
おもてなしとサービスと、人としての親切さ
わたしが初めて中国本土に行ったのは1990年代の後半。大学の提携校を訪ねるという海外研修(半分は遊び)のような旅だった。
印象に残ったことはいろいろあるけれど、その一つが当時の社会主義的服務(サービス)。それはもう、びっくりするくらい日本と違っていた。
宴席ではテーブルいっぱいに料理が出るのだけれど、皿を置く場所がなくなると前の皿の縁に上に重ねていく(今でも地方ではやるらしい)。グラスや食器の汚れを指摘すると、新しいものと交換するのではなくティッシュを渡される、などなど。そもそも「服務員」と呼ばれるサービススタッフが無表情かつ無愛想で、言葉もわからない大学生からすると、非常に声をかけにくい存在だった。
初めのうちは上から目線で「まったく社会主義ってヤツは…」と思っていたけれど、日本に帰る頃にはかなり印象が変わっていた。皿の置き方は雑でも料理はとても美味しかったし、困っている時に話しかければ親身になって助けてくれる。友人はデパートで買い物をした際にクレジットカードを受け取り忘れてしまったのだけど、気が付いたスタッフの人が走ってバスまで届けてくれた。
(カードを返し忘れなければ良いのでは…という話はいったん横に置いておく)
なんでこんな事を書いているかというと、先日、初めて行ったガチ中華店が、ほぼ満席だったにも関わらず奥からテーブルとパイプ椅子を出し、席を作ってくれたのだ。雰囲気・サービスともに大陸的(雑)ではあったけれど、料理はとても美味しく、何より疲れた私たちへの思いやりが嬉しかった。
ちなみにその日はレストランを予約していたのだけれど、渋滞に巻き込まれてしまい、電話したものの連休中なので...と入店を断られていた。コンプライアンス的には間違いのない対応だろうけど、なんというか、もうちょっと親身になって欲しかった。
もちろん不親切な中国人だってたくさんいるだろうし、融通を利かせてくれる日本のレストランもあるだろう。ただ無表情で無愛想な仮面をかぶっていても、実は親切という人はたくさんいる。イタリアンは食べ損ねたけれど、美味しくガチな中華を味わいながら、見かけて人を判断してはいけないね、と昔を思い出した連休だった。