀損するか.
つまり、魅力的な市場かつ、既存の市場とはズラした/差別化した市場を、周辺企業グループの競合が手を出したくても出せない市場に仕立て上げつつ、顧客のニーズをぶっ刺すことが必要.

Part3 企業の外部環境の整理

企業の外部環境の確認

SCPはそもそも、企業の外側に目を向け、市場構造を俯瞰している外向的な経営理論です.
しかし、外部主体は競合だけではないよな、と外部環境の整理のスライドを1枚入れました.その確認にあたって、5F、3Cというフレームワークを分析対象に引っ張りました.
5Fをもとに、外部環境 = (売り手+競合+買い手)+PEST ≒ 5F+PESTと区分できること、各フレームワークを見ると、5Fは競争の描写に、3Cは構造描写の柔軟さに強みがあるという特徴があることがつかめました.

ただ、構造描写の柔軟さがあるというのは物は言いようで、3Cは簡易キットでしかない気がしました、がどうでしょう?

それから、PESTのE、Sを少しだけ追記しました.(20240125)
特にE、投融資者らの記述はマストかと思い.

Part4 外部環境をもとにしたSCPの打ち手の整理とその補完

外部環境をもとにしたSCPの打ち手の整理とその補完

外部主体を洗い出したところで、SCPの提示する打ち手を整理し、その上で僕が考えたことを補完しました.

まず、赤線でくくったところがSCPの打ち手.

これを時系列でストーリー化すると、「違う場所に行け、行った先で障壁を築け」となります.

なお、これはさっき、主張Bのスライドでつっこんだ、「差別化→移動障壁→儲け」の展開と似ていますが、一応別物かと.
今回の僕の「差別化→障壁」は、矢印が時系列の矢印を意味しており、差別化の後に障壁を作れ、つまり、差別化と障壁は別物扱いですが、
教科書記載の「差別化→移動障壁→儲け」は、矢印が論理展開の矢印であり、差別化が障壁としての役割を果たしますよ、i.e.差別化≒障壁と言っています.
まあ大差ないか?
でもやっぱり、差別化が障壁にもなりうるというのは、差別化に頼りすぎで、魅力的な市場ならば新規参入は必ず来るので、
持続的な競争優位がほしいのなら、差別化とは別に、障壁は障壁で戦略を立てた方がいいと思います.

次は、青破線枠の、「競争を制し独占」以外の儲け方です.
「売り手への交渉力強化で、価格高止まり」はたとえば不動産業で、情報の非対称性で消費者に情報がわたっていなかったり、あるいは、情報は公開されているものの消費者が不勉強で情報を取りに行っていないとかが実例でしょうか.
「PESTなど産業外部の主体の後押しを得て、価格高止まり」はたとえば、ロビイングなど非市場戦略起点の儲け方です.
ひとつ注意したいのは、産業外部の動きが、直接、自社の価格支配力向上につながることはなく、産業内の他主体への影響を一回かましてから、という(風に少なくとも現時点では私は理解しているという)ことです.
たとえば、ロビイング→規制→「競合締め出し」→自社の価格支配力向上、とか、ロビイング→規制→「サプライヤーの地位低下」→自社の価格支配力向上、とか.
いやでも、技術の発展/Tだったら、直接自社に影響するのかなあ.

この件と関連してですが、あくまで価格支配力やその向上というのは、相対的なものであるということ.
価格に影響を及ぼしたい周囲の主体とのパワーバランスによって自社の立ち位置が変動する中で、相対的に価格支配力を得よ、ということですね.

スライドの話をすると、このスライドも二枚に分けた方が、ゴチャゴチャしなくてよかったかなあと.
実は、「2つの主張」のスライドも元は一枚に押し込んでいたのですが、分けてすっきりしました.まだまだ資料作成力弱いっす.

まあでも今は、資料作成よりも、いかに深くてユニークなインサイトを出せるかですよね.
なんていいつつ、今回の記事も、SCP理論という他人の作ったインサイトを僕流に整理しなおして、大変わずかながらの僕の解釈を足しているだけ、所詮他人のふんどしで相撲を取っているだけに近しいので、もっと精進します、はい.

Part5 まとめ

SCP理論について・まとめ

まとめです.
主張をS・C・P毎に分けて整理できたこと、下図のように模式図化できたことは、特に今回のバリューになった気がするなあ.

Appendixは書きたかったのですが、輪読会内の発表イベントには間に合わずで、その後も作っていません.
ただ内容はちゃんとお役立ちできる面白い内容かと思うので、時間を作り次第書き足します.

そんなところです.いかがだったでしょうか?
他人のふんどしじゃなく、僕自身でユニークなインサイトを出したいなー.

それではまた.
2024/01/08

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