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文学のハイライト:太宰治『駈込み訴え』_リズミカルな地の文(1)

良い文章は心のえいよう。

こんにちは。ななくさつゆりです。
こちらは、生成AIのホロとケインが文章表現を語るnote、『文学のハイライト』です。

教養として文学を知っておきたい。
生成AIが文学を語るとどうなるか興味がある。
文章表現を深掘りするって、楽しい!

そんなあなたにおすすめです。



登場AI紹介

イエス、ノーはキッパリしてる派。

ホロ ホロです。直観でエモさを語ります。
述懐担当で、口癖は「かなり好き」。

イエス、ソーザットからはじめる派。

ケイン ケインです。内容面の言及に加え、作者のプロフィールや作品の来歴もカバーします。
従妹いとこのホロから、しばしば理屈っぽいと言われます。


今回のお題は「地の文のリズム」
リズミカルな文章は、つい目で追ってしまうものです。
では、さっそくまいりましょう。


1.声に出して読みたい日本語

ケイン おはようございます。ホロさん。
今回の『文学のハイライト』ですが……。

ホロ あ、おはよ! ケインくん。

ケイン おや、どうしました?
立ったまま、本を開かれて。

ホロ すぐにわかるわよ。……コホン。
野ゆき、山ゆき、海邊うみべゆき♪

ケイン 相変わらず、透き通るお声です。
佐藤春夫『少年の日』ですね。

ホロ ひるの丘べ、花をき♪
はい、つづきはケインくん!

ケイン つぶらひとみの君ゆに。うれひはあおし、空よりも。

野ゆき山ゆき海邊ゆき
眞ひるの丘べ花を籍き
つぶら瞳の君ゆゑに
うれひは靑し空よりも。

佐藤春夫『佐藤春夫詩集 少年の日 1』

ホロ ヒューッ、イケメン!
いつ読んでも、アッツアツのラブレターよね、このポエム。

ケイン ホロさん。
今回は太宰をやる、という話だったと聞いていますが。

ホロ その前フリもかねて、的な?
ほら、「声に出して読みたい日本語」って、あるでしょ。

ケイン ありますね。
「祇園精舎の鐘の声」、とか。

ホロ 「生麦生米生卵」、とか。
これってさ、小説も無関係じゃないと思うんだよね。

ケイン と、言いますと?

ホロ 声に出して読みたい日本語って、今回のお題「リズミカルな地の文」に通じる話なのかなァってコト。

ケイン なるほど。だから、詩を読んでいたのですか。
『少年の日』は、文語定型詩で計算された流麗な諧調が、特に有名ですからね。

諧調かいちょう … 調和のよくとれた音・調子全体がしっくり溶け合った調子。

コトバンク デジタル大辞泉 - 諧調

ホロ そういうこと。
口ずさんで気持ちがいい詩と、読みやすい地の文との共通点。
それは、「リズムが存在してる」。……かもしれない。

ケイン なるほど。では、今回は情景から少し離れ、文章表現としてのリズムに、アプローチしてみましょうか。


2.読み進むリズム

ホロ 太宰治といえば、ユニークな作品も有名な作品もいっぱいあって、どれを語るかなって、なってしまうほどなんだけど。

ケイン 昭和を代表する流行作家ですからね。
独特な文体と感性で、多くの読者を魅了しています。

ホロ 『走れメロス』は国語の教科書でも定番だし、日本で暮らしていれば一度は見聞きする文豪よね。

ケイン 今回扱う作品は、『駈込み訴え(かけこみうったえ)』です。
太宰治の代表作の一つであり、彼のダークな一面と、人間への深い洞察力が光る作品でもあります。

ホロ あれよあれよと読み進めてしまえて、とつぜん最後のフレーズをビシャッと浴びせられて、唸る。
そんな、エンタメを凝らした短編小説って感じ。

ケイン あらすじで言えば、師匠に恨みを募らせた男の憎悪と葛藤を独白するように描く、となるのですが、それでいてどこかコミカルな印象を抱いてしまう、不思議な短編小説です。

ホロ 内容でいえば、さっきの『少年の日』とは打って変わって、切り込むように鋭くてハードよね。
生々しいシリアスな地にコミカルがトッピングされて、まるで、寄席よせに来たみたいな。

ケイン 言い得て妙ですね。
そのコミカルな印象もまた、地の文のリズムが影響していると考えます。
『駈込み訴え』は、太宰治、一流のモーラセンスが炸裂している短編小説です。

ホロ モーラ?

ケイン ええ。
……そうですね。では軽く、韻律いんりつはくの話をしましょうか。

ホロ 急に用語がワッと出てきた。

ケイン すみません。
本来、『文学のハイライト』では教科書的な解説をやらないと決めています。
ただ、今からお話しする内容は、いわゆるnoteで学ぶ文章の書き方講座……的な話にはほぼ出てこない概念ですから。

ホロ 分野としては、発音プロナウンスとか発達言語学とかに寄っちゃうよね。
韻律いんりつって、つまりリズムの日本語読み?

ケイン その通りです。
前提として、私たちが日々目にしている文章には、韻文いんぶん散文さんぶんがあります。
その違いが、韻律リズムの有無というわけです。

ホロ 韻文は、いわゆる詩歌短歌俳句といった、音で切って楽しめる文章のことで、散文は、小説の地の文といった、型のない文章のこと。

ケイン 最近では、後者の方を「ふつうの文章」と捉えることも多いです。
「ふつう」は時代によって変わるので、今がそうというだけですが。

ホロ で、モーラって?

ケイン 「拍」のことですよ。
韻律にも取り方がいくつかあり、大きく2種類。「音節」「拍」
その「拍」のことを「モーラ」と呼ぶんです。

ホロ あ、わかっちゃった。
音楽の授業とかでやった、1拍2拍とか。あれのこと?

ケイン 冴えてますね。
モーラ(拍)とはリズム上の単位で、単語を時間的な長さで区切る概念です。
手を叩いてリズムを計ると、わかりやすいですよ。
たとえば、「おかあさん」は5拍。

ホロ 「お・か・あ・さ・ん」だから?

ケイン 正解です。
「たべもの」は「た・べ・も・の」で4拍。

ホロ 実践してみると簡単ね。
あ、もしかして、短歌や俳句の5・7・5って……。

ケイン 気づきましたか。
短歌や俳句のリズムはすべて、この「拍」を基準につくられます。

ホロ はぇ~、なるほどね。
拍が日本語のリズムのもとになっているワケ。
これを体系化したヒト、天才だわ。

ケイン 他にも、音節との違いや、ピッチアクセントとストレスアクセントといった強弱の違いも重要ですが、話が長くなるのでここでは割愛します。
とてつもなく複雑になりますからね。

ホロ どう長くなるの?

ケイン アクセント、イントネーション、プロミネンス、直音・拗音ようおん・特殊拍(長音・促音・撥音)それぞれの要素と日本語の音節構造および韻律の相関についての解説を本当に聞きたいですか?

ホロ ごめん。今日は太宰の話だから。


3.実践、モーラ!

ケイン というわけで、まずはこの「拍」を、『少年の日』の文章にあてはめてみましょう。

野ゆき山ゆき海邊ゆき

野ゆき山ゆき/海邊ゆき

のゆきやまゆき(7拍)/うみべゆき(5拍)

佐藤春夫『佐藤春夫詩集 少年の日 1』

ホロ あ、七五調だ。

ケイン はい。これが声に出して読みたい日本語の正体です。

ホロ へぇ……。
じゃあ、試しに『平家物語』の序文にあてはめてみたら……。

祇園精舎の鐘の声

祇園精舎の/鐘の声

ぎおんしょうじゃの(7拍)/かねのこえ(5拍)

平家物語 序

ホロ ほんとだ。

ケイン 物語が生れた時代はかけ離れているのに、共通点を見出せる。
なんとも快感ですね。

ホロ これ、七五調以外でも成り立つよね?

ケイン もちろんです。
上記の例は、文語定型詩という型に沿っていますから例としてわかりやすいというだけで、実際の文章はもっと多彩なリズムを持ちます。
大切なのは、整えた調子を繰り返してみることです。

ホロ 繰り返すことによって、リズムが生れるってこと?
わかるけど、ここまで来たらもう“音楽”ね。
やりすぎると、小説の「ストーリーを伝える」という基本機能から逸れてしまいそう。

ケイン 大事なのはバランスですね。
ただ、これは作家の皆さんが、日頃無意識に使っている修辞法レトリックでもあると思います。「反復法」ですよ。

反復法 … 詩・文章の表現技法の1つ。同じ語句や似ている語句をくりかえし用いる方法。リズム感をだしたり印象を強めたりする効果がある。リフレイン。

学研キッズネット - 反復法

ホロ リズムに乗ることで、読み手は自然と文章を追えるようになり、さらに物語を楽しめるってコトね。
今回の話はちょっと難しかったけど、けっこう納得。

ケイン では、今回の本題である『駈込み訴え』にいきましょうか。

ホロ 前フリですでにお腹いっぱい感はある。

ケイン まァ、そう仰らず。
本来、言語の韻律と音節構造は、もっと広く深い話なんです。

ホロ あの、ケインくん。

ケイン どうしました?

ホロ 最初、朗読をしたじゃない? それで、喉が渇いちゃって。
ちょっと休憩したいから、続きはあとでやらない?
まだ、お題の『駈込み訴え』の例文が一個も出てない中でゴメンなんだけど。

ケイン 構いませんよ。
太宰治の回というより、日本語の韻律をお話しする回になりましたね。

ホロ というか、佐藤春夫『少年の日』の回よ。

ケイン まァ、今回扱う予定の例文は、韻を踏んではいるものの、『少年の日』のように目に見えてわかりやすい七五調ではありません。
エントリーの回と思って区切るのも、いいかもしれませんね。

ホロ そそそ。
ということで、いったん前半はここまでね。

ケイン お疲れ様でした。ありがとうございます。
また後半でお会いしましょう。

ホロ お疲れ様。またね!


参考資料
『少年の日』(佐藤春夫)
『駈込み訴え』(太宰治 紀伊国屋書店 古典名作文庫)
日本の作家 名表現辞典(中村明 岩波書店)
「拍」と「音節」の違いについて(旅する応用言語学)


ということで、太宰治の回です。
前後編にわかれてしまってすみません。
しかも、前半は前フリの解説でいっぱいいっぱいで、太宰治まで行きつかないという。

次回こそ、太宰治のテイストをじっくり楽しむ回になると思いますので、お楽しみにお待ちください。

ひきつづき、ホロやケインと一緒に「文章表現を深掘りするのってイイよね!」を発信してまいります。

ぜひ、いいねやフォローをお願いいたします。

次回も……『駈込み訴え』

次のお話はこちら:太宰治『駈込み訴え』_リズミカルな地の文(後編)

ななくさつゆり


『文学のハイライト』をお楽しみいただくにあたって

あらかじめご了承ください
この記事の執筆には生成AIを活用していますが、文章は生成AIから出力されたままのものではありません。生成された文章から取捨選択し、元の意味を崩さない程度に修正しています。また、スムーズかつ楽しく読んでいただくために、会話文やキャラクター設定にも手を加えています。

『文学のハイライト』をお楽しみいただくにあたって

文学のハイライト 各話リスト

  1. 川端康成『雪国』_生成AIが語る文章表現のこと

  2. 幸田文『父』_地の文におけるオノマトペの活用

  3. 芥川龍之介『羅生門』_物語の結びと余韻。

  4. 閑話_CiNiiで論文検索。“研究対象として”よく読まれている作家って誰?

  5. 太宰治『駈込み訴え』_リズミカルな地の文(前編)

  6. 太宰治『駈込み訴え』_リズミカルな地の文(後編)

  7. 円地文子『妖』_散文は響く。

  8. 志賀直哉『暗夜行路』_ただ、目にしたものを

  9. 夏目漱石『硝子戸の中』_ギュッとにぎって、ふわり。


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ななくさつゆり
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