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ちょっとビターなバレンタイン

バレンタインなので、これよかったらどうぞ。
そう言われて渡されたチョコレート。
その瞬間、私はようやく気づいた。
ああ、今日はバレンタインなんだ、と。

いつからだろう。
バレンタインが私にとって特別な日ではなくなったのは。
いただいたチョコレートを一口かじる。
ほろ苦い甘さが口の中に広がるとともに、私は苦い中学時代を思い出した。


学生の頃、私は毎年バレンタインのお菓子を作っていた。
ほとんどが友チョコだったけれど、そのおかげでお菓子作りは年々上達したし、そこらへんの男子よりチョコをもらっていたと思う。
でも、本当に渡したかった人には渡せなかった。そんなウブな学生だった。

中学の2年間、私はひとりの人に思いを寄せていた。
彼はとてもモテる人だった。
スポーツが得意で、かっこいい人。
だいたい中学時代って、そういう人がモテるものだ。

私はテニス部、彼はサッカー部。
私はテニスが好きだったし、上達したかったから、練習中に彼を見る余裕はあまりなかったけれど、隣で彼が頑張っていると思うと、私も頑張らなきゃと思えた。

幸か不幸か私は彼と3年間ずっと同じクラスだった。
なのに一度も思いを伝えることはできなかった。
なぜなら、私の友達も彼のことが好きだったからだ。
それも確実に私より彼女の方が彼を好きだったから
私は恋より友情をとった。

友達から「告白したいから、彼を呼んできて」と頼まれたことがある。
さすがにそれはできなかったけれど、私は3年間
自分の気持ちを隠し通した。

彼は3年生のとき、同じクラスで一番可愛い子と付き合っていた。
私は「お似合いだな」と思いながら、そっと見ていた。
でも、今こうして思い出すと
「もしあのとき、私が気持ちを伝えていたら何か違っていたのだろうか。
もしかしたら私の思いは彼に伝わったのだろうか。」と思った。

あの頃の私は、「友情は永遠だ」と信じていたから、恋心より友情を選んだのだが、今その友達とはもう何年も会っていないし、連絡も取っていない。
友情も恋も、永遠ではないのかもしれない。行動なしには。


今年のバレンタイン、あなたは誰を思い出しましたか?
大切な人に思いを伝えられましたか?


あの頃の私は、苦さばかりを感じていたけれど
今の私には、とても甘く感じるエピソードだ。


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