ひとり日和
つくばマラソンを走り終えて5日。左足首の痛みも落ち着いているし、そろそろランニングを再開してもいいか、といつもの川へ。
寒かった。走っていれば寒さは気にならなくなるだろうと思っていたけど、今日はずっと寒かった。
体と相談しながら走ろう、と決めていた。つくばで学んだ、「マラソンはマネジメント」という教訓を忘れずにいようと思って走った。
5kmも走らないうちに右の膝が痛みはじめた。息は上がらない。でも、膝が痛い。無理をせず立ち止まり、ストレッチをしたりゆっくり歩いたりしてみた。しかし再度走り始めると、痛む。
もう今日は走れないな、歩こう。折り返して帰ることにした。走れないので、後半の5kmくらいはほとんど歩いた。体がとても冷えた。
熱めのシャワーを浴びる。一番冷えていたのは手だった。熱い湯の刺激で両の手が痺れる。
午後になって僕は次男坊を連れ、車で10分ほどのところにあるリサイクルショップへ向かった。先代のiPhone 6sと読み終わった「村上海賊の娘」や「教団X」なんかを売りに出した。もともと古本として買った数冊の本は90円、iPhoneは9000円で買い取ってもらった。財布には1000円しかなかったので、正直なところ助かった。
ウィッシュリストにあった遠藤周作の本、「ほんとうの私を求めて」が100円で売られていたのでそれを手に取った。埃っぽい本だった。
次男坊が
「これ、パパにいいんじゃない?」
と勧めてきた本は「コンカツ!」というタイトルだった。
「それは・・・いらないかな」
僕はそっと「コンカツ!」を棚に戻した。
「じゃあ、これがいいんじゃない?」
再び次男坊は適当に選んだ本を僕に勧める。「ひとり日和」という本だった。青山七恵さんという作家さん。知らない。
「いや、これもいらな・・・」
なんとなく装丁が気になった。淡く桜がデザインされた美しい本だった。でも、それだけだったら僕はそれをそのまま棚に戻しただろう。「ひとり日和」には帯が付いていた。
「第136回 芥川賞受賞作」
裏側には石原慎太郎氏や村上龍氏のコメントが載っていた。僕は自慢じゃないがこういうのにすぐに乗らされてしまうタイプのショボい人間だ。280円か。
結局僕は、100円の遠藤周作と280円の青山七恵さんを購入した。
「ひとり日和」はもともと、1200円の本だった。僕が280円で買ったそのお金はきっと、1円も青山さんには届かないのだろう。たくさんの本が古本として売られているけれども、作家さんたちは古本屋さんで安く売られている自分の本をどのように思っているんだろうか。
そういえば12月だ、冬だ。
右膝は多分、痛みがとれるまでしばらく時間がかかるだろう。来週末には八千代市のマラソン大会に参加する予定だけど、もうそれは僕にとって走り納め的な位置づけだから、無理はしないで楽しもうと思う。
昨日の雨でイチョウの黄色い葉が大量に落ち、散らかっている。やっぱり桜もイチョウも、散り際が一番美しいと僕は思う。