蝶々を「綺麗」と思う人。蝶々を「ヤダ、虫!」と思う人。
私は今月初めに就B(障害者の内職場)をやめた。
理由はいくつかあるが、サビ管(サービス管理者)さんとの相性もあったかもしれない。
毎週のオンライン面談、毎月の直の面談にぐったりしていた。
悪い人ではない。
知識もある。
ただ、どうにも不衛生な見た目、健康被害の出る太り過ぎの体型、下品な笑い方など、二人きりで過ごすにはキツくて。
靴紐がほどけていたり、頭皮をかくクセは仕方ないが皮脂でベタベタの髪を触った手であちこち触れられると気分は悪い。
書類を地べたに置く感覚は謎でしかなかったし。
ヨレヨレのトレーナーを着ていたりおおよそ仕事着に見えないのも不思議だった。
就Bのことを「利用者さんが仕事してる」と言う割に「仕事の風貌」をしていないのだ。
毎回私はバッチリお化粧をしてOLのような出で立ちで迎え討った。
髪を夜会巻きに結い上げたり、懐かしの名古屋巻きにしたりして圧をかけた。
近寄ってこないように、バリキャリムードを出してバリケードを張っていた。
この人は事ある度に、
「僕、コネあるんで〜(髪をかきあげる)」
とアピールしたが、コネは地元の一部にしかなく、私が次に住むかも知れない場所には縁もゆかりもないとのこと。
私は仕事は自分で探したほうが早いとわかっていた。
この人は無類の子供好きで、私は子供が苦手。
自分が幸せな子供時代を過ごしていないせいもあるが、聴覚過敏がひどく、甲高い叫び声が苦手なのだ。
それに対して、
「トラウマ治療が進むと良いですね」
と言われた。
正直カチンと来た。
キウイが好きな人がいる。
キウイが苦手な人がいる。
蝶々を綺麗という人がいる。
蝶々を虫だから嫌いよと言う人がいる。
子どもを好きという人がいる。
子どもは苦手という人がいる。
それくらいの感覚でしかなかった私には、
「子どもが苦手というのは治療対象なの?」
そのとき、今まで、不衛生なファッションで面会に現れること、待ち合わせに遅刻すること、書類を忘れること、みんな「仕方ないよね、人間だから」と思っていたのが吹っ飛んだ(笑)。
何となくこの人と関わるの時間の無駄だ。
そう感じるようになった。
嫌いという感情が溢れた。
別に嫌いでいいや。
障害者用内職は絶対やらなきゃいけないことじゃないし、もう関わるのよそう。
私もいっぱいいっぱいだし、こんな施設に毎回関わって、ペコペコしてバカみたい。
そして、バカみたいって思うことを自分に許した。
今はしっかり体を休めたい。
そう思うことも許した。
ヨレヨレの油臭いトレーナーも、障害のある利用者に自信をつけさせるための作戦かもしれないと、なんとかプラスに捉えようとした。
けれど、私自身人様と接する時は最低限のマナーを守り、場に相応しいスタイルでと努めていたため、無理にプラスに捉えるのもやめた。
面談は市役所で行っていた。
訪問看護の方に、
「利用者さんと話しているみたいだった。
傍から見たら私がスタッフに見えたハズ」
とフッと話した。
「見た目について〇〇さんは厳しく躾けられてきたから、嫌悪感があったんだね。
嫌だと思ってもいいんだよ?
そんなに自分責めなくても」
うん。
うん。
私「…正直しんどかった」
看「そう思ったんだね」
私「口には出さないけどね」
看「そこが〇〇さんなんだよ」
どんなに体調が悪くても面談の前にはシャワーを浴びて、身なりをパリッとさせていた私。
もう、ただ、そういうことがあっただけ。
ただ、合わなかっただけ。
そういうことにしたかった。
看護師さんの
「自分責めなくていいよ」
はとても嬉しかった。
どうしても人を非難してしまう私を、責めなくていいと言われたのは嬉しかった。