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劣等感に苛まれる同志へ

こちらの記事は、2024年7月発売の小鳥遊著作「『発達障害』『うつ』を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 『生きづらい』がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方」(ナツメ社)の内容に関連したものです。

そんなときは花を買う

劣等感に苛まれたときは、花を買うといいです。という話を聞いて、石川啄木の短歌「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買ひ来て妻としたしむ」をすぐに想像できた方はお友達になれそうです。

私この短歌が大好きです。なぜ好きなのかというと、自分に投影できて共感できるからです。私は、周りの人たちの良いところ、優れているところを見つけるのが好きで、おそらく得意です。このことは私の長所であり特技でもあると思うのですが、ちょっと面倒くさいのは、他の人の優れている点を見つけては、「それに引き換え自分は・・・」と考えるのもくっついてきてしまうのです。

だから、そんなときは「花を買ひ来て妻としたしむ」ことにしています。別に花を買うことが大事なのではなく、「別の価値観で物を考える」のが大事だと思っています。

別の尺度で自分を立てる

この啄木の短歌から私が感じるのは、「1つの価値観にとらわれない大事さ」です。友人が出世した、世に認められるようなことをした、そういったことを「すごいな」と考えはじめると、仕事でどのくらい活躍しているかという尺度でものを考えるようになります。結果、「何者でもない自分は、まだまだだ」と思うようになり、無駄に自分を卑下する思考に陥ります。特に仕事で失敗したりすると、「ああ、友人のあいつはあんなに会社で立派に認められているのに、自分はなんてダメなんだ」などと考えてしまいがちになります。

そこで、別の尺度を持ってくるわけです。その一例としての「花を買う」ですが、そこには「家族など身近な人をどれくらい喜ばせられるか」という尺度があります。仕事の面で劣等感に苛まれても、「家族の一員としての自分」という面を引っ張り出して、その尺度での点数を上げれば、自尊心を保つことができます。

同じように、「趣味のサークルでの自分」「旧友の中での自分」「地域活動グループの一員としての自分」「オンラインゲーム仲間の中での自分」など、様々な尺度を持つことができれば、それだけ自分を立てられるわけです。

「仕事ができないが、趣味のサークルではのびのびと活躍している」といったイメージは、ともすれば「別の世界への逃げ」と評されることもあるかもしれません。しかし、「逃げ」と思おうが、「自分は趣味に生きる」と考えてある程度仕事を捨てようが自由です。自分がそれで良しと思えば、それでいいのです。

実際、仕事が全然うまくいっていなくて自信が持てなかった私は、趣味の社会人オーケストラの中ではかなりのびのびとやらせてもらっていて、それが日々の生きる糧になっていました。ある意味、仕事場での評価から趣味の活動に逃げていました。それで良いと思います。

「長所を生かす生き方」といっても、長所を仕事で生かす必要はありません。仕事でうまくいかなくても、趣味のサークルで長所が生かせるのであればトータルで良い暮らし方になる。そんな風に考えても良いのではないかと思います。


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