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ばあちゃん許してくれ。
生きていることが業苦。
肝癌になってしまった58の祖母が、
5歳の私の前で白装束を着ていたときに、
なぜ…
なぜ…私じゃなかったの?
ちっちゃいばあちゃん、なんで死んだ?
私が死にたかった…
葬儀が進み、私が祖母の棺に石で釘を打つ番だった。
ドンッ…
ひっく…ひっく…
ドンドンッ…
なんで、なんでなん?
なんでこんなに優しい人が先に死んで、
悪魔と言われる私が生きとる?
死ねばいいのに言われとる私が生きとる?
ちっちゃいばあちゃん代わってよ。
私と代わってよ。
当時の流行りでショッキングピンクの口紅塗られ、左前にして、足袋まで逆にはかされて…
ちっちゃいばあちゃん担いで、みんな火葬場歩いてく。
わらじ履いて、白装束で、
泥にまみれて歩いてく。
今日は朝から雨降っとう。
空が泣いとる、
空でも泣くんに、
私は涙こらえてる。
お母さんのほうがばあちゃんの血が濃い。
お母さんのほうが辛いはずや、
わしが泣いたら、
お母さん余計つらなるで…
我慢するんや。
火葬場ついて、
最後の人やった。
明日からこの火葬場、改装するんやと。
ちっちゃいばあちゃん、中に入れてな、
マッチするんよ。
マッチ放り込んで、
鉄の扉閉めるんよ。
その日、美濃には東風が吹いとった。
西へ西へと煙が流れてく。
なんでや、なんで、ちっちゃいばあちゃんやったんや。
わしが死にゃあよかったのに。
わしは死にたかったのに。
祖母の骨つぼは5歳の私には大きく見えた。
祖母の顔は苦しみを終え、仄かに微笑んでた。
ばあちゃんやな、私が死ぬたび此岸に返すんは。
ばあちゃんも知っとったやろ?
母ちゃん私をどついて怒鳴って、引きずり回して、殺しかけとるの。
せやから、お母ちゃんに、ちっちゃいばあちゃん怒ったんやん。
「みっこ!〇〇の心まで殺す気か!
〇〇を殺す気か!」
殺されたよぉ、
もう殺された。
ばあちゃん、もう許してぇな。
彼岸に行きたい。
邪魔立てせんといて。