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宿敵対決2020:ラグビー早明戦プレビュー

 12月の第1日曜はラグビー早明戦と決まっている。

 発売開始の時には取れなかったのだが、コンビニ決済未払い分がリリースされるタイミングでなんとか購入できた。ということで早慶戦に続き、自分の頭の整理を兼ねてプレビュー。

 まずはお互いの直近の試合を振り返ってみる。早慶戦は一週間にわたりレビューを書いてきたので、明治対帝京の簡単なレビュー。

明治対帝京 シンプルレビュー

この試合、明治は慶明戦とは違う戦い方をしてきた。

 慶明戦ではテリトリーキックを結構蹴ってきた(16本)のに、この試合ではわずか一本。それはインゴールまで入ってドロップアウトになっている(フリーキックからのリスタートでトライを取っているのだが)。

 この少なさは意図されたものだろう。慶明戦でのテリトリー獲得率わずか7%という点を踏まえ、キックをするならタッチに出す、ということで割り切り、テリトリーキックを蹴らないことにしたと推測される。帝京もテリトリーキックをほとんど蹴ってこなかったため、慶明戦とは打って変わった地上戦となった。

 タックルはお互いに詰めのタックル。明治は帝京のファーストレシーバーを狙い、帝京は明治が広く展開するときに13番あたりを狙って思い切って詰めてタックルしてきた。そのため明治はフィールドの端から端まで展開する、慶明戦で何度も見られたパターンの攻撃ができなかった。

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 ただ、帝京のタックラーがバラバラに突っ込んできたので、明治としては躱しやすく、そこで裏に出られてゲイン、ないしトライというパターンが何回か見られた。

スライド5

 お互い詰めのタックルを狙っているので、ラック、モール時のディフェンスラインの立ち位置はオフサイドギリギリ。いくつかレフェリーが見逃したラインオフサイドがあったように感じられた。

ラックは「立ったまま」するもの

 それとどうしても気になるのが、ラックの時に明治のFWがすぐに膝を付いてしまうこと。帝京から何回かアピールがあり、後半の終盤にはレフェリーから明治に対して注意があったが、ルールは明確なので、はっきりと指導してほしい。

 該当のルールにはこう記述されている。

第15条  ラック
 到着したプレーヤーは、立っていなければならず、自チームのオフサイドラインの後方から参加しなければならない。
 プレーヤーはラックの間ずっと、立ったままでいようと努めなければならない。

 ワールドラグビーからの通達も、その点は明確だ。

 また、同じくワールドラグビーからのリリースにある動画も見てほしい。これは2015年のラグビーワールドカップのウェールズ対南アフリカ戦だが、サンプル画像を見ると、ウェールズも南アフリカも本当に立ってラックに入っている。ここでは南アフリカが自立していなかったという反則を取られているが、日本の大学ラグビーに比べればはるかに自立している。

 当然膝を付いたら「立ったまま」ではないし、腕を突いて支えても「立ったまま」ではないのだ。

 この点、明治はひどい。

 それでも、バックスがラックに入るときは立っているのだが、特に両ロックと両プロップには全く自立するという意識が感じられない。

自立問題

スライド9

 参考までに、去年のワールドカップの3位決定戦、ニュージーランド対ウェールズ戦でのラックと見比べてほしい。これはモールではない。ボールが地面にある、ラックだ。「立ったまま」とはこういうことだ。

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 この点、明治は本当にひどいが、実際は慶応や早稲田も五十歩百歩ではある。ただ、ちゃんと国際的に通用するプレイヤーを育てる意識があるならば、レフェリーはちゃんと反則を取るべきだ。


 そして本題。早慶戦と明治対帝京を踏まえて私なりの観戦ポイントを整理してみる。

(1) 明治のワイドな展開に早稲田はどう対処するか

 去年もそうだったが、今の明治はセットプレーからワイドに展開し、折り返してフォワード戦を仕掛けてくることが多い。

スライド1

スライド2

スライド3

 早稲田はそれに対してどう対処するか。1つは帝京同様詰めのタックルを仕掛け、ワイドな展開そのものを妨害することだ。しかし、帝京みたいに、バラバラにタックルに行ってしまうと躱されてしまうので、きちんと一直線に並んだままのラッシュアップディフェンスをかけていかなければならない。

スライド6


 もう1つはドリフトディフェンスと呼ばれる守り方で、タックルを我慢しながらボールに合わせてタックラーを横にスライドさせ、逆サイドできちんと止め、ラックに人数をかけて可能ならば奪ってしまうことだ。奪えなくても、ラックの間にフォワードを再配置して、内に折り返してのフォワード戦への手当てをしておく。慶応はおそらくこの種のディフェンスをしていた。

スライド7


 早稲田の場合、伝統的な志向性から言えば前者のディフェンスを選択するように思われる。きちんと「面」として詰めのタックルを仕掛け、展開を阻止し、明治のゲームプラン自体を崩していく。しかし後者の方が確実ではある。どちらを選択するか。早稲田のディフェンスについてはこの点に注目したい。

(2) 早稲田のダブルライン攻撃に明治はどう対処するか

 早稲田の攻撃の主軸はダブルライン攻撃。しかもフロントドアでのクラッシュもいとわない。さらにフェイズを重ねながら突然ダブルラインを仕掛けてくる。

 実は明治もダブルラインを仕掛けることがあるのだが、フロントドアの「おとり」感が見え見えで、帝京はバックドアに迷わずタックルに突っ込んでいた。明治の場合、ちょっとフロントドアが前に出すぎてしまう癖がある。

 一方、早稲田のようにフロントドアとバックドアとを上手く使い分けることができれば、「ここぞ」というときでのバックドアによる攻撃を防ぐのは難しい。それを防ぐ確実な方法は、ラックでファイトしてクリーンなボール出しを妨害することだ。

 そうなると、私の嫌いなラックで寝たままのプレーが多くなることが予測できる。いやだなあ。。。。
 私は早稲田OBだから早稲田寄りの見方をするが、勝敗以上にルールの精神を無視したプレーは好きではない(アントラーズのサッカーもそうですが)。レフェリーがきちんとゲームをコントロールすることを期待したい。

(3) キック戦術は?

 帝京戦では、明治は潔くテリトリーキックを放棄してきた。おそらく早明戦でも同じだろう、一方早稲田は、早慶戦では慶応には劣るが、ある程度は効果的なテリトリーキックを蹴ることができていた。慶明戦で、慶応のテリトリーキックが効果的で、プレーエリアを押し下げることに成功していたことを考えると、早稲田もかなりテリトリーキックを使ってくるだろう。

 この10日間で、早稲田がチェイサーとキックの高さとの連携をどの程度アップグレードすることができているか。それもまた勝敗のポイントになるだろう。


 と、いろいろ御託を述べてきたが、同時に早明戦は理屈じゃない。明日は快晴。終わってすがすがしい気分で帰れる試合を期待したい。


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