不登校・長期欠席・不就学
学齢期の子どものなかには、かなりの数の、学校に行かない状態にある子どもがいる。そのうち大半の子どもは就学義務があり学籍のある子どもだが、そのような子どもの場合、現在は年間30日以上欠席すると長期欠席という扱いになる。学校の基本調査では、長期欠席の理由は「病気」「経済的な理由」「その他」「不登校」の4つに分かれている。
2000年後半に中学校で「不登校」が約10万人にのぼったとされているが、その値はこの4番目の理由の人数を指す。
文科省は不登校を「なんらかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくてもできない状況にあること」と定義している。しかし、不登校と病気などとの区別はあいまいであり、長期欠席に占める不登校の割合は都道府県で大きく異なっている。
現在では長期欠席者の数よりも不登校の児童生徒の数に関心が集まるが、義務教育が9年に延長され新しい中学校がつくられた戦後しばらくは、長期欠席の問題が社会問題化していた。
欠席理由としては、小学校は疾病によるものが多かったが、中学校では「親の無理解」、「家計の全部または一部を負担させなければならぬ」のふたつが全体の5割近くを占めていた。戦後の新制度のもとの中学校発足直後は、保護者の理解を得にくく、多くの中学生が家業の手伝いや子守りなどに従事していたのである。
その後1952年からは、学校基本調査において年間50日以上の欠席が長期欠席として調査されるようになったが、この日数での調査は1998年に終了している。1950年代から1998年までの長期欠席児童生徒のデータを調べてみると、もっとも長期欠席の割合が低いのは1970年代はじめであることがわかった。
なお、長期欠席の理由の分類項目として、1967年度の調査から「学校ぎらい」が採用された。この数値がしだいに「登校拒否」の人数として報道されるようになり、1980年代以降はこの用語に代わるものとして「不登校」が使われるようになり、現在にいたっている。
学校に行かない子どものうち、重い障害などの理由で就学を免除だったり猶予されている子どもがいる。こうした子どもは「学校基本調査」では「不就学」と位置づけられている。
1979年の養護学校義務化以前は、重度障害児のなかに就学免除・就学猶予の者がかなりいて、1975年では合計で1万3000人に達していた。しかし、養護学校義務化以降は減少して、2009年度には就学免除・就学猶予者の合計は3300人程度となっている。
一方で現在、外国人の「不就学」が問題になっている。これは学齢期にある外国籍の子どものうち、国公私立の学校や外国人学校に在籍している者などをのぞいて、就学状況が不明の者を指す用語であり、学校基本調査でいうところの不就学とは定義が異なる。
日本国憲法第26条には、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有する」と書かれてはいるが、文科省は、外国人は「国民」ではないため、就学義務は無いとの見解の立場をとっている。
文科省は群馬、静岡、愛知など南米出身の日系人が多く住む地域を中心に、外国籍の子どもの就学状況わ調べた。その結果、合計1万2521人の子どものうち、小中学校や外国人学校のいずれにも通わずに、1日を自宅などで過ごす不就学の子どもは全体の0・7パーセント存在した。
また登録上の住所に住んでおらず、連絡が取れなかった子どもは20・4%、具体的には2558人に達しており、この中にも不就学の子どもがいることが予想される。このように学校に行かない子どもは、不登校以外にも存在するのだが、世間一般の関心は不登校に偏る傾向がある。
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