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点滴を打つように音楽を
フィクションをまるで楽しめない、という方と会った。客観視しすぎて世界観に染まれない、との事。登場人物に自分を重ねたり、誰かを投影したりと、感情移入に忙しい自分にとって新鮮な出会いだった。
小説や漫画、映像作品、音楽は、別世界へ連れて行ってくれるどこでもドアのようなもので、日常生活を営む上で必要不可欠だが、我ながら好みが極端というか、偏愛が過ぎる。広く浅く見聞を広めることに興味が持てず、そのとき1番刺さっているものだけを、読んだり観たり聴いたり、ひたすらくりかえす楽しみ方なので、同時に複数の作品をまたがることがない。
幼少の頃から、気に入った絵本があると離さず、時間があればそればかり眺めていたので、傍からみれば文学好きの地蔵のようだったと思う。小1の1学期時点の通知表で、心配する担任からコメントを寄せられたくらいだ。三つ子の魂百まで、という諺があるが、自分の好きな世界を見つけたら深く潜って同化してしまいたいと願う気持ちは、この先もかわらないかもしれない。
最近、back numberばかり聴いている。大人気のバンドであることはなんとなく知っていたけれど、きちんと音楽を聴いたことがなければ、申し訳ないことに何人組かも知らなかった。ただ「世田谷ラブストーリー」という曲の大ファンになった。好きな女の子と飲んでいて、誘いきれず終電で帰らせてしまった、と後悔している歌なのだけれど、その切なさがとてつもなくもいいなぁ、と思うのだ。
今度は君を追いかけて
もう今日はここにいなよって
ちゃんと言うからまた遊びに来てよ
もう終電に間に合うように送るようなヘマはしない
もうしないからさ
もう少し一緒にいたいのに言い出せなくて無口になってしまう。本当に言いたいことって、とても勇気が要る。わかるなぁ、と男の子の気持ちになって思うし、気になっている相手にそんな風に思われたらすごく幸せだな、と女の子の気持ちになって思う。誰かを好きでいると、良いことばかりではなくて、いろんな気持ちを味わうことになる。だけど、心底切なくなるほど好きな人に出会えたって、とても素敵なことだ、と思わせてくれる。
書けば書くほど陳腐だ。だけど好きってそういうものだ。