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映画「風が吹くとき」~幸せな暮らしのまま
映画「風が吹くとき」がリバイバル公開している。
この映画、私が高校生のとき、兄がレンタルで借りてきて(当然VHS)、一緒に見た。
昨日(8月6日)に見てきた。
奇しくも、広島に原爆が落とされた日だった(そのことを今朝知った)。
イギリスの田舎で暮らす夫婦だけの話。
仕事を引退した夫のジム。
妻のヒルダとふたり暮らし。
息子はいる。
孫もいる。
が、出てこない(電話の声だけの出演)。
ジムは2度の戦争を経験している。
政府の言うことには忠実だ。
次の戦争に備えて、シェルターのつくり方のパンフレットをもらってきて、作り始める。
ヒルダは、そんなことより、カーテンやクッションが大切。
戦争になっても何とかなると思っている。
ヒルダも2度の戦争を経験しているのだ。
ジムは知っている。
日本に原爆が落とされたこと。
そして放射能の被害が恐ろしいことを。
ジムは家のドアを外して、シェルターを作り出す。
ドアを壁に60度の角度に設置する。
クッションも食料も準備する。
そしてラジオのニュースで戦争の始まりを知る。
ミサイルが落とされたことを知る。
この「風が吹くとき」の原作は絵本である。
絵本だけどマンガの体裁で、1ページに小さいコマがぎっしり。
気合意を入れて挑まないと、見るだけで閉じたくなるほど小さいコマである。
夫婦の日常の会話に戦争が近づいていることがわかる。
ページをめくると、いきなり見開きの大ゴマで、潜水艦の絵が、そしてミサイルの絵が、戦闘機の絵が、挟み込まれている。
その迫力、戦争の怖さの表現として、秀逸である。
そして、とうとう原爆が落とされる。
この表現は、見開きで真っ白である。
白だけの迫力で、音もなく、原爆の恐ろしさを表している。
原爆が落とされてからが、この「風が吹くとき」の見せ場でもある。
放射能の恐ろしさを時間の経過で見せる。
頭が痛い。
下痢がする。
紙の毛が抜ける。
イギリスの田舎で暮らす老夫婦。
お茶を楽しむ幸せな時間。
揉めることもあるけれど、寄りそいながらの生活。
原爆が落ちたあとも、ふたりは寄りそって、お茶の時間を楽しうとする。
雨水を沸かして、お茶を入れる。
大きく生活を変えようとしない。
何かあっても、いつもと同じ日常を大切にする。
幸福な時間というのは、そういうことかもしれない。
デヴィッド・ボウイが歌う主題歌「When The Wind Blows」がいいので、最後に貼っておこう。
この曲を聞きながら、これを書いた。