「障害受容」をたどり不妊を受け入れる
医療界隈の方はご存知かもしれませんが、障害を受け入れる過程には5つのステージがあるといいます。
1 ショック期(感情が鈍麻した状態)
2 否認期(現実を否認する)
3 混乱期(攻撃的・自責的な時期)
4 再起期(解決に向けて努力する)
5 受容期(障害を受け入れ、新しい価値観をもつ)
この5つは順番に辿っていくわけではなく、各段階を行ったり来たりしたり、一段や数段階飛ばしたりしていきます。また、全員が受容期に至るわけでもありません。
この「障害受容」とは、乱雑でまとまらない思考が徐々に整理されて、最終的にはあるべきところに落とし込まれる(受容される)流れのことで、前提として脳が障害を受けるなどし、高次脳機能が正常に働かない場合には成立しないと考えます。
そういう意味で、この障害受容のプロセスは日常生活に支障が出るほどの身体障害を受けた人“本人”にクローズアップされる現象かと思いきや、身体機能に限らずあらゆる障害をもつ人の“家族”にも起こるものと捉えられます。
きちんと段階を明確にすると大袈裟に感じますが、私たちは日常生活の中で同様の流れを自然に取り入れて困難を乗り越えているように思います。
この障害受容は、現在の医療職の資格取得時に学習したものですが、今回2回目の体外受精が失敗したときの精神状態を当てはめてみると、今では手に取るように明確に把握できるのです。
実際渦中にいるときの本人は必死すぎて、まったく客観的に分析できないのですが…
私の場合は、ショック期(思考停止)から混乱期(夫に当たる、仕事を辞めたくなる)を経て、夫と近郊で旅行をしたり、本を読んだり勉強したり、妊娠以外のことに気をそらしているうちに受容期に至ったと振り返ります。
不妊の解決に向けた努力は特にしていませんが、乱雑な状態の思考からは脱出したので、私としては沼から抜け出した感覚があります。
そして今どういう心情かというと、「妊娠できない、それも仕方ないか」という吹っ切れ具合です。
薬やサプリメントしか摂らない生活をして1ヶ月、不妊治療といえるものはすべてストップしています。最近は料理を楽しんでできるようになりました。
今までだと35歳までに妊娠・出産したいと考えていましたが、そのタイムリミットも超えてしまいましたし、うまくいかないものに期限を設けるのは自分をより苦しめるだけだとわかったので、妊娠に対して目標を設定するのをやめました。
不妊治療で苦しんでいる方、ほかの事情で悩んでいる方、様々おられると思います。
苦しみの渦中にいるときは、自分が今どういう状況なのか把握するのは困難ですが、時間が経つと思考は整理されていきます。
自分を傷つけない方法でただ労ってあげることが大切かと思います。