焼き味噌握り飯 ~ 84315分の1の思い出によりそう、夏の果て
父が他界する1年くらい前のこと。
会社の上司に頼まれて出張で父に会いに行くことになり、久しぶりに実家に訪れた。
仕事の話を終えたあと、僕は父に元気でいてほしいという願いもあり、
「お父さんってまだ夢はあると?というか、あるやろうもん?」って投げかけた。
「そりゃあるさ、生きている限り。ひとつは実現できなくなったけど。」と返ってきた。
思いがけない答えだったが、おそらく日常的に考えていたんだろうと容易に想像できた。
孝行したいときに親はなし、といわれることがある。
親孝行をする主体者はもちろん子供だが、
親に対し何をすればいいのかいまだによくわからないし、
求められているかどうかすらよくわからない。
ただそのときの僕は少しでも父の手伝いができるならと、
実現できなくなった夢のことを素直にきくことにした。
----------------------------------------
誰にも思い出の食べ物というものがある。
1日に3回食べるとすると、1年で1095の思い出が生まれ、
父が生きていた年数に照らし合わせると84315もの思い出が積みあがっている。
父が実現をあきらめた夢は、
84315分の1の思い出の素になっているものを商品化することであり、
母と一緒にその価値をもとめる人たちに提供することだった。
# 焼き味噌おにぎり # 麦味噌 # 肥前佐嘉角屋
# 無名窯 # 福田忠夫
僕は6年前の夏に病室で父から
「この味噌をつかってこんな商品はできないか調べてくれ」と言われた。
あれから6年が経ち、いろんなことを振り返り、
父との思い出や僕や妻の経験を繋ぎ合わせることでみえてくるものがある。
ただ、孝行をしたいときに親はなし…
☆使用した肥前佐嘉角屋の調味料「味噌」