君はイノマーを知っているか
いつのコトだっただろうか・・・。
ある日、TVで「家、ついて行ってイイですか?」を観た。
けっこう好きな番組だ。
まぁ正直に言うと、何気にTVをつけたらちょうど始まって、そのまま観ただけ。
もしかしたら、スペシャル版だったかもしれない。
たまたま、その時間、そのチャンネル、その番組。
この偶然という名の不思議な降臨。
あんまりTVはつけないし、この番組も数えるほどしか観たことがないのだが・・・。
私はその後、とんでもないモノを観ることとなる。
ちなみにこの番組は、帰宅する人の自宅まで行ってインタビューをし、他人様の人生をのぞき見する番組だ。
編集の妙もあるが、どんな人にも必ずドラマがあり、皆それぞれが主人公というドキュメンタリー。
で、最後に流れる LET IT BE (ありのまま・なすがまま) が心にしみるというパターンである。 笑
その回は、愛する人の1周忌だったという女性の話。
いわゆる内縁の妻だという女性 、ヒロさん。
実は1年前、葬儀の帰りに当番組の取材を受けていて、それを踏まえての番組らしい。
(私は前回の放送を観ていないが)
そして亡くなったパートナーというのは、
性春パンクロックバンド「オナニーマシーン」
のイノマーこと、猪股昌也 氏 だった。
「ガラスの中年」
「童貞のカリスマ」
なんて呼ばれていた人。
かつては、オリコン系の雑誌で編集長をやったり、問題起こして更迭されたり、を繰り返し。
組織の中では、浮いてしまうタイプの人。
ちょっとシンパシーを感じる。 笑
たしか、オリコン創業者の小池聰行 氏 の肝いりで、何度も復帰出来たとか。
バンドに関しても、コアなファンは大勢いるだろうが、間違っても大衆受けする音楽ではないし、TVの音楽番組に出てくることもない。
私の印象としても、「そうか、亡くなったのか」って程度の感覚だったのだが・・・。
なんとそのイノマーを、同局 (テレビ東京) の当番組とは別のディレクターが、長期にわたり密着取材していた。
放送予定もないのに、恩人であるイノマーの闘病記録を撮影していたのだ。
やがて番組は、そちらの密着映像に切り替わっていく。
一気に「人間イノマー」が、目の前に現れる。
泣き、笑い、もがく。
力の限り、やりたいコトに向かって突き進む。
ひとりで観ていたため、涙が止まらない。
創作を遥かに超えた、リアルがそこに映し出されていく。
元をたどれば、イノマーの「口腔底がんステージ4」
余命3年というところからの物語である。
イノマーはヒロさんと一緒に、その告知を聞いたという。
入退院の日々、抗がん治療。
舌の摘出手術も、ひかえている。
次々と友人たちが病室を訪れる。
江頭2:50 、峯田 和伸 (銀杏BOYZ) 、山口 隆 (サンボマスター) 、綾小路 翔 (氣志團) 等々。
皆、イノマーには世話になったと語る。
これは、手術前ライブの告知
手術は無事成功し、次は「オナニーマシーン」結成20周年の記念イベントに向けての話となる。
喫茶店での打ち合わせ、舌がないイノマーは流れ出る唾液をティッシュで拭き取りながら、聞き取りづらい声で熱く語る。
しかし、記念ライブを目前にしてがんが再発。
もはや、なす術も無い状態。
そして、まさに命をかけたラストステージが始まるのだ。
喉に隆起している巨大な腫瘍を見せながら、
「もう、限界だよ」
「笑ってよ」
と、つぶやく。
痩せ細り満身創痍の身体。
片眼は腫れあがり眼帯をしてる。
歩くことも出来ず車椅子でステージ入り。
だが、観客を前にしてギターを持つと、パンクロッカー・イノマーのスイッチが入る。
「まだ生きてます」
「舌ないけど歌います」
立ち上がり、声にならない声で歌い出す。
あの身体のどこに、そんな力が残っていたのか・・・。
服を脱ぎ捨て、紙おむつ1枚となって絶叫する。
(ま、それは平常運転らしいのだが・・・笑)
魂が揺さぶられる映像が続く。
周りに家族がいないのをいいことに、コチラの涙は止まらない。 泣
ライブ帰りのクルマのなかで、イノマーは今までの人生を振り返り、
「楽しかった!!」
「楽しすぎるのも良くないなぁ」 と・・・。
命に対する未練が、ふとこぼれる。
そして走り切った男は、とうとう昏睡状態となってしまう。
が、またしても奇跡が起きる。
盟友 峯田が見舞いに訪れ耳元でささやく。
意識もなく昏睡状態のはずの彼が、身をよじり峯田に抱きついたのだ。
生と死のはざまで、闘っている。
やがてまた、昏睡状態へ・・・。
カメラは、その最期の瞬間まで捉えている。
身内でもない限り、そんな場面に遭遇するコトなど、まず無い。
少しずつ、少しずつ、命の炎は小さくなり・・・。
すぅ〜、と静かに消えた。
12月19日 2時50分 御臨終
その時計を見たヒロさんが
「2:50 (江頭) だって」
「最後の最後まで笑わせていったね、最高だわ」
と・・・泣き笑いするのであった。
この映像を撮り編集し、地上波で放映したテレビ東京のお二人に、感謝するとともに拍手を送りたい。
放送禁止用語が映り、それを叫ぶライブ映像。
さらに言えば、人間が死ぬ瞬間まで晒しているのだ。
どれほどの想いと覚悟を持って、決断したのだろう。
私は未だかって、こんなにパワーのある、
そしてパワーをくれるTV放送を観たコトがない。
** 以下 写真は「テレ東プラス+」 様より お借りしました **
オナニーマシーン 「恋のABC」
中学の頃、そんな言い方、流行ったわ。
過激な言葉とストレートな表現だが、その内容は案外ウブい。
イヤホン必須・・・かな!? 笑
私は今後も、オナマシの曲を聴くコトは無いと思う。 (単なる趣味嗜好の違いだが)
が、イノマーという人間がいたコト、その生き様、死に様は絶対に忘れないだろう。
自らの命をきっちり使い切った、カッコ良すぎるロックな人生!!
「捨てる命があるんなら、オイラに差し出せよ」
イノマーの叫びが、聞こえてきそうだ。
今日、12月19日は彼の命日だそうで、ご冥福をお祈りしつつ、記事にしてみました、
そして今日、私はこれから、社内健康診断に臨むのであった!! 笑
高血糖、高血圧、不整脈の3点セットが友達だよ・・・トホホ。
では、では、また次回。 ありがとうございました!!