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三田誠広著『般若心経の謎を解く』を読みました

三田誠広著『般若心経の謎を解く』を読みました。

これまで般若心経については仏教学者佐々木閑や空海と仏教専門家の解説書を読んできましたが、今回は三田氏という文学者が記述するものです。だから、仏教に限らず、キリスト教、ギリシャ哲学なども絡めた文学的な説明となっていて新鮮でした。

般若心経のエッセンスは「空」の概念を知ることであるが、これは言葉では表現できないのであると何度も強調する。意味がわからない呪文を、ひたすら無心で唱える、そこに無我の境地が生まれ、人を苦悩から解放してくれるのです。

そうすると、こうした般若心経の解説書を読む必要なんて無いことになる。

だが、三田氏はそうではないと言う。

仏教は、輪廻するという恐怖から発生した宗教です。虫ケラに生まれ変わりたくないという願望がある。そのためには、解脱しなければならない。そうした切迫した要請があって釈迦の教えが生まれてきた。

でも考えてみると、虫ケラは無心に生きているように見える。何の迷いもなく不安もなく、無心に生きている虫ケラはすでに悟りの境地に達していることになる。

一方、人間はそうではない。

煩悩にまみれ、不安だらけで、苦悩に悶えて生きているのだから、何と不幸な生き物なんだということになる。

だが、三田氏は、人間として生まれてきて良かったと言う。

認識力と、思考力をもった人間として宇宙を見渡し、また自分を見つめて生きていくことに、幸せを感じると言うわけです。

一つ一つの言葉の意味を確認しながら、『般若心経』を唱えてみましょう。 何度 も何度も唱えてみましょう。やがてあなたの頭の中で、一つ一つの言葉の意味が崩 壊し、262文字の言葉が、音楽のように感じられる時、あなたは、一回り大 きな世界に、一歩を踏み出すことができるのです。

意味もわからず、ただ般若心経を唱えているだけの人々よりも、知性をもつことの 苦悩をかかえたまま、意味を理解し、さらにその意味を捨てて、しだいに「無心」 の領域に近づいていく。そのような人々の前に、『般若心経』の262文字 は、まったく違った輝きを見せてくれるはずです。

まず、意味を理解しましょう。それからその意味を、少しずつ忘れていく。最後 には、音楽を聴くように、『般若心経』の262文字の音律だけを楽しむ、と三田氏は主張している。

私自身は、般若心経を唱えるようになってからわずか半年ですから、なんとか暗唱はできるようになったものの、ただそれだけのことであり、今後も精進し続けて、なんとか「無心」の境地に達したいものです。


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