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プレー解剖 クボタスピアーズ、全部入りのアタック(22分):東芝ブレイブルーパス対クボタスピアーズマッチレビュー<3>
2月27日の東芝ブレイブルーパス対クボタスピアーズ戦マッチレビュー第3回。今回で最後です。
今日は、第1節に続き、この試合の「注目の1シーン」。
この試合の中からは、クボタの22分の攻撃を選びました。
まずはラインアウトから。フォーリーと立川のシザース
クボタが攻め込んだもののラックでターンオーバーされ、東芝が(クボタから見て)左サイドをカウンターで攻め込むもののタッチに押し出して得たラインアウトから。
このラインアウトは素早くボールを投入し、まず右に展開します。JSPORTSが東芝のカウンターのリプレイを流している間にプレーが再開したのでラインアウトがどのような状態だったかは確認できませんが、まずスタンドオフのバーナード・フォーリーにボールが渡ります(1)。
(2)フォーリーは外側に向けて斜めにラン。フォーリーのランニングコースとクロスするように12番立川が入ってきます(シザース)。
(3)ちょうどクロスする瞬間にフォーリーは立川にパス。立川はそのまま内側に走ってタックルを引きつけて内に走り込んできた11番のタウモハパイホネティにごく短いキックパス。ディフェンスとの間合いが近い中でのこの精度の高いキックパス、凄いものです。
(4)タウモハパイホネティは東芝ディフェンスの裏に出て前進しますが、結局捕まってラックが形成されます。
マルコム・マークスの左エッジへの移動
こうして形成されたラックから9シェイプにパスアウトします(1)。この時はスクラムハーフがラックに巻き込まれていたので、パスを出したのは4番のブルブリングでした。注目すべきは、この時点で既にマルコム・マークスが左タッチライン際(左エッジ)に立っていることです(2)。
この瞬間のクボタのポジショニングを確認してみましょう。スタンドオフのフォーリーはラックの左斜め後ろに立っています。この時はそれほど離れていません。
そしてフォーリーの左側、フロントドアに当たる位置には6番が立っています。左斜め後ろ、バックドアに当たる位置には12番の立川から始まるバックス3人のライン。右サイドにもバックスが2人。
マルコム・マークスは引き続き左エッジに立っています。
立川の飛ばしパス
4番ブルブリングが一度サイドを突いてラックを再び形成(1)。そこから素早いパスアウトでボールがフォーリーに渡ります(2)。この瞬間、フォーリーには3つのプレー選択肢があります。1つは真横の6番にパスしてもう一度クラッシュさせること。2つめはバックドアの立川へのパス。3つめはディフェンスの様子を見ながら背後にショートパントを蹴ることです(3)。
ミスマッチを突いたマルコム・マークス
ここでのフォーリーのプレー選択は立川へのパス(2)。この時、6番がデコイになってディフェンスを引きつけているため、立川へのプレッシャーはやや甘くなっています。
そして立川は得意の飛ばしパスで11番のタウモハパイホネティにボールを渡します(3)。
タウモハパイホネティは無理に突進せず、ディフェンスを引きつけて左のマルコム・マークスにパス(4)。
マルコム・マークスのトイメンの東芝ディフェンスはバックスですから、典型的なミスマッチ。それを利用してマルコム・マークスはディフェンスを吹き飛ばして突進、大きくゲインします(5)。
ここまでの流れは準備された攻撃オプションでしょう。
ただしマルコム・マークスはインゴールまではたどり着けず、ラックを形成(1)。そこからクボタは右方向に2回、9シェイプをクラッシュさせてラックを作り、ポイントをグラウンド中央に移動させます(2)。
10シェイプによる攻撃と東芝のディフェンス
この時点でのポジションの確認です。この時、フォーリーは順目の右方向に立っています。この時は、距離を取った広い立ち位置です。その右に10シェイプに当たるバックスが3枚。ただしフォーリーのすぐ右隣にフォワードが1枚立っていました。左サイドにはバックスが2枚です。
スクラムハーフは10番フォーリーにパスアウト。フォーリーの右隣に立っていたフォワードが内側に向けて走り、ディフェンスを引きつけようとします(1)。
その上でフォーリーはなんと2人を飛ばしてウイングに飛ばしパス(2)。外のスペースからの突破を図ります。
しかし東芝は外への展開を読んでいたようで、内側に走ったデコイのフォワードを無視して外側にスライドし、ウイングの突破を止めました。
クボタはこれから左に展開、フロントドアに立っていたマルコム・マークスがゲインしてラック。そこからの攻撃で立川がトライを取ります。
まとめ
この一連の攻撃は、12番の位置に立つ立川のゲームメイク、マークスでミスマッチを作ってのゲイン、フォーリーと10シェイプを広めに立たせての攻撃、とこの日のクボタの攻撃の特徴がすべて盛り込まれていました。あまり派手ではありませんが、意図した形で東芝ディフェンスを崩しており、非常にレベルの高い攻撃です。
12シェイプをバックドアに使っての攻撃はこの後も何回か見られました。フォーリー自身のゲームメイク能力の高さもさることながら、立川との組み合わせが絶妙で、見ていて惚れ惚れするような攻撃でした。今年の好調も頷けます。第3節を含め、3連勝したクボタですが、どこまで連勝を伸ばせるでしょうか。第4節はホンダHEAT戦を見に行く予定です。