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特スキの報告+ざっくり日本語学コラム【みはらし。】
特スキ報告
こんにちは!
ななくさつゆりです。
今週のご報告です。
毎週月曜日にお届けしている『みはらし。』から、『はりつく影のみはらし。【休日のすごし方】』が特スキ(特にスキを集めた記事)に選ばれました!
今回は#休日のすごし方タグの特スキです。
お読みいただきありがとうございます。
🎉
連続投稿週が、59週に突入しています。
今週どうにもバタバタして掲載時間がズレたりなんか一日ズレたりしましたが、ひきつづき発信していきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
ざっくり日本語学コラム #10
ざっくり日本語学コラム~🎉🎉🎉
配列の原理、2回目!
週に一度文体論を語るコラム。
レトリックの話をつづけます。
📚
前回、レトリックについて語りたいということで、中村明先生の『日本語の文体・レトリック辞典』から引用し、レトリックの体系の話をしました。
ざっくり紹介すると、レトリックとは2つの在り方があり、7つの原理に分けられるという話です。
そして、これらの原理に基づき、あまたの文彩が定義されているとします。
これらの原理について触れつつ、ある程度「だいたいこういうことなのかなァ」というところまで、自分の力でかみ砕いてみるのが目標です。
これからしばらく本コラムでは、このレトリックの話をしようと思います。
名付けて「レトリックの文彩」。
ゆるくお付き合いください。
さっそく配列の原理を噛み砕いていきます。
文学は美味しい。
📚
まず、「配列の原理」のおさらいです。
ある効果をねらって、意図的に言葉の順序を操作して述べる文彩のこと。
その文彩およそ30以上。
前回、紹介したのは序次法と括進法です。
序次法 … 一定の方針にしたがって順序正しく述べる修辞技法。
括進法 … 途中で一度括り、それをもとに次を述べる修辞技法。
物事は順序よく述べると伝わりやすいよ、ということを示した序次法。
述べる要素がいっぱいあるなら、いくつか示して「こうして」などでまとめるとよいよ、と示した括進法。
そりゃそうさ、と言いたくなるような話です。
が、なかなかどうして私たちは、ことばにいざ相対すると、こうした基本的なレトリックほどつい忘れてしまいがちです。
そして、今回はその序次法と括進法をひっくり返すレトリック。
寄先法に触れます。
奇先法 … 最初に奇言を発して注意をひき、のちに説明して納得させる修辞技法。
奇言とありますが、気を引くフレーズくらいの感覚で捉えるとよいかなと。
こちらも配列の原理に立つ文彩のひとつです。
ざっくり紹介すると、まず気を引くフレーズを発してあとから文章で納得させる、というものです。
その点で序次法や括進法とはまるで異なる配列の発想ですね。
最近では小説やエッセイなどの書き物の作法として比較的みかける考え方なので、馴染みのある方が多いかもしれません。
型にはまった調子がつづくと、退屈させてしまうかもしれない。
タイトル欄の大きさや文字数は決まっているのだから、そこでどれだけ注意を引けるのが大事。
最初に謎やクライマックスをぶつけ、まず読者を引き込んでから話を展開する。
どれも最近よく言われることです。
タテヨミマンガ(webtoon)などのジャンルではとにかくアドゴマに注力、なんて言いますね。
アドゴマ … 広告などでよく見かける読者に興味を引かせるコマ
ということで、奇先法は注意を引くためのレトリックとして今も発達をつづけている文彩です。
こちらも具体例があった方がわかりやすいでしょう。
用例に、芥川龍之介の『侏儒の言葉』を紹介します。
人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのはばかばかしい。重大に扱わなければ危険である。
この三つからなる文のポイントは、やはり冒頭の「人生は一箱のマッチに似ている。」からはじまっているところですね。
これを序次法的に配列し直すと、
「人生は重大に扱わなければ危険だが、重大に扱うのもばかばかしい。それは一箱のマッチに似ている。」となります。
こちらも文章として意味は通ります。
きちんと順序よく説明されているため、むしろ安定感のある文章のように思えますね。
対し、冒頭に何の説明もなく「人生は一箱のマッチに似ている」を持ってくるということは、文章にあえて論理の空隙をつくる配列になります。
繋がりの見えない導入がかえって関心を引く効果を持つというひとつの用例でした。
翻ってみると、以下のような思いつきが出てきます。
序次法で順序よく綴った文章の最後を最初に持ってくることで、安定した実直な文章は人の興味を引く鮮やかな文章になりうる。
序次法と奇先法を意識して使いこなせれば、様々な状況に応じて文章を展開できるようになりますね。
📚
ということで、奇先法の話でした。
触れはじめに「おや?」と思うことを記しておき、あとで事柄を述べてわかってもらう。
それを支えるレトリック。
これは、文章の展開を意図的に狂わせる手法です。
より鮮やかな印象を持ってもらうために、文章を平板ではなく山を盛るように書き記す。
そのための文配列がこの奇先法というわけですね。
📚
さて、今回のざっくり日本語学コラムは以上になります。
私は自分でお話やエッセイも書きますが、レトリック自体を語るのも楽しいですね。
もともと情景の文章表現を探求するためにはじめた勉強ですが、もしかしたら私は文体論自体がかなり好きかもしれません。
ともあれ。
読書玄人の方も、普段は読書なんてあまりしないという方にも。
皆さまに晴れやかな読書体験を。
今回も、あの日の記事につづき、読書を語る絵画の引用をもってしめくくりたいと思います。
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制作年:1890-1891年 所蔵:東京国立博物館
文字を見つめることは、こんなにも人の眼差しを透明に、無私なものにするものなのか
ほぼ日記のようなざっくり日本語学コラムでした。
ぜひ、スキやフォローをお願いいたします。
それでは今日もよい一日を。
ななくさつゆり
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