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占い師から歯並びをキレイにした方が良いと言われて歯科矯正を決意したら大変だった話し ep7

『火曜サスペンス劇場~突貫工事~』

いよいよ、抜歯の日がやって来た。
事前に受けた検査によると、私の場合、親知らずと神経の位置が近いらしく、抜歯の影響で若干の痺れが残るかもしれないとの事。
痺れには2種類あって、言葉がスムーズにでなくなる痺れと、顎の周囲の感覚的な痺れがあるとかなんとか・・・。出るとしたら感覚的な痺れらしい。で、抜歯してみないと分からないらしい。
なんや、そのデッドオアアライブみたいな状況は!!!!と、思いつつも同意書にサインしてしまっていた。

「こちらにどうぞ~!」
待合室で、死んだ魚のような気持ちで待っているといつもとは違う診察室に通される。ユニットが1台に、手術室にあるようなライト。人体実験でも始まりそうだ。

お母さん、先立つ不孝をお許しください。

心の中で、手を合わせてユニットに座る。衛生士さんが周りで準備をしていると若い先生が入って来た。
ラブリンでもマリオでもない!知的で爽やかそうな先生だ。
「よろしくお願いしますね~緊張してるかな?」
優しい笑顔だが、信用しないんだからッッッ!!!!
人見知りを炸裂させたヲタクは、警戒しながら無言で頷いた。
「大丈夫。ちょっと切って、抜いたら終わりますからね。まずは、麻酔しましょうね~」
ユニットが倒されて、光る注射針が見える。なんで、悪いことしてないのに注射なんて・・・(涙)。歯肉に刺さる針の感覚は、腕に刺す注射針よりも独特で痛みはなくても苦手だった。
この世から、歯医者と注射がなくなればいいのに・・・。

「それじゃあ、痛かったら手上げて下さい」
そんな、チープなセリフ聞き飽きた。手を上げても止めてはくれないだろう。
顔に、口元が開いた布を被せられて視界は真っ暗。音しか聞こえない。
恐怖で震えながら口を開ける。
「まずは、上から抜きますね~」
恐らくペンチの様なもので歯を掴まれた。

ぐいぐい
ぐいぐい
ぐいぐい
ぽん!

「はい、抜けましたよ」
えぇ~!?全然痛くないんやが?!この先生めっちゃ上手じゃない!?
上の親知らずと場所は忘れたが左側のもう一本が数秒で抜かれる。
なんだ、このテクニックは・・・!まさか、神なのでは?!
ヲタクは、すぐに心を許す。
そして、残りも余裕やろーなんて思ってた自分がバカだった。
「じゃあ、下はまず切開からしますね~」
親知らずが顔を出していないので、まずは歯肉を切らねばならないらしい。
そして、再びペンチで掴まれる親知らず。表に出て来てすぐ抜かれるなんて、お主も可哀想に。なんて、心の中でほくそ笑んでいたら、急に下顎が押さえつけられる。
「!?」
「ちょーっと、頑張ってねぇ」
何を?!何を頑張れって言うのさ!?
上の歯とは違い、下の親知らずからは絶対抜けないぞ!という信念を感じる。それを、なんか引き抜こうとする歯科医。
「うーん、抜けないねぇ」
一瞬、ペンチが外れる。その直後、頭蓋骨に響き渡る金属音と振動。
カーン
カーン
カーン
ガリガリガリガリ
ノミと金づちもどきで歯を叩かれ、ドリルで削られ。口の中で始まる突貫工事。頭の中は、恐怖で一杯だった。
「はーい、もう少しですよー!頑張ってー!」
再びペンチで引っ張られる。親知らずの周りの歯肉が剥がれるメリメリとした音に、もう意識が飛びそうだった。
「はい!ぬけました~!」
上の歯とは違って、あのポン!という爽快感はなく、終わったときにはぐったりとしていた。そして、無意識で身体に力が入っていたのだろう大量の汗をかき、手足と背中とお尻が痺れていた。
「これが、抜いた歯です」
トレーに乗せられた歯は、きれいな歯もあれば無残に砕け散った歯もあり、まるで私の心情のようだった。
「頑張りましたね~!次は、2週間後に反対側ですね!」
爽やかな歯医者は、満足気に去って行った。

次回、『火曜サスペンス劇場~血だらけの海~』

『補足』

実際は、顔に布がかけられていたので、突貫工事につかわれていた器具はわかりませんが、とりあえず工事現場のような音がしたのは確かです(笑)。
親知らずを抜歯される方、ハンカチを持ってた方がおススメです。


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