☆4.高所恐怖症がスカイダイビングをした話。
おはようございます。
先週末に一人芝居イベントに参加をしてきました。劇団『千の朝日』の旗揚げ公演ともなる一人芝居。初めて外部の演劇イベントに参加をするので、どんなことになるのかすごく楽しみでしたし、有料であるにも関わらず知り合いが何人か「行く」と言ってくれて書きながら涙が込み上げてくる水瓶座です。一人芝居の感想は別記事で。
江戸川沿いに住むようになって、「河原で練習する」ことができるようになったことがここにきてものすごく効いています。私の人生になかった景色だったので、こんなにあっさりと実現するものかと豆鉄砲を食った気分です。河原を下駄で歩いている人を見かけたら僕と握手。手錠はやめてください。
話がそれました。
定期更新を宣言して2度目の更新となります今回は、タイトル通り。
「高所恐怖症がスカイダイビングをした話」
について語りたいと思います。
まだコロナの影も形もなかった2018年、飛行機が嫌で旅行行くのにフェリーを使ったり、何ならモノレールですら嫌だった私が、ある日突然「飛んでみたい」と思ったところから始まりました。
当時は心を病んでいたわけではなく、いや心を乱すことは多くあったものの、むしろ人生で初めての彼女ができて一番心穏やかだっただろう時期。私は恋愛経験はほとんどなくて、当時ネットで流行っていた悪口で言うところの「"魔法使い"にはなったけど、"平成ジャンプ"は回避した」といったところです。まあこの2年半後にプロポーズを振られることになるんですが、それはまたの機会に語ります。
なぜスカイダイビングを飛んだのか?
正直なところ、そんなドラマチックな展開はないんですよ。やったことはたったひとつで、「『飛びたい』と思った自分に気づいた瞬間に、即スカイダイビングを予約した」というだけのこと。スカイダイビングって当時で4〜5万円くらいする結構ハードルの高いアクティビティなんですよ。当時年収300万円台だった私に5万円の遊びはなかなかできるものではありません。
だから思いついた瞬間に予約して、逃げられないようにしたんです。飛ばざるを得ない状況に自分で追い込んだだけ。ちょうど体育の日が近かったので、「体育の日に空を飛ぼう」と言う謎の言い訳も加わって、即座に予約しました。このことは飛ぶまで誰にも話しませんでした。
別に誰かが飛んできた話を聞いたわけでもなかったはずです。強いて言うならば、当時投稿していたネットラジオ企画に応募するネタになるだろうという邪な気持ちがあったくらい。(無事採用されました)
今にして思うとよくもまあそんな軽い動機で飛んだなあとも思いますが、逆に言えばそれくらい軽い気持ちじゃないと飛ばなかっただろうなと思います。"軽い気持ちで勇気を出す"って大切かもしれません。
飛んだのは、栃木県は渡良瀬遊水地に本拠地を持つ藤岡スカイダイビングクラブさん。JR藤岡駅からタクシーで10分あまり。車1台分しかない葦原の道はもちろん舗装なんかされておらず、途中鉄板でできた橋を渡り、どこまで進んでも家一軒はおろか私とタクシーの運ちゃん以外に人間がいる世界なのかすらおぼつかない。これがアフリカだったら私は殺されて金品を奪われること間違いない。そんな野原……を通り越して荒野……の中をタクシーで進むのはすごく変な気持ちでした。
そうして辿り着いたクラブさん、男子トイレは"大自然"という、ここは本当に日本なのかと疑うばかりの景色が広がり、さらにインストラクターは外国人!日本語ほぼ通じない! 何から何まで私を不安にさせてきます。
忘れているかもしれませんが、私は高所恐怖症です。
日本人スタッフからレクチャーを受け、ダイブスーツを着て、いざ飛行機へ。当然飛行機は滑走路(※ただの草原です)の端っこに止まっているのですが、そこまでは車で移動します。ハイエースの扉全開で乗るわ乗るわ約15人(公道じゃないので法令違反ではありません)。この回は体験者が4名、それぞれにインストラクターが1人ずつついて、セスナの操縦手が2人、さらに撮影班(オプションでつけることができます)やら整備班やらなにやらでギチギチ。
気分は東南アジアのバスです。行ったことないけど。先のタクシーのくだりといい、「ここは日本なのか?」と何度も疑います。スカイダイビングそのものよりもそっちが強烈だったりなんかして、もはや感情は迷子でした。
ちなみにスカイダイビングは飛行機が離陸したら、気象NGが出ない限りは「ダイブしない」という選択肢はありません。この回は4組がスカイダイビングをしましたが、それぞれのペアが縦に並んでいるので、前の組が飛んでくれないと後ろの人たちが飛べないんですね。バンジージャンプならギブアップが許されるかもしれませんが、スカイダイビングは飛行機に乗ったらもう飛ぶ一択です。離陸した飛行機の中でインストラクターの人と結合し、ダダ曇りだったこの日の空を突き抜けて、雲の上に出たらダイブ開始。
飛んだらもう、あっという間です。雲の上まで20分かけて上がってきたセスナからフリーフォールで約1分、そこからパラシュートでゆらゆら地上まで約5分。
高所恐怖症、怖かったのはむしろ飛ぶ前。飛び出す直前が一番怖くて、飛んだらそうでもなかったんですよ。
まず、呼吸がうまくできないから。
怖くて息が荒いとかではなく、純粋に超高速で落下しているので息を吸えないんです笑 怖いなんて思ってる暇はなかったです。まず何より息をちゃんとしなきゃと必死に深呼吸を試みます。そうこうしているうちに雲の中に飛び込んでいって、辺りは真っ白に。
子供の頃に憧れませんでした? 雲の中を飛ぶこと。ちょっと飛ぶ方向は違いましたが、それでも確かに雲の中を飛んでる自分がいるんですよね。そこにはちょっとした感慨がありました。
この頃になると少し慣れてきて、周りの景色(※真っ白)にしみじみする余裕ができたのも束の間、雲の下の景色がうっすら見えてきた頃にパラシュートが開きました。
結果、すごくすごく楽しかった。
もう一度飛びたいかと言われれば、まあ、やぶさかではない。
そんな気持ちでした。
正直、これを書いている今でも飛びたいなあと思います。当時の映像を振り返ると飛ぶ直前の私は引き攣っているどころではなくて正直見ていられません。今飛んでも、多分飛行機に乗る頃に後悔すると思います。ただ、誘われたら何やかんや飛ぶと思いますよ。それくらい楽しかったんですよね。
副作用としては、しばらくの間、空を見上げると変な感情が襲ってくることですかね。私が飛んだ日は一面の曇り空だったので、空を見上げて雲があるのを見た時にはよく、
「俺、あそこから落ちてきたんだよな……」
という謎の感情にしばらく包まれたものです。信じられないフワフワとした気持ち。雲の切れ間からスーッと何かが落ちてくる錯覚を覚えました。気分はラピュタ。シータみたいに可愛い子だったらよかったんですが。
高所恐怖症がスカイダイビングを飛んだら、高所恐怖症を克服できるのか?
「スカイダイビング飛んできた〜」と当時の彼女に話して、じゃあ高所恐怖症克服できたかな? という話になったかどうかは覚えていませんが、スカイダイビングからさほど日を空けずに向かったのは、国営ひたち海浜公園の観覧車でした。
私の高所恐怖症は「床が動くのがNG」というタイプで、モノレールや鉄橋(やつはよく揺れるんです……)がダメな一方、東京タワーやスカイツリーにある下が透けてるやつは全然平気だったりします。というわけで遊園地の遊具系は軒並みNG、観覧車ですら怖くて乗れないものだからそれはまあ冷たい目で見られたものです。
で、観覧車に乗ったわけですよ。私はスカイダイビング飛んだし、ま〜いけんだろ〜とタカを括って30秒後、すでに手すりをがっちり掴んでいました。やっぱり怖いものは怖かった。その日は風が強かったのもあってまあ揺れる揺れる。散々笑われたのもいい思い出です。
というわけで、今日の結論。
やってみると案外なんとかなる。
だから、ほんの少しでも「やりたい」と思った自分に気づいたら、それを逃してはいけない。
私は、自分で飛びたいと思って、自分で退路を断ったことでこの大きな経験が残りました。
自分がスカイダイビングを飛びたいと思っても、高所恐怖症なんだからすぐに怖くて逃げるのは目に見えてるじゃないですか。そういう残念な自分を知っているから、私はすぐに退路を断ちに行きました。怖くて勇気が出ないものこそお金をかける価値があると思います。逃げられなくなるから笑
残念な自分はそこにいていい。残念な自分を認めて、それとうまく付き合う方法を探そう。
自分が残念だと知っているから、「やってみろー」と自分にハッパをかける。ちなみに当然ですが、この話は実際に飛ぶまで誰にも言わず、一人で飛びに行きました。ここで誰かを誘っていたら飛べなかったと思います。一人で「えいやああああああ」とやってみるのも、案外いいものです。あれからかれこれ6年が経ちましたが、いまだに話のネタになっています。
そして。
スカイダイビングを飛んでも高所恐怖症は克服できない!笑
重要事項です。
ショック療法で治りはしません。する人もいるかもしれないけど、私は相変わらず高いところは怖いです。だから無理強いはしちゃいけません。その後飛行機に乗る機会が増えたので飛行機は大丈夫になりましたが、それはどちらかというと慣れの話。いまだに羽田空港に向かうモノレールが怖いです。
ただ、ほんのちょっとした心の余裕はできるかもしれません。「俺はスカイダイビングしたぞ」という謎のマウント心が育まれます。本当にマウントを取ってはいけませんが、それくらいの心持ちが生まれるのは確かだと思いますよ。
そんなスカイダイビング体験記でした。
みんなもシータになろう。
ここまで読んでくださった皆様に、素敵な朝日が昇りますように。
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