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俺の屍を越えて行け / #青ブラ文学部

#ショートショート  本文:799字)

山田から「あれから10年になりました。集合です」との案内が届いた。場所は『枯木荘 101号室』とある。なつかしい。あれから10年も経ったのか。

『枯木荘』は俺が大学時代に住んでいた下宿だ。ボロボロだったが、下宿代がめちゃくちゃ安かったので、俺にはありがたかった。

俺が2回生になったときに隣の部屋に引っ越してきた新入生が山田だった。山田は引っ越してきた日に「よろしくお願いします」と一升瓶を持ってきた。

引っ越しそばじゃないのか、と思ったが、そこはありがたく頂戴することにして部屋で飲むことにした。当然のように山田も上がり込んだ。

ちなみに、俺は20歳の誕生日を過ぎていたが、山田はまだ未成年だった。なので、俺だけが酒を飲み、どうでもいいことを話し、山田はお茶を飲んで相槌を打った。

それから毎日のように、山田は一升瓶を抱えて部屋に上がり込むようになった。俺がくだらないことばかり話していると、山田はまじめな顔で「なんのはなしですか」と言いつつも、口角を半分あげて笑った。

俺が卒業する前日も山田と部屋で飲んだ。
「卒業して10年したらまたここに帰ってきて飲むぞ!」
「先輩、ありがとうございました。この3年間、楽しかったです」
「おう。俺もおまえがいてくれて本当に楽しかった」

なんだか泣けてきて、どんどん酔いが回って、俺はその場のノリで訳の分からないことを言った。
「俺は普通の人間だが、おまえは大物になると思う。俺が倒れても、おまえは俺の屍を越えて行け!」

「わかりました。先輩、屍らしく、そこに倒れてください」
山田は俺をうつぶせに寝かせ、足元からドスドスと踏みつけて越えていった。

10年経った今、山田は『枯木荘』を買い取り、高層マンションに建て替えて悠々自適に暮らしている。山田は、商社であくせく働いている俺をはるかに越えていった。

あの部屋、『枯木荘 101号室』はどんな豪華な部屋になっているんだろう。楽しみだ。

一応、言っておきますが、フィクションです。
男たちの青春の物語です。
いつきさんのアドベントカレンダーです。

はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
こちらの企画に参加しています。

主宰: #山根あきらさん
企画: #青ブラ文学部
お題: #あれから10年も

モノカキングダムに応募する作品を考えていたのですが、気がついたら青ブラ文学部に参加していました。おかしい。なぜだ。

ということで、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。

またね~!

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#いつきさん 、いつもありがとうございます。
#賑やかし帯 保管庫、 #アドベントカレンダー はこちらです。


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