短編小説 【桜のち】
「街角の 桜溜まりの霞より 赤へ赤へと 春を消し去る」
「何それ」
「短歌だよ」
「…ふぅん」
学校の帰り道のいつもの河川敷を、りっくんと2人で歩いていた。今日は大学3年の始業式で、今日はとても調子が良くて、明日からも調子が良いままだといいなぁと思っていた。数日前までしっかりと調子が悪かったので、私はまだ、春を満喫出来ていなかった。私が春を満喫する為に詠んだ短歌は、私たちの周りの空気を少しだけ澱ませた後、りっくんの「ふぅん」と一緒に風に乗って消えていった。桜の木がこれでもかと