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エッセイ 梅酒のこと。半可通ほど通ぶりたい。(中編)

前回:梅酒のこと。半可通ほど通ぶりたい。(前編)



ゼミ棟の風気。



 先日、数年ぶりに福岡大学に行ってきた。
 バス停がある裏門から入り、鞄を肩に提げ淡々と歩く。
 ひざしは柔らかい。目の前を一枚の葉が風に浚われていった。
 夏を忘れてしまいそうな、涼しい風の吹く日。

 視界に見える校舎は十号館に一号館。
 通り抜けたバス停と、横目には自治会館。
 奥には白亜の文系センター棟があって、眼下の空き地に立つバスケットコートの周りは、私が在学していた頃と変わらずそれなりの賑わいを見せていた。
「変わっているところと、変わってないところと……」
 もちろん、それぞれある。

 ところで、この大学に関し在学生や卒業生が問わず語るところでいえば、常に工事している、という小話だと思う。
 私が通っていた頃から、なんなら私が入学するずっと前から、この大学はいつもどこかの普請をしている。
 おかげで、いつも鳴ってる工事音は、福大生にとって定番の小ネタだった。

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