好き嫌いを克服したいか、したくないか。
仕事の帰り道、ふと横を歩いていた二人の女性の話が耳に入ってきた。
「わたし柚子が苦手でー」
「わかる!私も大嫌い!」
「子どもの頃からグレープフルーツもダメなんですよねー。アレ苦いじゃないですか。」
「あれは食べ物じゃないよね」
びっくりしてしまった。
私は柚子とグレープフルーツが大好きだ。
いや、柚子味だとか柚子胡椒味だとかの新商品なんかがでるとこれは絶対ヒットしそうなんて思うくらい、人気があると思っていたくらいで。
こんなにも嫌いな人がいるのか!
うわ、自分の先入観でものをみてはいけないなあ。
だけど、食べ物の好き嫌いってどういうことから嫌いになるのかなあ。とふと考えた。
私は食べ物の好き嫌いがない。
いや、蜂の子とかイナゴの佃煮とかダメかもしれないし、
世界の珍しい食べ物の中には絶対無理なものもあると思う。
でも日常的に苦手とする食べ物はないのではないかなあと思っている。
だけど、パクチーだけは衝撃的だった。
これは「ママレモン」だ!と思った。
若い方はご存じないかと思うが、
「ママレモン」とは、私の子どもの頃、家庭に普通にあった食器洗い洗剤のことである。
もちろん飲んだことはないのだが、パクチーを食べたとき、飲んだらきっとこんな味だろうというような気がする「におい」が鼻の中いっぱいに広がった。
わあ。無理だー!
強烈に拒否反応が出た。
「この食べ物だめだ!」というのはこういうことか!
でもタイ料理は好きだったので、その後なんどか料理の中でお会いすることに。もしかして平気になっているかも?とその都度挑戦するがやはりダメであった。うーむ。手ごわい、と思った。
周りの人にも唯一パクチーはだめだわーと言っていた。
しかしある日お店でカオマンガイを食べた時、またパクチーも懲りずに挑戦し、「おや?」と思う。いいじゃないか!
おいしいというのでもなかったが、この料理に合う!と思った。
なぜか、この料理には欠かせない!と思ったのだ。
だから、パクチーだけのサラダとかパクチー味のお菓子とかを好んで買うというのは今でも全くないのだが、料理によってはパクチーがあることの「おいしさ」を理解できるようになった気がした。
そして私は「克服したかったんだな」という気持ちもあわせて気づくことが出来た。そのことがなんだかうれしかった。
なぜかというと、これは人間も同じなのではないかと思ったからだ。
好き嫌いというと、思い出す話がある。
息子や娘が小学生の時にお世話になっていた野球チームの監督が毎年合宿前に話してくれた話なのだ。
好き嫌いはなくそうという話だった。
お母さんが作ってくれた食事だからとか
食べ物に感謝しなさいとかそういう内容ではなかった。
人間の好き嫌いをなくそうという話だったのだ。
好き嫌いを克服することで得るものはたくさんあると監督は言った。
こどもたちはただぼんやりしていたけれど
私は、
こどもたちにこういう話をしてくださってありがとうございますと心の中で思った。
夫は結構好き嫌いが多くてめんどくさいなあとよく思っていた。
改めてどうして嫌いになったの?と聞いてみる。
最初から嫌だったの?あんまり食べ過ぎて嫌いになったの?
最初の1,2度でダメだと思ったんだよね。それでもう一切たべなくなった。見るのもいやだ。気持ち悪くなる。
食べてみようかなとか克服したいって気持ちはなかったんだ。
全くないね。食べれるようになれなくていいし。
夫の人間関係そのままだなあ。
なんだかちょっと寂しかった。