「療育」ってなあに?【後編】〜療育の目指すところ〜
前編は、そもそも療育とは何か、をテーマにお話しました。
後編は療育が、子どもの育ちに対してどのようなことを目指しているのかをお話したいと思います。
基本的生活習慣のよりのぞましい形での自立
就学前に大事なことは、基本的な生活習慣が身についていることです。
しつこいようですが、これは「発達支援」が必要なお子さんも同じです。
身の回りのこと~衣服の着脱や食事、排泄、入浴や歯磨き等の清潔の習慣等が大人の手を借りつつも、よりのぞましい形で身についていることが大事になります。
例えば、衣服の着脱。
小さい頃から、ズボンを脱がせてもらい、おむつを替えたら、ズボンをはく。それから、上着を脱いで、下着を脱ぐ。新しい下着を着せて、新しい上着を着せる~という流れで着替えさせてもらう経験をしてきた子は、大きくなっても一度に全部脱いで、全裸になってから着替えるということはしません。
これは、性被害から自分の身を守るために大事なスキルです。
小さな頃からのまわりの大人の接し方で、お子さんはよりのぞましい生活習慣を身に着けていきます。
これが、一度社会的にのぞましくない形で身についてしまうと、変えていくことにとても苦労をします。
誤学習ともいいます。誤学習を防ぐことも発達支援ではとても重要になります。
しかし、誤学習させたくないからと、発達に合わない箸を持たせたり、文字や数を教えたりということが時々見られます。
学校に入ってから苦労をしないように、発達支援で先取りをして文字や数を教えてほしいという要望をお聞きすることもあります。
文字や数については、幼稚園保育園で教えるところもありますし、賛否両論あるところです。
保育所保育指針には、「自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚をもつようになる」と書かれており、積極的に教えましょうとは書かれていません。
そこから考えると、文字や数について、興味や関心が育っていればよいのではないかと個人的には考えています。
文字が書けることよりも、腕や手を使って十分に遊び、手の巧緻性が育っていたほうがその後の学習に無理なく取り組むことができることが多いのです。
お子さんへの支援とともに
児童発達支援ガイドラインの基本理念の中に、「家族支援の重視」とあります。
早期療育のところでもあげましたが、発達支援の場で取り組んでいることを保護者やまわりの大人も一緒に取り組んでいくこと、普段の生活の場で広く適用ができるようになることがお子さんにとっては重要です。
保護者の方は、お子さんの発達の遅れを指摘され、まわりのお子さんとの違いを感じ、とても不安定な状況であることが多いです。
発達支援では、お子さんへの支援だけでなく、ご家族への支援も必要です。
保護者の悩みを聞き、支えとなり、解決策を一緒に考えることを大事にしていただきたいと、これは発達支援を行っている専門家の皆さんにお願いしたいと思います。
発達支援の目指すところ
〜”できるようにさせる”のではない〜
どんな子も、将来はまわりの手を借りつつも、自立をすることがのぞまれます。
自立をする上で、大事なことってどんなことでしょう。
私は、”自分が自分を好きでいられること”と”他者を信じられること”だと思っています。
誰もが人と助け合って生きていますが、発達に心配のあるお子さんたちは特に、人の手を借りることが必要になります。
相手を安心して受け入れられること、信じられることの根底には、自分が他者に受け入れてもらった経験が必要です。
乳幼児期に保護者を含めたまわりの大人から、
”どんなあなたも素敵で、大事な存在だよ”
と受け止めてもらえることが大事だと思っています。
これは発達支援の必要なお子さんだけに限りません。
どんなお子さんにも必要なことだと考えています。
最近の乳幼児期のお子さんを見ていると
○○ができない
みんなと一緒にやらない
というように周囲と比べられて、ダメだしをされていることが多いように思います。
一日も早く、座ることができて、歩くことができて、しゃべることができて、お友達と仲良く遊ぶことができて…というように”できること”が求められすぎているように感じるのです。
”できること”ってそんなに重要でしょうか?
大人でおばさんになった私だって、できないことはたくさんあります(笑)。
できないことは、誰かに助けてもらったり、道具を使ったりして、人生何とか生きています。
できないことがあっても
”自分は自分が好き”
”自分を認めてもらえる他者がいる”
という支えがあれば、人生はしあわせに生活をしていけるのではないでしょうか。
これまで、たくさんの発達支援が必要なお子さんと出会ってきました。
手厚いサポート、支援が必要なだけで、根底に流れるものは、どんな子も同じだと思うようになりました。
発達支援の必要なお子さんだけでなく、乳幼児期に何が大事なのか…
このしあわせお母さんプロジェクトでは、考えていきたいし、広めていきたいと思っています。