Roots and Routes Vol.4 インタビュー 下向依梨さん - 将来に悩める若者たちへ!
はじめに
Roots and Routesプロジェクトは、今を生きる社会人の人生のRoots(ルーツ)を探ることで、これから進路選択をしていく学生のRoutes(道)のヒントを提供したいという思いで始まった、HLABの新プロジェクトです。“人生選択”に悩まされる私たちの同年代の人たちの一つの道標になるような記事をみなさんにお届けします。
今回のインタビュアーは、HLAB大学生運営委員の谷悠太(悠太)と川上紗英(紗英)で、株式会社roku youの下向依梨さんにお話を伺います。
下向依梨さん(えりさん)
株式会社roku you 代表取締役 / 一般社団法人 日本SEL推進協会 代表理事
ペンシルベニア大学教育大学院にて、Social Emotional Learning(SEL)と 出会う。その後帰国し、東京都の小学校で教鞭をとる。教材制作会社で教材・カリキュラム作成の経験を積み、独立。株式会社roku youを立ち上げ、現在はSELをベースにした学びのコンサルティング、またプロジェクト型の学びのプログラムや研修を制作。
今回は、環境変化や多様な経験がいかにして現在のえりさんのキャリアや価値観に結びついたかを伺います。また、えりさん流の「やりたいことの見つけ方」もお聞きしました!
Icebreaker Questions
一番使うSNSは?
→ 「facebook」
一番好きな沖縄の時間帯は?
→ 「サンセット」
自分を動物に例えるなら?
→ 「大型犬」
この世で一番怖いものorことは?
→ 「信頼を損なうこと」
昔嫌いだったけど今好きになったものはありますか?
→ 「ネットワーキングの場」
無人島に何か1つ持っていくとしたら何?
→ 「一緒に死にたいなと思う人」
生まれ変わったら何になりたい?
→ 「人間」
明日地球が破壊します。最後に何をする?
→ 「美味しいものを食べつくす」
タイムマシーンがもらえるなら過去に戻りたい?未来にいきたい?
→ 「未来を見てみたい」
一人一人の可能性にスポットライトを当てるような学びの仕掛け作り
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一人一人の可能性にスポットライトを当てるような学びの仕掛け作り
紗英:今えりさんはどんなお仕事をなさっているのかということから、伺ってもよろしいですか?
えりさん:株式会社 roku youという会社で、教育周りのことをいろいろやっていて、ソーシャルエモーショナルラーニングにそのベースを置いています。全国向けのプログラムと、沖縄向けのプログラムをやっています。全国向けのプログラムは、スケールの大きなもので、通信制高校にプロジェクト型学習を提供したり、HLABのレジデンシャルカレッジのプログラムを開発したりしています。一方で、沖縄向けのプログラムは、規模が小さい”ラボ”のようなもので、最先端のものにチャレンジしています。公立の小学生向けの学びの場を作ったり、ICTを用いた遠隔の島の地域の子たちへのコーディネーターを行ったりしています。株式会社roku youの大切にしていることが一つあります。「人は生まれながらにしてたくさんの可能性の種を持って生まれてくる尊い美しい存在」であるのに、限られたところに「スポット」が当てられがちな今の教育において、一人一人の可能性をグッと押すような学びの仕掛け作りを行うということ。それが、会社としてすごく大事にしていることです。
中学時代 「進学校」に違和感を覚え、高校からスイスのボーディングスクールへ
Q1. 人生の全体を通してあなたに欠かせない3つの経験を教えてください。
中高時代の欠かせない経験は、中高一貫をやめてスイスのボーディングスクールに進んだこと、高校時代はボランティア旅行に”行かない”ことで見えた選択肢、大学時代は、大学院進学をしたことですね。
紗英:そうなんですね、社会人になってから欠かせない経験はあったりしますか?
小学校に勤めているときに、探究を推進する学校にいたけれど、そのときにあまり楽しくなかった経験かな。笑
中学校の時は、中高一貫のトップ校だったので、国立の医学部以外は負け組のような風潮があったんですよね。全然多様的じゃない環境にすごく過ごしづらさを感じて、成績がいいだけで勝ち誇ったという空気が自分的に好きじゃなかった。あまり、勉強もせず、学校もいかず、という感じでした。
流石に大切な10代をこのまま過ごすのはよくないなと思い、やめようと思ったんですよね。初めは、公立の高校に行こうと思っていて、私立に行っても、同じなんだろうなと思ったりしました。今思えばそこに行っても楽しかったんだろうなと思うけど。笑 それだったら、プランXのような感じで、海外に行ったほうがいいかなと思ったんですよね。いろんな多様性が認められるような環境が自分にとっては面白んじゃないかと。アメリカとかカナダに行ったら多様ではあるけれど、やっぱりみんな英語を話すし、少しやはり偏りがあってというのが嫌だった。スイスは多様な国家で、インドからも人が来たりしている。そういった多様性に引かれて、スイスに行くことにしました。
紗英:自分だけがクラスに馴染めていないなと感じた経験は何かありますか?
例えば歴史の授業。どうして事実だけを知らせるんだろう、いろんな背景があるのに、断片的な知識しか教えられないし、問われない。歴史の授業中に、「どういう葛藤があって、どういう繋がりがあるのかを自分は学びたいです」といったところ、先生から、「受験に関係ないのに何言っているんだ、足を引っ張るな。」と言われたのが一つの強烈な経験です。自分の提案があまり受け止められない環境がキツかったし、馴染みきれなかったです。
高校時代、ボランティア旅行に「行かない」ことで見えた選択肢
スイスに行ってから、勉強も好きだったので、成績は常にトップでした。海外の高校とかイメージしてもらったらわかるかもしれないけれど、課外活動のポイントも大切で、大体みんなボランティアをします。アフリカのザンビアでのボランティアへの募集があって、「どうして募集したいですか」というアプリケーションに答えようとしたときに、そのボランティアの目的を見直してみると、「奉仕すること」を経験することと書いてたあったんです。内容は、スイスでファンドレイズして、現地の孤児院におもちゃを寄付して子供たちと一緒に遊んで帰ってくるというものでした。目の前の人たちの10日間だけの幸せを作りたいわけではないと思って、そういうことにはあんまり自分は興味がないなと気づいた。どちらかというと、10年、100年と続くような幸せを作りたいんだなということに気づいたんですよね。
紗英:その場限りの幸せを作りたいわけじゃないと気がついたんですね。その後、次の選択とかって生まれました?
あ〜、あります!その思いを学校の先生に伝えたところ、彼がJICAを紹介してくれて、「じゃあえりが持続可能な仕組みづくりをしにいくっていうプログラムを企画すればいいじゃん!」と言われ、高校二年生の時に実際に8人ほど生徒を集めて、チュニジアに仕組みづくりを学びに行ったんです。それと、高校三年生の時に、グラミン銀行を作ったムハマド・ユヌスの書いた本をチラッと見ていて、凄い、この人「仕組み」を作り出している。「(自分のやりたいことは)これだ!」と思いました。社会のいろんな歪みの中にある人たちに幸せを届けるには、仕組みづくりが必要だなと思ったんです。それはソーシャルイノベーションや社会起業と言われる分野で、それが学べるのがSFCで...という感じで、大学進学にもつながっていきます。
悠太:どうして、海外大学ではなくSFC?
一つはお金の面、それからもう一つは、SFCで学べることが興味のど真ん中だったからです!
悠太:その決め手は何ですか?
オープンキャンパスで井上英之先生の授業を体験して、おー!この授業面白そう!と思ったからですね。それから、実際に大学にいって、自分が馴染めそうな雰囲気だなと思ったからです。
大学卒業後、「内定」を蹴って、アメリカの大学院へ進学
悠太:ファーストキャリアはどこだったんですか?
流れでコンサルに内定が決まっていたんだけれど、その時ゼミの先生に、「えりのバックボーンって何?どういうプロフェッショナルになりたいの?」と聞かれて、「あ、ない」となったんですよね。「教育ですね。」と答えたんですけど、「じゃあそのまま流されて就職してもいいの?」と教授に言われ、大学院で教育を学ぶことを決意しました。教員免許も取ってないのに、教育を仕事にはできないなと安直に考えていたんですよね。だけど、いきなり大学院進学を決めたので、一年ギャップが空いてしまった。その時たまたま、インターンをしていたNPO法人ミラツクから、就職しないかとオファーが来て、一年目は、ミラツク第一号の社員になったんです。当時から、リモートワークをしていて、こういう働き方もあるんだと、選択肢がめちゃくちゃ広がったのは今思い返してみると大きかったですね。
秘訣は、自分の強みを「最大限」生かせる環境づくり
Q2. 価値観や大事にしていること、あなたを動かすモチベーションを教えてください。今までの人生で、その価値観やモチベーションに変化はありましたか?
悠太:いろいろ経験してきたと思うんですが、その時の軸を伺いたいです。
自分が活きている環境にいるかどうかっていうところかな。プロジェクトをしていても、自分が活きているかどうかは常にチェックしているし、逆にメンバーが活かされていないなと感じると、どうやったら彼らが活かせられるかなと思うこともある。モチベーションは、本当に心から面白い!と、ワクワクが湧くことかな。
悠太:続けていくことのモチベーションって何かありますか?
こういう未来を作りたい、絶対面白いよね!という未来を強く持つことかな。それがもてない仕事はしないようにしています。その未来像が、辛くなった時に続けていくモチベーションかな。あんまり面白いなと思えないプロジェクトに乗ってしまうと、やっぱり自分が辛くなってしまうよね。
紗英:自分が活かされているって感じる時ってどういう時ですか?
一つは、没頭できている時かな。時間を気にするのではなく、まだ二時間しか経っていないのか!と時間が過ぎるのを忘れてしまったという没頭がある時が、自分の「何か」が活かされている時なのかなと思っています。もう一つは、こうしたらいけるはずだと感じられている時。それはきっと「何か」自分の中に引っかかるものがある時だと思います。
それから、アイデアが沸き続けて、突破口が見つかっちゃうなんて時かな。
教育に「多角的」に携わった経験 ーNPO法人のスタッフ、米国大学院生、小学校の教員を経て、株式会社roku youの取締役へ
Q3. 学生時代・若い時にやったことで、現在のキャリアや人生に役立った・またはやってみたけど役立たなかったと思うことはなんですか?
悠太:失敗談チックなことってあったりしますか?
失敗かぁ。失敗談ではないけれど、私は20代を、教育のあらゆる立場で関わってきたんだよね。NPOという視点から、研究という立場、教員という立場からです。そういうふうに、教育をあらゆる視点から捉える人って少ないと思うんですよね。周りからは、フラフラしてるなぁなんて思われたけれど、20代の初めからそういうふうに決めていたわけではないんだけれど、大学院を出たあたりから、20代はいろいろな立場から教育にチャレンジしようと思いました。社会にとって必要だと思うし、自分がユニークになれるだろうなと思って。もっと端的に言うと、英語できてよかったな。っていうことはありますね(笑)。 選択肢がかなり広まるから、言語ができてよかったなと思います。
悠太:ユニークになるときの一歩目ってなんですかね。
こうなったら面白そうだなっていうところにコミットするっていうところと、あとは面白そうだなっていうアンテナを立てるところ、それから応援者を見つけるところですかね。ちゃんと自分と一緒に面白がってくれる人を見つけることも大切かなと思います。
仕事に「失敗」なんてない
Q4. 今までの人生で壁にぶつかったときはいつですか?(失敗や後悔していることなど)。どうやってそうやってそれに対処しましたか?
一番難しいなぁ。失敗とか壁にもいろんな種類があると思っていて。プロジェクトがうまくいかなかったりすることもあるんだけれど、それを次に上手く活かすための情報だと捉えることですかね。立てた目標を立てた期限内で達成できたかって聞かれると半分くらいはできていないような気がするんだよね。だけど、そうやってきても、いろんな学びがあります。そして、申し訳ないなと思ったら、ちゃんと謝ることがすごく大切です。本当に誠意を伝えることで、ある種自分を納得させて、次に進む。そうやって進んできたのかな。
紗英:なるほど。えりさんの中で「失敗」と捉えていること自体はそんなにないということでしょうか?
社会的に見たら(自分に)「失敗」はいっぱいあると思うけど、(自分は)それを次に生かすように持っていく人かな。概念的に「失敗」はないんじゃないかなと思っています。
紗英:一番悩んだ経験とかってあったりしますか?
仕事の中で悩んだことはあんまりないかもしれないです。というより、仕事においてはいつでも悩みはある!(笑)
(しいていえば)小学校の教員をやめる時は、悩んだかなぁ。本当は3年くらいやりたかったけれど、結局1年くらいだけになってしまって。だけどそれも今思い返してみたら、ふーんっていう感じにしか思っていません。(笑)
このまま、やりたい仕事を素敵な人と
Q5. 今の人生で、満足していること、このままキープしていきたいと思うことは何ですか?また、今の人生やキャリアについて不満に思ってることもあれば教えてください。
今の人生に概ね満足しているんですよね。なんでかっていうと、働きたいと思った働き方を今実現できているし、「やりたい、これだ」と思った仕事しかしていない。それから、一緒に仕事をしている人に恵まれている、こういう人たちと信頼関係をキープしながら、面白いこと、楽しいことをやっていきたいなぁと思っています。
紗英:ある段階からやりたい仕事を選べるようになった感じでしょうか?それとも、初めからやりたいことのみを選んでいたのでしょうか?
ううん、全然そんなことないですよ。自分なりのPDCA回して行った結果かな。けれど今でも、やってみて違うなって思うことはあるよ。違うなってなれば、やっぱり誠意を持って伝えることが大切なのかな。次につながる学びがあれば、向いていないことがわかることも大切だなと思っています。
後悔していることは、中学の時に、体育会系の部活にガッツリ入っていればなぁということかな!(笑) もっとチームプレーをできていればなと。人を巻き込んでやれる力をもっと培えていければなと。それから、今この体にあまりにも運動をするっていう習慣がないから!本当にやっておけばよかったっていう後悔!(笑)
おわりに
Roots and Routes プロジェクトでは、今を生きる社会人の考え方や過去の経験をお聞きして、若者の進路選択のヒントになる記事を作っています。インタビューでは、社会人の方みなさんに共通の質問をお聞きしていますので、他の社会人の方のインタビューも見ることで、新しい気づきがあるかもしれません。他の記事はこちらから
また、みなさんの将来に対するヒントを見つけることができる記事にしていくために、こちらのフォームからフィードバック・特集してほしい人物を募集しています。
コロナ禍で先行きが不透明な世の中だからこそ、読者の皆さんに寄り添った記事にしていきたいと思います。これからコンテンツもお楽しみに!
今回は、ソーシャルエモーショナルラーニングのスペシャリストである下向えりさんにインタビューさせていただきました!HLABのプログラムでもお世話になっているえりさんの素敵なエピソードをたくさん伺えて、すごく充実したインタビューでした。「やらない」選択をしたことで、自分の好きが見つかった、というところが特に印象的で、「やる」理由からではなく「やらない」理由から好きを見つけることもできるのかという気づきをえられました。三日坊主になりやすい僕も、どうして三日坊主になるのか、逆に何をしているときに夢中になるのかと言うところから自分の好きを見つめ直してみようかなと思いました!えりさん、今回は貴重なお時間をいただきありがとうございました!
今回のインタビュアー
谷悠太
慶應義塾大学3年、専攻は医学。
去年からHLABに関わっており、現在大学生メンターの研修の設計を担当している。
HLABのおかげで、公教育にめちゃめちゃ興味が出て、教育に燃えはじめようとしているところです(笑)。
川上紗英
慶應義塾大学3年、専攻は移民/難民の政治学。
HLABでは小布施(長野県)のプログラム室で企画運営を担当。
最近は夜近所の友達とランニングすることにハマってます~。
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