特スキの報告+ざっくり日本語学コラム【にちようびの音。】
特スキ報告
こんにちは。
ななくさつゆりです。
今週の報告の記事です。
毎週日曜の朝にお送りするムービーノート『にちようびの音。』から、『今朝もCanon in D (パッヘルベルのカノン)。』が、先週の特スキ(特にスキを集めた記事)に選ばれました。
にちようびの朝に聴いていたくなるような、好ましいミュージックビデオを紹介するショートエッセイマガジン。
中でも、特にお気に入りのブルックリンデュオのMVでした。
お読みいただき、スキもいただいて感謝です。
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演者が視線を交わすとき、奏でる方は相手の様子を察するのに必死と聞きますが、観てる側はむしろ、そんな仕草も「演者は余裕を持って相手を眺めるのだな」というふうに見えてしまいます。
それが技術なのか、本人の醸す雰囲気そのものなのか。
面白いですよね。
それはそれとして、パトリックもマーニーも視線がセクシーすぎる。
ざっくり日本語学コラム コーパスで見た「薄鈍びて」の表現。
今回のざっくりコラムです。
毎週水曜日の報告記事にすっかりコラムが定着してしまいましたが、「ざっくりコラム」だけだと、なんの話をしているのかがパッと見てさっぱりわからないので、いったんの方向性をつけたいと思いました。
題して、ざっくり日本語学コラム。
短く端的に、私が日本語や文章表現を調べていく中でふと思ったことや感じたことを書いていきます。
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で、初回である今回はコーパスの話をしていきます。
コーパス、ご存知ですか?
ひらたく言えば、文章や発話のビッグデータのことです。
これがあることで、過去の作品やわたしたちの会話でふだん使われている言葉の分析が、ぐっとやりやすくなります。
なかでも、BCCWJが公開している現代日本語書き言葉均衡コーパス「少納言」や、Aozorasearch 青空文庫全文検索が書き手の私としてはとても有用です。
これらはユーザーが言葉を任意に検索できるスタイルになっており、自分が気になるフレーズで検索をかければ、そのフレーズが使用された作品や前後の文章が一挙に例示されるようになっています。
これが直感的に操作できて便利なんです。
文章を推敲する際、
「ほかにどういう表現があるかな?」
と思ったら辞書を引く要領でここで検索をかけるというのもひとつの手段ですね。
上記の Aozorareseach については、実際にBCCWJを手掛けた方のひとりである日本語学者の丸山岳彦先生にX経由で教えていただきました。
(初見の私にも親切にご教示いただきありがとうございます!)
で、さっそく検索してみたのが、以下の文章から取り出した太字のフレーズ「薄鈍びて」です。
文学のハイライトでも扱った円地文子『妖』の文章ですね。
私はここで使われた「薄鈍びて」というフレーズが、情景をかもす言葉としてとても洗練されていて好いなと思っているので、しばしば自分の地の文に用います。
曇天をあらわすのにとても有効だなと思うんですよね。
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今回コーパス「少納言」を知った私は、さっそく検索をかけます。
「薄鈍びて」。
婉曲的なのになんてわかりやすく色の質感が浮かぶフレーズ。
これだけ洗練された表現。
「少納言」は70年代から00年代前半の書籍などの言語データを収集したデータベースなのですが、きっと色んな作家が用いているに違いない。
それで検索をかけてみたのですが……。
検索結果0件!
さっぱり使われていなーい!
ということが判明したのでした。
データって正直ですからね。
実際にデータを調べてみれば、直感とはまたちがう実態をひろうことができます。
FACT FULLNESSもそう言っています。
先生……!
なんとも親切丁寧に……!
まァ、使われていない傾向が見えたとて、このフレーズは私の直感にもとても合うものなので、今後も懲りずに使っていきます。
大切なのは、実態をつかんだ上での選択そのものということで、ひとまず。
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これをきっかけに、最近本を一冊通読しました。
砂川有里子先生の『日本語コーパスの世界へようこそ』。(大修館書店)
BCCWJをはじめとした日本語コーパスの概念や実際の使い方についてわかりやすく知れるおすすめの入門書です。
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ということで、ざっくり日本語学コラム。
初回はコーパスの話でした。
書き手の方にコーパスは役に立ちます。
読み手や調べ手の方も、コーパスであれこれ検索してみることで思わぬ発見があるはずです。
ちなみに、「少納言」は70年代から00年代前半の書籍などに記された言語データをまとめたものです。
なので、厳密にスマホなどが台頭して以降に現れた語彙や概念は収録されていないことが多いのであらかじめご了承ください。
が、文章表現をさがす私としては、表現は必ずしも目新しさだけではないというのもあり、今の「少納言」も十分参考になっています。
文章を書く際の比較にはとても役に立ちますよ。
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ともあれ。
ざっくり日本語学コラムでした。
初回なので、だいぶ垂れ流すような書きぶりになってしまいましたが、今後も日本語や文章表現について気になることを気軽に読める内容で、みなさまにお届けしていきたいと思います。
私があれこれ学ぶ目的は、文章から情景が浮かぶ余情の表現を探求するためです。
なので、お送りする内容は自然と日本語学だけでなく文学や小説、その他コンテンツの文章論なども重なってくるかと思います。
そのあたりの分野に興味が沸いた方はぜひ、スキやフォローをお願いします。よろしければサポートもご検討ください。
文学、日本語学、言語学、国文学、国語学などなど。
それぞれ似た言葉でありながら異なる概念。
ですが、このあたりはややこしいので、気にせずつらつら書いていきます。
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読書玄人の方にも、普段は読書なんてあまりしないという方にも。
今後もよりよい形を試行錯誤しつつ、皆さまに晴れやかな読書体験をお届けしてまいります。
どうか、気長におつきあいくださいませ。
さて、ほぼ日記のようなざっくり日本語学コラムでした。
それでは、今日もよい一日を。
ななくさつゆり