該非判定という仕事は耳にした事はあるでしょうか?
簡単に言うと、輸出する時の法律チェックです。
正確な法律判断を求められる仕事で、世の中のサラリーマンを苦しめる仕事の一つです。
厄介なのが、難解な上に解釈をミスって必要な手続きをせずに輸出すると、外為法違反でトンデモ金額の罰金や懲役刑が科せられます。
具体的にどんな厄介さがあるのか、想像し辛いと思います。
そこで、裁判例という先人が残した記録を見つけたので、読み解いていきます。
運用通達の解釈
後述する裁判例の争点の一つです。
「輸出貿易管理令の運用について」という経済産業省が出した通達を運用通達と言います。
実際の文書はこんな感じ。
運用通達は、外為法の多重構造の中の一番下の部分であり、法律の細かい解釈について解説しています。
外為法>輸出令>貨物等省令>運用通達
外為法:骨格
輸出令:規制する貨物を定める
貨物等省令:規制する貨物のスペックを定める
運用通達:解釈を定める
「他の用途に用いることができるものを除く。」
「部分品若しくは附属品」の該当性の除外要件について、運用通達で定めた文言です。
ここが裁判の争点となります。
令和元年(う)第101号 関税法違反,外国為替及び外国貿易法違反被告事件
原審 広島地方裁判所 平成29年(わ)第232号
概要
裁判の主な争点
第一審の判決に対し、高裁が「違う、そうじゃない」と法令の解釈をガチ解説を加えた上で棄却した裁判例でした。
高等裁判所による運用通達の解釈説明
結論、運用通達は、絶対に把握して該非判定を行わなければならないという事です。
原文は超長いので、先に要約します。
ポイントは、運用通達は法令に明記されていない事項ですが、実務上定着しているものであり、法令解釈として正当なものであるという事です。
そしてここが最も重要ですが、この解釈をするにあたり、「他の用途に用いられる可能性が具体的、現実的」である必要があるという事です。
以下、原文です。
裁判の結末
被告が輸出品は他の用途に用いられると主張するも、裁判における専門家の検証で、「他の用途に用いられる可能性が具体的、現実的」とは認められませんでした。
他の用途に用いることができるものを除くという基準は、自分の都合のいいように解釈して良い訳ではなく、具体的に示せることが必要です。
該非判定を行う上で、具体性を突き詰めておかなければなりません。
現実
仕事の納期が迫っていたり、商談成立にノルマが掛かっていたり、時間の制約があります。
しかし時間がないからと言って、「他の用途でも使えるからいいだろう」とよく確認せずに輸出を進めれば、この裁判と同じ結末を迎える事になります。
本当に具体的に示せるくらい確認したか?
時間の制約の中、サラリーマンに課される試練です。
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