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東京・護国寺―コロナ禍の静かな四万六千日。如意輪観音御開帳|訪仏帳_#2

このnoteでは速報性にはこだわらず、どちらかというと回想中心に書こうと思っているのだが、中にはそれではあまり意味がない気がする題材もある。
特に今年はコロナ禍であらゆることが通常通りにできないが、お寺の行事や御開帳も例外ではなく、例年とは様相がまったく違っている。
これを数年後に思い出して書くより、やはり今こそ書き留めておくべきだろう。


中止になった魅力的な夜の法要


東京都文京区、護国寺

毎年7月9日・10日の二日間行われる夏の行事「四万六千日」は、この日にお参りすると文字通り46,000日(=約125年。奇しくも人間の限界寿命か?との話も…)お参りしたのと同じ功徳があるとされるありがたい縁日で、本尊の秘仏、如意輪観音菩薩坐像が御開帳されるのは東京近郊の仏像ファンにはおなじみだろう。

護国寺の四万六千日には2010年から毎年お参りしていて、今年で連続11回目となった。
御開帳自体は、この日以外にも月縁日の毎月18日をはじめ、年間を通して定期的に行われるが、毎年どうしてもこの日にはお参りしておきたいと思うのは、厳かかつ華やかでもある夜の法要と、この二日間のみ授与される不思議な三角形の雷除けのお札が目当てでもあるからだ。

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もちろん、日中の拝観や御開帳と違って、夜のお寺で仏像を、それも秘仏を、しかも法要中にまさに「帳(とばり)が開く」瞬間を拝めるプレミアムな機会であることも大きい。

だが今年は、例年多くの一般参列者が集い、皆で長い観音経を太鼓に合わせて唱えるのが楽しみだった夜の法要はなくなり、日中に僧侶のみで執り行われることになった。
また護国寺の四万六千日といえば、数はそれほど多くないが夜店が立ち、近隣の子どもたちが楽しみにしている祭りでもあるが、当然今年はそれもなくなった。


人々の生活に溶け込むいつも通りの境内


正直今年はお参りを見送るか迷ったが、やはり毎年いただいているお札を今年だけいただかないのはどうも落ち着かないし、しかも今年はこのコロナ禍。
だから余計にお札だけでもという気持ちと、やはり長い自粛生活で仏像拝観どころか、まともなお寺参りは2月下旬からしていなかったので、気分転換も兼ねてむしろ今こそお参りをと思い、今年は訪ねた。

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仁王門をくぐり境内に入ると、まったくお祭り感のない日常の護国寺だった。
開放的な境内には、おそらくいつもの通り散歩する人、ベンチで休憩する人、通り道として通過する人がまばらに行きかう。
でも逆に、このお寺がいかに開かれていて、近隣の人々に親しまれ、その生活の一部になっているかを改めて感じられた気がする。
護国寺は地域の憩いの場であり、公園でもあるのだと。

石段を登った不老門の先の本堂周辺は、いつもの四万六千日でも屋台が並ぶ仁王門のまわりよりはだいぶ静かだが、今年はさらに人気がなく静かだ。
でも、久しぶりのお寺はやはりいいなぁと、大きく格式高い本堂を見ると嬉しくなった。

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今年もマイベスト如意輪観音を拝む


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入口に置かれたアルコールで手指消毒し、入堂。
もちろんマスクもしている。
お堂に入るのが久しぶりなのもあるが、感染拡大防止を意識しないとといういつもとは違う緊張感もある。
広い堂内に拝観者はまばらだったが、でもいつものように仏さまに見とれてうっかりソーシャルディスタンスを忘れてはいけない。

御本尊の正面に座り、合掌。
欲深いのでいろいろ祈願したいことはあるが、やはり今は疫病終息を祈るしかない。

続いて、他の人を待たせていないことを確認しつつ、じっくりお姿を拝見する。
例年は四万六千日法要の後、内陣に入れていただき厨子の前で至近距離で拝むことができるが今回は外陣から。
でも、ご本体にしっかり照明が当たっているので、決して見づらくはない。

もう10年、毎年拝んでいるが、同じ仏さまでもやはりその時々で表情や雰囲気が違って見えたり、目がいくポイントが変わったり、新たに気づくことがあったりもする。
穏やかで吸い込まれるような表情をただただ眺めていたい時もあれば、ご本体は全身が黒くてモノトーンの木肌ながら、装身具や台座がものすごく豪華で煌びやかなことに目を見張ったりもする。

今年は…まぁ今回に限らずこの如意輪観音像の個人的に好きなポイントなのでいつもなのだが…やはり肢体のしなやかさだろうか。
特に六臂の腕のしなやかで適度に伸びやかな造形やバランスは、自然で上品な色気があり、こうして直接拝むとやはりいいなと思う。

如意輪観音といえば、もっとセクシーだったり艶めかしかったり、あるいは密教像らしいパワーやミステリアスさを放つ「強い仏」のイメージもあるが、阿弥陀好きで、この像同様平安後期の穏やかな藤原仏好きの自分としては、いろいろ観てきた中でも個人的ベスト如意輪観音はこの護国寺の御本尊だ。

護国寺といえば都内屈指の仏充空間で、こちらの如意輪観音だけでなく、その左右にずらりと並ぶ三十三身仏、本堂内の横の間(この日は閉まっていた)には平安・鎌倉時代のものを含む多種多様な仏像が安置されているが、それはまた来年の四万六千日のあのスペシャルな法要や夜店の話と合わせて書ければと思う。

とにかく来年はいつもの四万六千日が戻ってくることを祈りたい。
(下の写真は2016年)

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[当記事の訪仏日 2020.7.10]
掲載情報は基本的に参拝・拝観・鑑賞当時のものです。
最新の拝観情報、交通情報等は各所公式サイト、問い合わせ等にて確認のうえおでかけください。

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