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明治の充実。早稲田の可能性。:ラグビー早明戦レビュー<3>

12月6日ラグビー早明戦。早稲田の取った2本のトライは、いずれも、スクラムハーフ小西が横にパスすると見せて縦に突進したことから取ったトライだ。

この日の早稲田の攻撃の「クセ」

 このプレイ、より正確に言えば明治が同じパターンの攻撃に二度対応できなかったことに、この日の早稲田の攻撃の全般的な「クセ」が現れている。

 早稲田の攻撃の中心はダブルライン攻撃。ダブルライン攻撃を復習すると、前の「フロントドア」と後ろの「バックドア」の二列に並んで、どちらにパスが行くのかわからない状態を作り、ディフェンスラインの誰が誰にタックルに行くのか混乱させることだ。

 そして基本的には、フロントドアをおとりにしてバックドアから突破する。もちろんおとりだとばれていてはおとりにならないので、フロントドアからクラッシュすることもあるが。


 ただ、この日の早稲田は、フロントドアとバックドアの双方が外側に流れながら走ることが多かった。

 そうなると、ディフェンスラインも外側にスライドしていく。結果として、バックドアにパスが回ったとしても、ディフェンスを外にスライドさせていくことによって、最終的にタッチラインに早稲田を追い込むことができていた。

 また、もう一つの攻撃パターンは、フロントドアにパスするのではなく、スタンドオフの吉村が、タックルの届かないセーフティーゾーンを横ずれしながら走り、ダブルラインないしトリプルラインと組み合わせて、タックルの的を絞らせないようにしてパスすることだった。

 吉村のスペース感覚を考えれば、有効な攻撃法に思える。しかし、これも、吉村の横ずれに合わせてディフェンスラインが横ずれしていくことで、明治は外のスペースを埋めることができていた。

 この攻撃の場合、突破力のある河瀬が吉村とクロスするように(シザース)全速力で入ってくれば、横ずれしてくるディフェンスとすれ違いざまに突破できる可能性ができる。その可能性ができただけで明治のディフェンスラインはスライドできなくなる。

 こういったオプションを使わなかったことで、明治としては守りやすい攻撃になってしまっていた。

冒頭の小西のトライは、明治のディフェンスの横へのスライドの逆を突いたことが大きい。トライ二本ともそのパターンだったことが、この日の早稲田の攻撃パターン全体の「クセ」と明治のディフェンスの「慣れ」を表している。

やはり明治は「前へ」

 一方明治のフロントドアは、縦にまっすぐ(「前へ」ですね)走る。そのため、ディフェンスラインがスライドできない。そのため、外側にスペースができて、バックスの走力で勝負することができていた。


 なお、明治のフロントドアはまっすぐ走るので、ボールを持っていないのにディフェンスラインと当たってしまうことがあり、オブストラクションを取られるリスクがある。

 ただし、日本のレフェリーはオブストラクションに甘い(ワールドカップではかなり厳しく取られてましたね)。例えば後半11分の明治のトライは、まっすぐ突っ込んできたフロントドアと衝突して13番の動きが遅れた分、外側にスペースができたために取れたトライだ。ただ、こういったオブストラクションはTMOがなければなかなか判定できないのも確か。

ミスマッチを上手く作った明治

 あと、明治は外側のスペース(エッジ)で、上手くミスマッチを作っていた。それが最も上手くできていたのが前半18分。

 この時は吉村のキックがわずかに長すぎてインゴールに入ってしまったドロップアウトからのフリーキックが起点。

まずチョン蹴りから、5番が右側を突いてラックを作る。

 そこから左展開。実は左エッジには4番、8番、7番、14番がポジショニングしている。フォワードは3人。正面にいる早稲田は6番、10番、11番、14番でフォワードは1人。いわゆる「ミスマッチ」という状況。

 これを上手く使って明治は一番端にいた4番にボールを渡す。4番はもちろんロック。フォワードの中でも大きい。早稲田14番、10番のタックルを跳ね飛ばして前進。

 早稲田の6番が戻ってきたので止められたが内に返してトップスピードの8番箸本に。箸本がタックルを受けたら7番がボールを受けてゲイン。最後はバックスの14番が仕上げた。

 このように、早稲田のバックスに対して走れるフォワードをぶつけて見事に突破したトライだ。これはドロップアウト後のフリーキックからの攻撃パターンとして準備されていたものだろう。

一ヶ月後に向けて

 こうやって攻撃パターンを見ても、明治が非常に良く準備をしてきて、それが上手く当たったことがよくわかる。一方、早稲田には改善の余地がかなりある。このあたりを一ヶ月かけてブラッシュアップして欲しい。そして一ヶ月後、大学最高峰の試合を見せて欲しい。もちろん、それまで勝ち続けなければいけないのだが。

(終わり)

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