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失いたくないのはデータじゃなくて、その時の"気持ち"。


私はよく、スマホのメモ機能を使ってメモをとる。
その時感じたこと、誰かが言っていたこと、その日にあった出来事、忘れたくないこと。

何かに迷った時、何か嫌なことがあった時、何か困難にぶち当たった時にそれを見ると、自然と元気が出たりその時のことを思い出して自分を奮い立たせることができるからだ。

日記を書いたり、SNSに投稿したりすることもあるけれど、自分だけがみれて、自分の心のうちを書けるメモ機能を私はとても重宝していた。

だけど、そのデータはあっけないほどに一瞬で消えてしまった。


消えるのは一瞬

メモを書くのにはそれなりに時間がかかる。
気持ちを思い返したり、言葉を整理したり。

かくいう私は6月の中旬に事故に遭い、1週間の入院生活と約3週間のリハビリ生活を送っていた。

そしてその入院生活中に、その時に感じたことや思いを事細かに残していたのがメモ機能だった。

入院1日目、痛みと不安を感じながらも島の病院の看護師さんやお医者さんに心を温めてもらったことや、2日目以降に本土の病院で心細い思いをしたこと、リハビリの先生が親身に付き添ってくれて心が救われたことや、姉が週末にわざわざ遠くの病院までお見舞いに来てくれてすごく嬉しかったことなど。

指を動かして携帯を持つことですら体力を使うのに、それでも書き残していたのは、

全然動けなかったのに少しずつ、自分の体を自分の意志で動かせるようになった喜びや、総合病院ならではの社会の縮図のような仕組みを実感したこと、1週間丸々外に出れないとこんなにも外の空気を吸いたくなるのかと実感したことなど、

その時どんなことがあって(事実)、どんな気持ちになったのか(思い)を忘れたくなかったからだった。

だって、気持ちはナマモノだから。

いろんなことを考えるきっかけになったからこそ、忘れたく無かったし忘れちゃいけないと思ったのだ。自分のためにも。


だけど、ずぼらな私は携帯のバックアップを取れておらずあっけなくそのデータを紛失してしまった。
本当に、あっけなかった。


反省、だけど。


なんでこんなことになっちゃったんだろう、
なんでバックアップをちゃんと取っていなかったんだろう、
なんで残しておかなかったんだろう、
なんで面倒くさがってやらなかったんだろう。

色々思うことはあるけれど、
反省することもあるけれど、

結局は
『ま、なんとかなるか!』となってしまった。
HAKUNAMATATAなのだ、何事も。

データで残しておきたかったけれど、
形は消えちゃったかもしれないけれど、
私の記憶の中にはちゃんと残っている。

だったら、思い出したらいいじゃん!
ここからが新たなスタートじゃん!!
命ある限り、なんでもできるじゃん!!!

そう思ったらなんだか、少しだけ前を向けた気がした。

そして、ふと気がついたのである。


私が無くしたくなかったのは、データではなく
"その時に感じた自分の気持ち"だったんだ。


気持ちは書くだけじゃなく、文字にするだけじゃなく、誰かに話したり伝えることでも心の中に残すことができる。


私が忘れたくないこの1ヶ月の気持ち、
今度はちゃんと残しておこう。

そして、気持ちはナマモノだからこそ
その時にちゃんと残しておこう。


自分と大切な誰かの心の中に。

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