スコアは34-14。得点機会は9-7。:12月6日ラグビー早明戦<2>
34-14で明治大学が大差を付けて勝利したラグビー早明戦。特にセットピースにおいて、「準備の『質』」に違いがあったことは明らかだが、もう少し分析したい。
まずはプレビューでも注目ポイントに上げたテリトリーキック。
蹴らなかった早稲田
早稲田が蹴ったのはわずかに3回。前半8分、前半18分、後半0分。
8分の時はプレーエリアを前進させることができたし、18分はキックディフェンス4枚の間を縫って低い弾道で奥に蹴ったもの。ちょっと長すぎてドロップアウトになってしまったが惜しいキックだった。
一方、後半0分の時は明治のウイング石田に走られて大きくゲインされ、あわやトライのピンチを迎えている。
そのため、成功率は33%。ここは、成功率と言うより、わずか3回しか蹴っていないことに注目したい。早慶戦では14本蹴っているわけだから、これは偶然ではなく、ゲームプランとして意図されたものだろう。
ただし、慶明戦において慶応が非常に効果的にテリトリーキックを使っていたことを考えると、どのようなゲームプランでキックを使わなかったのかはよくわからない。キックは大学選手権に使うということだろうか?
工夫もあったがむしろボールを渡していた明治
一方、帝京戦でわずか1本しか蹴らなかった明治は、この試合では8回蹴っている。
ただし、うちプレーエリアを押し戻されたのが6回、リターンキックが1回(タッチ)で、プレーエリア前進(早稲田のノックオン)はわずかに1回、つまり成功率12.5%だった。
明治はキックを工夫していて、早稲田のキックディフェンスが2人の時に、その間に落とすように低い弾道のキックを蹴っていた。
ただし、チェイサーのポジショニングが悪く、でこぼこした形だったために早稲田のフルバック河瀬に走るスペースを与え、押し戻されていた。
という形で、むしろキックは早稲田にチャンスを与えていたといえる。
22mラインの向こう側への進入回数9回:明治
次に22mラインの向こう側への進入の回数を数えてみよう。
明治の進入回数は9回になる。進入の方法は、ペナルティからのタッチキックが2回、スクラムなどからシンプルに縦を突いてきて進入したのが3回、左右に展開しながらゲインを稼いで進入したのが4回になる。
スクラムでペナルティを取っていたのでもっとペナルティで進入していたのではないかと思ったが、そうでもなかった。早稲田陣でのスクラムではペナルティを取ることよりも押し込んでボールを出すことを重視していたようだ。そして明治は、この9回のうち6回得点(トライ5、ペナルティゴール1)している。
実は早稲田も7回
これだけ点差が開いたので、早稲田はほとんど22mラインの内側には入れなかったのではないかと思いきや、早稲田は7回進入している(参考までに、慶明戦での明治は3回だ(うち2回はトライ))。なので、スコアほどに一方的な展開ではなかったことになる。
進入方法は、ペナルティからのラインアウトが3回。左右に展開しながらゲインを稼いで進入したのが4回になる。
繰り返すが、問題はこのラインアウト。すべてボール確保に失敗している。
そのため、22mラインに7回進入したといっても、有効な攻撃ができたのは実際には4回だったことになる。
このうち得点できたのは2回にとどまるが、その最大の要因はラインアウトだ。きちんとボールが確保できたら、あと1、2本はトライが取れていたであろうから、ずっと接戦になっていたはずだ(接戦だったら明治の最後のトライはなかっただろう)。
そう考えるとやはり、点差ほどの力の差はない、と考えるべきであるように思われる。
実はもう一つ興味深い点がある。早稲田が取った2本のトライは、両方ともスクラムハーフ小西のパスダミーから縦を突いたものであることだ。
この点、意外に重要なポイントであるように思われる。なぜなら、この試合全体を通じて、早稲田の横方向の攻撃に対し、明治が上手くスライドして対処していたからだ。そのため、小西が縦を突いたときには対応できなかった。次回はこの、縦と横の関係について分析する。
(続く)