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短編小説 【水溜まりの記憶】

 水溜まりの水を頭から浴びるには。
 くるぶしを、水溜まりに浸してみた。そのままお辞儀をして頭から水溜まりにどぶん。更にそのまま、深く深く水に潜った。身体全部が水溜まりまみれ。成功。
 耳に付けっぱなしだったイヤホンが、雨上がりの唄を流したままで上へ上へと消えていく。満足したので元の水溜まりに戻ろうと空を見上げた。
 小さな窓がたくさん見える。街中の水溜まりが空の上。
 時々、黄色い長靴が光った。
 時々、カエルと目が合った。
 革靴を履いた人間の舌打ちが何回もこだました。
 少し遠くに一際広い大きな窓が見えたのでそこに向かった。 顔を出すと小さな海辺だった。
 そんな過去もあったなって。

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