断るのが苦手な私が、断り上手になるために、やるときめたこと
断ることが苦手っていうことに、再び気づいた出来事があった。
バリバリ働く50代パートのみかさんからの依頼だった。
ある月曜日の夜に一通のLineが届いた。
「ちょっと、話したいことがあって、少し電話できる時間があれば、教えてください」
一瞬戸惑ったけれども、なんだか緊迫したLineだったので、聞いたほうが良いかもと思い、返信をした。
「子供の塾の送り迎えがあるので、それが終わったらでいいですよ」
すぐに既読になり、みかさんからメッセージが届いた。
「本多さんの都合がよくなった時間にLine電話をお願いします」
正直気が重かった。
実は、子供の送迎があるからって言ったら、じゃあ忙しいから、またでいいですって回答がくるかなーと淡い期待をしたけれど、そういうわけにはいかなかった・・・。
送迎が終わって、自宅に戻って、ちょっと気が重いと思いながら、Line電話をした。
彼女は泣いていた。
びっくりした。
50分ぐらい話を聞いただろうか・・・。
詳細はかけないけれど、どうやら、メンタル不調に陥っているとのことだった。
些細なことが気になるし、感情的になってしまうこと、頭では過敏になっていることはわかっていても、体が反応してしまってどうしようもないことをずっと話をしていた。
彼女の気持ちを聞いて、思わず、彼女がつらいと思っていることが、少しでも楽になれば、すこしでも解決すればと思って、ある提案をした。
その時は、正直な思いで提案したのだが…。
翌日、みかさんは、やはり元気はなかった。メンタル不調の人がいきなり元気になるはずもないので、無理せずにねーって声をかけた。
「昨日話を聞いてもらったので、少し楽になった。ありがとう。ぼちぼち一週間がんばります」
と、言うものの、どこかぼんやりした雰囲気だった。
その日は何事もなく過ぎていった。
それから2日たった日の、早朝、なんと6時40分に、ものすごい長い長いLineが入った。
気づいたのは、私が通勤で電車に乗っている時だった。
あまりの長さに、Lineのメッセージが折りたたまれていた。
「朝から、かんべんしてよー」というのが正直な気持ちだったし、今日はみかさん、仕事休みっていってたよねー。なんなのー!?
ちょっと恐怖すら覚えた。
ただ、彼女のメンタル不調を考えると、寝れずに悶々としていて、言いたいことをずっと我慢して、ようやく朝になったからLineしたのかなーと思ったら、対応するしかなかった。
恐る恐る、エイヤツと「すべて見る」をクリックした。
そこには、いかに自分が苦しいかがびっしり書かれていた。
このつらさを分かってー!だからこうしてほしい!!っていう悲痛な叫びに私には感じた。
私も、まだ新入社員だし、課長との関係性ってまだ作れていない状態で、あれしてほしい、これしてほしいといわれることはストレスだったけれど、あまりにも切羽詰まった感じがあったので、頑張って動くことにした。
そして、彼女の要求を聞くことにして、なんとか叶えたはずだった。
だけど、叶えているうちに、私自身が疲弊していたのだろう。
要求してくる彼女に対して、ちょっとイライラし始めていた。
どうして私が、ここまで彼女のために動かないといけないのか?
私だって、まだこの部署に来て間もない。なんなら、みかさんの方がこの部署に長くいるし、今の課長とも前に仕事を一緒にしていたらしいから関係性はできているはず!
正社員になったからといって、ここまでパートさんの話を聞いたり要求を叶えたりしなければならないのか・・・。
彼女は、自分の要求を言ってくるだけで、私がお願いすることや、こうしたら?っていう話は一切聞かない。
みかさん自身がやりたいことと、私の意見が一致しなければ、私をスルーして、そのまま自分のやりたいことを課長に提案したりするじゃないか?
なんだか、都合の良いときだけ使われている・・・そんな気になってきたのだ。
彼女を尊重したい気持ちはある。
私だって長い間、みかさんと同じパートの立場だったし、常に何かしら成果を出しておかないと次は更新がないかもしれないという不安はあったし、上司に自分の存在をPRしたいという気持もあった。だから、彼女のやりたいことを尊重して、彼女の存在を上司にPRするのに協力したい気持ちはある。
でも、実際は、彼女を尊重することが、私自身を犠牲にしてない?
課長に言われた言葉が、頭をよぎる。
「パートと正社員の大きな違いは、使われるか、使うかのちがい。正社員は使う立場になるということだ」
このままだと、まるで私がみかさんに使われているんじゃない?
課長から見ると、私はみかさんの言いなりになっているようにみえるかもしれないし、実際、なんだかそんな気分になっていた。
「なぜ、私が彼女をここまで優先してやらなければならないのか?」
「彼女が苦しいとおもう仕事を、ここまで肩代わりする必要ある?」
「だってそれは、彼女の仕事でしょう?」
「業務外のプライベートな時間まで彼女に使って、励ましたり話を聞かなければならない?私だって自分を大事にする時間は必要なのに!」
「彼女は私の頼み事はほぼ断るのに、彼女の要求ばかり聞く必要ある?」
なんだか、怒りがふつふつとわいてきてしまい、とても彼女に優しい言葉をかけられる状態では、なくなってしまった。
話しかけられても、できるだけ感情は抑えたが、彼女の目を見ることができず、そっけない返答になってしまった。
案の定、彼女が私を気遣うような言葉をかけてきたけど、もう気持ちはとめられなかった。ただ、淡々とした返答をするだけだった。
昼休みの交代の時、彼女に少し声をかけた。
できるだけ冷静に、したつもりだった。
彼女の要求通り、仕事の肩代わりをやってみた感想と、今後もっとこうしたらいいんじゃないかな?またいろいろ考えましょう。とだけ伝えた。
みかさんの配慮もするけれど、私自身に負荷がかからないようにするために、そう伝えた。
そうすると、彼女からは、思ってもみない言葉が出てきた。
「私のつらさを分かってほしかった」というのだ。
「あ、そうですか」
とだけ、私は答えた。
それが精いっぱいだった。
彼女は、ひょっとして、この仕事大変ねー。本当にここでやってるってことがどれだけ大変かわかったわー。という言葉を期待していたのかもしれない。
でも、そんなことは、もう無理だった。
あなたがやれないことなら、私がやってやる!正社員の仕事ではないことだけど、やればいいんでしょ!っと感情的になっていたからだ。
そんなモヤモヤした気分になりながら、昼ご飯を食べに行った。
気分転換に、前から行きたかったお店に入った。
そして、おいしくランチを食べて、「やっぱりおいしいものを食べるって大事ー!」と少し心が晴れてきていた時、Lineが鳴った。
みると、みかさんからだった。
「すみません。感情的になってしまいました。ありがとうございます」
と文字だけのLineが届いた。
「重たーい!!!」と心の中で叫んだ。
私のイライラした態度が伝わってしまったのかもしれないし、彼女自身が発した言葉を気にしたのかもしれない。なんだかわからないけれど、私はそのLineを見たときに、ズーンと気分が落ちてしまった。
もう勘弁して。
そう思わずつぶやいてしまった。
彼女は、非常に過敏になっている。これはメンタル不調になっている人の特徴のようなんだけれども、こちらも最新の注意をしないといけないのか!と思うと、さらにしんどくなっていった。
もう無理だと思ったので、深堀せず。すっとぼけたLineで返事をした。
それ以降、彼女とはLineのやり取りはしていない。
こちらからは、Lineはしないと決めた。
その代わり、仕事中に声をかけることにした。できる限りの配慮をするけれども、プライベートでは話を聞かないときめた。
それが伝わったのか、少し元気になったのかはわからないけれど、話を聞いてほしいというLineも、普通のLineも、1週間ほど来ていない。
彼女が、私には、この苦しさはわかってもらえないと感じたのかもしれない。
これでよかったのか?
友人に話すと、よかったんじゃない?もうそこまで背負う必要もないし、プライベートにまで持ち込むなんて考えられない!って言われた。
そういうものかもしれない。
でも、あの時Lineで話したいことがあるといわれたときに、断っていたら、あんなに長いLineが来ることもなかったのかもしれないし、私ももう少しみかさんに優しくいられたのかもしれない。
でも、本当にあの時断れた?
いや、たぶん無理だ。
でも次にまた話を聞いてほしいLineがきたら?
もう、聞くのは無理だ。
相手を傷つけずに、断る方法をみつけなきゃならないなとつくづく思った。
じつは、この断れないくて、しんどくなるっていうのは、20年以上前からずっと悩んできたこと。
最近読んだ本で、なるほどと思ったことを引用しておく。
「上手に断れる人」をイメージして、実際に断ってみてください。
角が立たないように、低姿勢で上手に断ってみる。そんなことを繰り返すうちに心は確実に変わっていきます。実際、そうやって行動を積み重ねていくしか、心を変えることはできませんから。
そして、大事なことは、実際に行動をしたあと「よかったじゃない!」って自分に言い聞かせること。たとえどんな結果がでたとしても、ポジティブな方向にとらえておくこと。
というわけで、断り上手になるため、まずは低姿勢で断ってみる、そして断った後は、「よかったじゃない!」って言ってみます!
みかさんに、プライベートで話を聞いてほしいと言われたら、実践してみます。
上手に断るとしたら、そうだなー、申し訳ないんだけど、ちょっと時間がないー。ごめんなさい。だな。それでも引き下がらなかったら、仕事中なら大丈夫って言ってみようと思う。