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エッセイ 梅酒のこと。半可通ほど通ぶりたい。(前編)



最初に好んだお酒。



 私が最初に好きになったお酒は、おそらく梅酒だと思う。
 なんのひねりもなく、チョーヤ梅酒
 居酒屋の飲み放題ではおなじみの、パックのやつだった。
 ……もしかしたら、瓶のやつだったかもしれない。

 なぜ「おそらく」と断りを入れているのかと言うと、理由はいたってシンプルな話。
 覚えている限りでいえば、おそらく梅酒だったはず。
 そんな言い切れない余白はあるからだ。

🥃

 梅酒は作り方しだいでいろいろなカオを見せてくれる。

 飲み方はロックでも炭酸でも良い。
 水割りは個人的にあまりおすすめしないけれども、結局は好みによるのだろう。

 お酒の入門者であった当時の私にとって、銘柄による違いがわかりやすいのも都合がよかった。
 黒糖梅酒のロックでとろみによる口溶けを味わうことも、炭酸割りで喉越しを楽しむことも手軽にできてしまう。
 酸味ひかえめで甘ったるく、飲酒に通じはじめたばかりの身体で社会人の飲み会をこなすには、もってこいのお酒。

 新卒社会人として組織に所属して間もない私が梅酒を好みだすのに、さほど時間はかからなかった。


八方美人の若手社員。

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