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【ゲ謎ネタバレ】哭倉村HAPPY入村記録 

年パスで哭倉村に行きたいものです。
村内に哭倉旅館があったので泊めていただきたい。
なお記憶を頼りに書いているため、作中のシーン、台詞などはうろ覚えです。違うことも多々あります。
鬼太郎シリーズの履修はしていないため、全て個人の解釈(考察未満)です。
ネタバレOKな方以外は、入村後にお読みください。


哭倉村について

時麿(ときまろ)が死んだ際、村人が「なぐらさまのタタリじゃ」との発言から、元々は「ナグラサマ」という土着の神がいたかと思われる。(村人の言葉に乙米が反応して村人は慌てて口をつぐむ)

龍賀神社と龍賀の血筋は、おそらくそれを鎮める役割を持つ神主。
神社が村から離れて山の上にあるのは、湖を見下ろす役割がありそう。
(窖(あなぐら)暴走時に、村が沈んだり滅びるの織り込み済配置)

さくらさま、さくら村からなまって村の名前があるなら、祟る血桜が村の主体だろうし、哭が主体であるなら、湖と井戸があることから龍神関係であると思われる。
また単純に「あなぐら」が先にあり、後に村落が出来たなら「あなぐら村」から来ているのかもしれない。

克典社長の説明に出てきた、神社の気味が悪い儀式で、串刺しの白兎が二羽いたので、村人が認識する「ナグラサマ」は祟っておかしくない、血を捧げる必要がある荒神だと思われている。
(白兎は日本神話的に神の遣いなので、村内で兎を養殖してまで串刺しで儀式に使っている)

また村全体は明らかに景気が良いように見える。
戦後すぐの時期に都会はさておき、あれだけの僻地で立派な鉄塔が山に立ち、整えられた広大な田んぼ、その間にも電柱があり街灯がある。
トウモロコシ、蕎麦の花も同時に見え、人口を考えるとおそらく食糧自給率は100%を越えている。
洋花も道ばたに生えて(植えて)いるし、青果店、旅館、アイスを売る駄菓子屋もある(旅館があるのは外の人間が来るのか謎。冒頭のタクシー運転手の発言と矛盾する)

キラキラ輝く植物類が異様に美しく元気に見えるので、何か水神や龍神系の加護でもあるのか、Mと狂骨パワーなのか、単に金と水があるからなのか。
もしくは血桜に吸わせている中に「ご先祖様レベルの古き幽霊族」や「古い人間の頭蓋骨」があったことから、昔から窖や桜の力を村に供給するシステムがあるのかもしれない。

村の建物のメインは藁葺き(茅葺き?)と板張りの屋根が混在する。時々瓦。家の前にも畑がある、いわゆる農村。
作中の季節はおそらく夏。蝉が鳴く、トウモロコシ、蕎麦の花、稲穂が青くて真っ直ぐ、蛍がいるあたりでおそらく。

超山奥なのに電気も通り、車が通れるトンネルがあり、作物もとれ、葬儀前の遺言公開には男衆全員がスーツ(洋装)を仕立てて、女性も和装の喪服がある、全体としてお金がありそう。
水木がいう「戦争で儲けた奴ら」というのが村全体に見て取れる。

しかし龍賀関係の屋敷は本瓦葺きで立派な建物なあたり、身分や上下で縛られた地なのだろうというのがわかる。
(多分同等の屋敷を勝手に建てられない)

また村への入り口は冒頭タクシー運転手がつけた哭倉トンネルのみだとしたら、日常や建材など物資の運搬が謎。
人を攫ってくる必要もあるし、あのトンネルだけでなんとかなる?
しかしタクシーとすれ違った山を降りてくる車には、枝を落とした太い木材が積まれていたので、あのトンネルだけでも物資運搬は出来るのかもしれません。というかこの村、林業もありますね。確かに周囲も杉が多い。

パンフの地図をみても、吊り橋以外はトンネルが唯一の道に見えます。
長田家が突出して湖に面していることから、昔から長田家=村長は裏鬼道衆であり、井戸と島を見張る役割なのかもしれない。
村は綺麗な風景なのに、子どもや動物の描写がない(鳥くらい)、墓はあるのに寺が見当たらないなど何処かおかしさもある。閉じた集落感が強い。

なお東京から夜行+電車とタクシーで昼にはつける位置とのこと。因習と温泉、山深い、家の造りが雪は降るけど豪雪じゃなさそう、「ようけ」方言なあたりで愛知か岐阜周辺かなと勝手に思っています。
(愛知説は旧名倉村があったので。実際のモデルは特にないようなので個人の感想。岡山説も捨てがたい)

冒頭、村に向かうシーン

血液銀行の社長と部長は、過去哭倉村で部下が戻ってこなかったことがある模様。「行ったことがあるのかね?」と驚いてるのは「お前あそこから戻れたのか」の意味かもしれない。
実際水木を行かせるあたり「彼をコマとしか見ていない」ので、水木の感覚は合っている。
社長室にいた金魚は、キャリコの天頂眼に見えるので、おそらくは当時の超高級魚。

夜行列車内では、複数人がたばこを吸う描写から横の咳き込む親子を映して、その後異時空でゲゲ郎の警告が入る。
列車内に裏鬼道衆いるとのことでしたが、私はみつけられず。
しかしこの時点では目的地が同じだけの人間なのに、異界時空に引き込んで「お主死相が出ておるぞ」と警告するの、既にゲゲ郎が人間好きすぎない? 岩子の影響なのかな。

なお背後に戦友(少なくとも日本兵)霊がついている水木だが、後に出てくる殺された人達の取り憑き方とは描写が違うので、少なくとも私は害がない霊=水木が恨まれるような戦友殺しはしていないのだと解釈しました。
(後の描写的に参謀殿や上官を仲間と共に殺している可能性はあるけど、それにしては背後の人数が多いので。むしろ守護か友好的に見える。干渉が出来ないのでゲゲ郎に警告頼んだのは彼らかもしれない)

咳き込む親子が消えているのは、過去の幻影だから。
後に市松人形が地下施設の手前にうち捨てられているのと、咳き込む屍人と心配そうにみる屍人がいる。
つまりこの時点で境界を越えて過去視している水木。見えないものを見るには片目くらいがちょうど良いので、もしかして水木は怪我が残る左眼の視力が良くないのかもしれない。
列車内が時代的にゴミと煙草の煙で汚いので、哭倉村の自然の爽やかさとの対比が強い。

そしておしゃれタクシーで、無事哭倉村へ。
車同士すれ違うのがギリの山道幅なのに、降りてきてる車もいるのか…と後になって思うなど。
足下に水が溜まっている(多分染み出すほどに水が豊富。トンネル掘削時に苦労してそう)が、概ね平らな道。
トンネルの暗さが、唯一の出口としては象徴的。
ここから内部は法が及ばない、龍賀の村なのだろうと感じさせる。

そして初遭遇。緑と花が溢れる村で、喪服の沙代ちゃんと会うのがすごくいい。
沙代が困っているのに村人が誰も来ないのは、水木を警戒してなのかもしれない。
なお、龍賀家の黒紋付なのは乙米と沙代のみのため、正当な血筋なのがわかるし、あの黒紋付はとても高そう。リボンもですが、正絹ですよね多分。
沙代を迎えにきたのが大人でも村人でもなく時ちゃんなのも、二人の普段からの仲の良さがわかって好き。
(そしてイトコにしては似すぎているので、後にああ姉弟か…となる)

龍賀の屋敷と村人たち

屋敷の描写が良すぎて、屋根にナニかいるらしいのは私は見逃してます。
(友達いわく、白い丸っぽいのがいたそう)
門を立ち入った瞬間に後ろから長田が来たのは、ずっと水木の跡をつけていたのだろうし、時ちゃんが知っていたように、村中が水木の移動を把握していた筈。
彼を囲むのが暴力と排除に躊躇ない村人(裏鬼道衆)なのもいい。
いいぞ、邪悪な村だ。

克典社長に助けられて屋敷に上がるが、屋敷内の広さ、廊下の板張りはつやつやに反射して掃除が行き届き、構造も段差がある昔の複雑さ、田舎の邸宅内部の空気の冷たさ、そして洋風のランプや立派な洋画が無造作に飾られているあたり、お金持ちのお屋敷感がひしひしある。

遺言状を開くシーンで通り過ぎる水木(ヨソモノ)を全ての村人の目が追うのがとてもいい。この村は絶対何かある雰囲気を出している。
遺言状公開なので、ヨソモノが財産をとりにきたと思われているのかもしれない。
金箔を貼った豪華なふすま絵が何枚もある続きの大広間、龍モチーフの欄間など、屋敷内は鯉(龍の前段階)と龍のモチーフが大量に出てくる。桜のふすま絵もある。
時貞の趣味が金ぴか俗物的で派手なのも、実際にうなるほど金があるのも示唆されている。

畳はやけに綺麗なわりに、畳のフチは普通の作り(後の倉座敷牢の畳と同じ)なので、畳の入れ替えが頻繁(汚れることが度々ある)のかもしれないし、大広間は普段は使わない部屋なのかもしれない。

ここで水木が「心中お察しします」とありきたり(で無神経)な言葉をつげるのに、乙米が「貴方にわかるというのですか!」と声を荒げるのがすごく良かった。
この村で、龍賀家という地獄で生きてきた人間に、外部から来て軽く口先でワカルといったら、それは怒る。怒る権利がある。
偉そうで普段はふてぶてしさと無表情を頑張る乙米が、内面は感情的で動揺しやすいのが、冒頭から示唆されている。
初見の印象と、二度目の印象が全く違う。
「お父様を亡くした『悲しみ』」というのも非常に乙米。
沙代ちゃんなら絶対に悲しみなんてワードは出てこない。なんなら喜びとか言いそう。

また遺言が読まれるまで、ドヤ顔自信満々な克典社長も味がある。
嘘だ!偽物だ!の時、真横の時麿に飛びかからずに弁護士に飛びつき、その後解散でへたり込んでいても誰一人見向きもされないのが、彼が村ではよそ者として相手にされていないが、それでも長年それなりに上手く立ち回ってきたのがわかる。
(親身に支えられないが、特段攻撃や嘲笑もされない絶妙な立ち位置)

なお「お父様の言葉を真にうけるなんて」と克典を嘲笑した乙米、2周目以降見ると可哀想すぎます。
何度も何度も裏切られてきた実体験でしょうね。嘲笑の対象に過去の自分も入っていそうです。
争う分家もどうでも良さそうで、周囲や世界に何も期待しておらず、掌に残る身内だけを愛着して立つ人。

龍賀家の兄妹っていいよね

最後まで見てからもう一度見て振り返ると、とっても味がある人達。
因習村の地獄に生きてますね!
時貞の妻が全く出てこないのと「美女に囲まれるのが人生」などいうので、産ませてはいるものの、そもそも正妻はいないのかもしれません。

長男の時麿は嫁取りも許されずと言っていたことから、本来のタタリを封じる龍賀の神職を学びつつ、現状の窖封印が出来るように努力してきたのでしょう。
顎紐から顔側だけが白塗りでお歯黒、しゃく持ちなあたり、代々続く古い儀式も担当していたのかなとか、とと様が死んで寂しいあたり、マジで拗らせに拗らせていて良い。
(姉妹と同じく寝所に呼ばれていたかなとも思った。でも印象としては儀式的な意味で童貞そう。ととさま…と、速攻沙代に視線を向けていたあたりも)

当主になった直後、お籠もり中にも関わらず沙代に手を出そうとしたあたり、彼にとっての父親をなぞりたいのか、本当に自分の時代が来たとはっちゃけたのか。
それとも窖封印で自分がもう死ぬから子孫を残すのが義務だと思ったのか。
いずれにせよ、躁鬱的な不安定さがある。可哀想。

一番可哀想なのは、人生を犠牲に修行していながら、沙代ちゃんの狂骨が見えてなかったということは、あまり才能はなかったのだと察せられるところ。
(封印自体も時麿がしたものでなく、数百年前の古い封印を父親の補助として守っていたに過ぎない)
なお、水木がきいていた精神を病んで云々は孝三のことを適当に時麿の事にしていたのかもしれないし、この服装と振る舞いは充分克典からみたら狂っていたのかもしれない。

長女乙米は推しです、宜しくお願いします。
感情的な動揺や衝動的な面が大きいが、必要であれば無表情や恫喝もする。
二回目見るとわかるんですが、彼女がしている行為は全部おそらく父親がしてきたこと、自分がされてきたことをなぞっている。地獄。
「少し躾が必要なようね」など。時貞の台詞を覚えるほどに身近だった。
「当主に呼ばれるのは誉れ」「龍賀の女であれば」「お父様の夢のため」(自分の夢とは言わない)「必要な犠牲は貴いもの」。
沙代と水木に吐いている台詞は、全部言われてきたか自己暗示してきたもの。「この里でしか生きられない」も、沙代というよりもおそらく自分がそうだとわかっている。
(外に出て連れ戻され壊れた、丙江の悲劇を繰り返したくなかったとも思われる。あの三姉妹はもう絶望済みなのだ)

絶望にあり、自らを理解しながら、時麿を(長男なのに)兄さんと気安く呼んだり、自分が悪役として動いて姉妹を庇うなど、優しいおねえちゃん。
あの地獄で妹を生贄に自衛せず、守ろうとするのが切ない。
守るあまりに一人加害者役を引き受け、妹たちに被害者ポジを与えてしまったことで結局自立させず、守りきれていないのも切ない。

時貞は実の娘に「おとめ」と名付けて自ら汚すのに意味があったんでしょうね。地獄。

次女の丙江。昔は清純そうで痩せていたのに、今はぽっちゃりセクシー。
駆け落ちが一時的にでも許されたのは「子が産めないことが確定したから」なのかと考えてしまう。おそらく流産を繰り返したのだろうな…と。
喪服も三姉妹で彼女だけは洋装。帯を巻けない理由があるのか、体型がコンプレックスなのかとか色々考える。
なお沙代ちゃんを二階から見かける酒浴びシーンでは、画面手前に野太くてすね毛がすごい足があったので、裏鬼道に相手をさせてるのかもしれない。ただ右手前にあったのは宝石商の荷物か何かかも?(開いたトランクぽい何か。そうだとすると、後に出てくる旅館は商人や建築技師など向け?)
一瞬で観られなかったので、次回があれば確認したいポイント。
いずれにせよ、酒だけでなく各種依存ぽい。
お金を無心していたのは、賭け事にも使っている可能性もある。

なにかに困るとお姉ちゃんが尻をぬぐってくれ、甘やかされている。
三女もそうだが、乙米が「悪役・加害役」を引き受けてしまっているため、丙江は、村内に日常としてある悪を他人事として被害者でいられる。
(お金を渡すシーンで水木の殺害を明言されても「勿体ないわね」くらいの感覚。やるのは乙米と長田で自分は関係ない。普通の出来事)

窖崩壊の寸前でも金目的で沙代を脅そうとしたり、おそらく龍賀根幹の窖に狂骨云々の詳細はわかっていなさそう。
村が皆殺しになってしまうと乙米にいわれても、少なくとも緊迫感はない。
貴方が死んだときに狂乱して名前を呼んでくれたのは、乙米お姉様だけだよ。

庚子拗らせがすごく良い三女。イイネ!
明らかに日常からおねえちゃんに庇われているのに、おねえちゃんに拗らせに拗らせている。三姉妹とも父親に寝所に呼ばれていただろうに。
家から出て長田に嫁いだ扱いなので責任が少なく、最終的に長田をあてがわれたのは、時弥を身ごもったからなのか産んでからなのかも謎。
「わきまえてくださらない、お姉様!」や沙代にも「わきまえ」を迫るあたり、自尊心の低さが伺われる。多分ずっと自分が三女なので「わきまえろ」と父親に言われてきたのだろう。

自覚的に時弥を愛していると振る舞うのに、発熱した時弥の側で時貞が現れている(魂を剥がされている)時には側にいない。
この地獄にあると当たり前の「愛の形や行動」がもう取れないのだというが体現されている。冒頭の時弥を迎えにも来なかったですしね。
常に猫背でうつむいているのも可愛い。

乙米が産んだのが沙代(女)で自分が時弥(男)のため、自分の価値=時弥になっていそう。スペアのスペアの三女として生きてきて、人生で成した「この村で価値を認められること」が時弥を産んだことだけ、という。
地獄みがあるが、不幸を全てお姉様のせいに出来るあたりが甘やかされている。

最後に狂骨から成仏する時弥を迎えにきたのが沙代で、あれだけ殺した沙代よりも悪であり、彼女は地獄に落ちている(迎えに来られない、来ない)のだと思うとしみじみする。イイネ。
(沙代が悪を滅ぼして犠牲者を救ったとみなされているのかもしれないし、単に霊力の強さの問題かもしれない)
監督に「もっとキャラデザを不幸そうに」といわれたところも可哀想可愛い。

純愛に生きしもの、孝三。
いいと思う、同人作家。龍賀に産まれて、よくぞその精神を持った。

いや心を失う前はどんな歪みがあったのかはわからないけども。多分時貞としては、元々は霊力がイマイチな長男の補助として育てていそう。
見せしめとして始末されてもおかしくないのにまだ生かされているあたり、おそらく乙米が庇っているのかも。

時貞にとって心が壊れた彼を生かすのはどんなメリットがあったのかは謎。(禁域に人を近づけない為の実例としてのわかりやすさ? もしくは時弥がダメなら業を押し付ける身代わり?)

「狂骨に襲われると心と記憶が破壊される」「恐怖で白髪になる」「龍賀でなければ死んでいた」あたりで世界観と設定を教えてくれる。
絵がとんでもなく上手い。ゲゲ郎はあそこで懐に回収しなかったのはびっくり。
「破壊された記憶は夢の中で出てくる」「夢の出来事として覚えている可能性がある」こともわかるので、その後の水木が楽しみになる創作の手助けマン。ありがとう。

メンタルが完全に壊れても村人は龍賀の次男として扱っている(身ぎれいにされている。車椅子はおそらく最新)のが、村内における龍賀家の強さがわかる。
(なお沙代ちゃんは孝三が壊れたのを「そんなことより」と切り捨ててたのも好き)
設定イラストで猫背なのもオタクみがあって可愛い。
記憶や心が壊れてすら愛しいものに執着して、周囲へ攻撃性を持たないの、きっと優しい人だったのだと思う。

因習村的に死んでいく人達

ストーリー感想に戻ります。
殺し方も良いし、犯人もいい。非常に呪われし一族で因習村。死のテンポも早い。
水木のトラウマな戦争シーンを度々挟むのもとても趣深い。水木が「人間を嫌いだし国がどうなっても知らん、ツケは払え」となった根幹が見える。あの理不尽と地獄をみたら「日本という国」を見捨てても仕方ない。

時麿の死体が見つかる描写では、冒頭へたりこむ乙米がいるんですが、死体がねずみ男に倒れてくると、もうピシっと座り直している。動揺し打たれ弱いけど、即座に持ち直すのが非常に乙米。

独鈷で左目を貫かれて死んでる時麿。
最後にゲゲ郎が全ての怨念を引き受けるシーンで、湖の底にある頭蓋骨の左眼から独鈷を引き抜くんですが、あれは頭蓋骨が人間(牙がない)かつ、周辺の骨含めて古いものだった(ゲゲ郎いわく数百年前)ことから、時貞以前にすでにこの村は地下で人(このタワーと周辺の頭蓋骨には牙がない)を贄にしていた構造があったのかなと。
龍賀と禁域(井戸と血桜)の歴史自体は非常に古いのでしょう。

沙代の狂骨(ワンレン黒髪ロングヘア)が時麿を同じ殺し方をしているあたり、沙代のお友達は独鈷で殺された本人なのか、単に古い頃に殺された=恨みが深くて強い狂骨なのかもしれない。

鬼太郎シリーズだからか、映画全体で「眼」が非常に重要なモチーフなのがとてもいい。
映画内では、両目でみると見過ぎ、片目くらいがちょうどよくて、右目が現在(または過去)で、左眼が未来を示唆してるように見える。
(左眼を失う=未来が閉ざされる。左眼に傷を負った水木は死にかけたけれど、生き残っている)

ゲゲ郎登場シーンと村人の挙動

怪しいよそ者がいました!と連れてこられる縛られたゲゲ郎。
その縄余裕で千切れるでしょ。
それを見て初手「こいつがご当主様を殺したんだ!」という村人。
展開が早い。犯人的な生け贄がないと適当に村人ランダム冤罪が発生するの?人狼?というほどの早さでの冤罪。
からの、よし処刑!の斧が出てくるスピード感。
水木がえっ?となるのもわかる。
(裏鬼道がヨソモノを処分したいので、初手叫んで犯人説ごり押ししたのかもしれないが) 

水木の「目の前で人が死ぬ」ことへのトラウマがはっきりして良い場面。
彼の立場的にはゲゲ郎を庇う理由がないけれど、衝動的に止めてしまう。
水木は戦争であれだけの地獄を見ながら、根本的に良いヤツから脱せられない。水木による日本は法治国家云々の正論が村人には全く響かず、何言ってんだという顔されるのもいい。この村で警察は必要ない。

また、ゲゲ郎斬首シーンで水木が止める時、村人全員が真正面をむいているのもすごくいい。
斬首から目を背けてるのは克典社長のみ、村人が殺人に慣れている。というよりも、中世のように処刑が露悪的な娯楽の可能性すらある。
こういった描写の積み重ねで、村全体が滅びても罪悪感がない。

また社長が口頭で処刑を止めているが、裏鬼道衆が長田に目線で確認してから手を止めているので、決定権が長田にあり、裏鬼道衆が長田に服従しているのがわかる。長田大好きそう。(乙米が通行止めで村が孤立宣言の時も、長田が同調してから、裏鬼道衆が同意している)

がんばる乙米と牢ごしの二人

窖封印する筈の兄さんが死んだので、かわりに頑張る乙米。
屋敷内、鎧の裏からエレベーターで地下なのか、ともかく通路ギミックがある。鎧のおひげ押してるみたいに見えて可愛い。
(これが冒頭70年後の現代では、朽ちた鎧と地下に落ちる画になるのがすごく良い)

禁域通路から出て乙米がふらついていることから、窖に近づくだけでダメージを負う=術士としての才能がないことがわかる。
さりげなく触れて支える長田。龍哭の時も抱きしめたり、君、結構頻繁に奥様に触れてるね。
(この時も霊力が高い沙代にすら頼らず1人で行くのが切ない)

戻って乙米が気付けをワイングラスで飲んでるの、本当にワインなのか、Mを混ぜたりしているのか。この状況で普通のワイン意味ある? そのワイン用意したのは長田なのかとか、さりげなく隣にいるとか色々突っ込みどころはある。
このシーンで乙米には直接現場をみて、焦りがあるのがわかる。少なくとも長田と乙米は現状(封印が解けて村が滅びそう)を正しく理解している。

そしてゲゲ郎は座敷牢ですよ、座敷牢!
古い家なら必ずあるのが因習村。

そこそこでかい格子(子どもなら抜けられそう)に、手前にある畳、鍵を通してるのは簡単な金属の穴あたり、おそらくは倉にあるカジュアルな座敷牢。敵や犯罪者を入れるようなガチなものではない。

牢の食事シーンもキャラ説明として秀逸。
白米をかっこむ水木が戦争で食べるのに苦労して、早食いが癖になっているのだろうことが察せられる。またゲゲ郎のご飯が雑穀に薄い沢庵で、裏側を覗いてから食べるのもいい。
この村は米が沢山とれるのに雑穀があるのは、身分を区別するために村に普段からあるのだろうなと。それとも栄養素的に雑穀米なのかな。

そしてゲゲ郎から水木に声をちゃんとかけたのが「一本くれんか」なのも「やだね」の表情も大変良いです。
水木はふかふかのお布団(畳まれてる時のボリュームがすごい)と、高いお膳に塗りのお椀、焼き魚など、食事内容的にあくまでもお客様と扱われていることがわかる。

ふとやってくる時弥くん可愛い。
ゲゲ郎は向こうからちゃんと目の前にきて、正面から話しかけられたら起き上がって視線を合わせるし、水木は子ども相手にちゃんと明るい未来を語るし、相手が欲しいであろうことを言える。
二人とも龍賀の跡継ぎでなく時弥個人として扱う。打算があるにせよ、水木の善性がこのシーンでも光っている。
沙代ちゃんにパーラーの話をしたのといい、営業マンとして優秀。

言い合う二人に気を遣う少年。普段から狂った村で、不安定な母親、胡散臭い父親に強大な祖父で、時弥がいかに周囲に配慮し気遣って生きてきているのがわかる。大人びて配慮が出来る子、時弥くん。優しさの権化。

ゲゲ郎がここで「時ちゃん」と呼ぶのもすごくいいです。おそらく岩子さんが子どもをそうやって良く愛称で呼んでいたのでしょう。
もう人間大好きマンじゃん、ゲゲ郎おじさん。
(ここで自称としてゲゲ郎と呼ばせる(人による名付けを受け入れる)のもいい)

また二人の関係性的に、水木が少し会話して「こいつは負け犬だな」と、強大な相手に即断するのが「上を目指す浅はかな人間感」あるし、「騙したのか?」と短絡的なゲゲ郎も可愛い。元々直情なのがわかる。
水木は「いつ牢から出す」とは約束していないのだ。

寝るときにシャツは適当に脱ぎ捨てるのに、浴衣はぴっしり着るあたりが水木。
朝には牢に布団を敷かれて寝ているのだけど、鍵が壊れていないのでそこらの妖怪にあけて貰ったか、ゲゲ郎本人が髪の毛で鍵開けをしたのか。
そして寝ているごつめ成人男子を布団ごと運んだのかゲゲ郎…。
(加害でなくいたずら程度で済んだのは水木が寝てる時にうなされたから憐れんだのか、背後の霊がゲゲ郎に何か訴えたのか)

露天風呂と雨とぐいぐい来る沙代

野外の露天風呂いいですね。
ゲゲ郎がキチンと着物を畳んで身を守る霊毛ブレスまでおいていた&敬語だったことから、相手は神系っぽい。(カテゴリとしては妖怪かもしれません)
また人語でない音を発する相手と古い知り合いということは、ゲゲ郎や幽霊族も、かつて神として奉られたこともあるのかもしれません。

なお村で初手縛られたゲゲ郎の肩が濡れていたのと、この温泉セクシーシーンでも雨が降っていることから、話してる相手は土着の神で龍神系なのかなと。
(温泉から居なくなった途端にすうっと空が晴れるので、日本で神として奉られるには充分。少なくとも水神か龍神。彼が村人のいうナグラ様なのかは不明。非実体の影で人語を話せないのは、窖システムで狂化はせずとも弱体化している可能性もある)

冒頭村に入ったシーンで苔むした社から水木を見ていたのも、人語を喋らない彼かもしれない。あのシーンの視点はすごく良かった。
(黒いシルエットが時貞に似ているのも気になる。龍神系で龍賀の祖先なのかもしれない。夢が広がる)

そして沙代が水木にアタックするの、ニコニコしちゃう。
この時点で既に狂骨を従えてる(もしくは組んでいる)はずの沙代。
乙米のいう「お父様のお気に入りだった」というのは、おそらく霊力の強さもあるのかと思います。

娘(乙米)よりも孫(沙代)の方が強かった=才能があったので、本当は沙代に自分の依代を産ませたかったのかもしれないし、沙代がいたから時弥を乗っ取って沙代との婚姻を目指したのかもしれません。(にしては沙代が死んだことにそこまで拘りはなさそうだったけど)

沙代は因習村の地獄で生きてきて、重しだった祖父が突然死に、狂骨は手元にあり、メンタルは限界で、今なら全部壊せると思ったところで出会った「何も知らない東京に帰る人」。
それは初めて出会う希望だし、このタイミングは「やっと逢えた運命の人」だと縋りますよね。わかる。ちょっと年上の都会の男だし。
全てを知らずに自分を連れ去って、もしかしたら「普通」になれるかもしれないと夢を見てしまう。
しかしそこから押してくるのが、龍賀の女ですごくいい。
欲しいものは狩るあたり、沙代が一番時貞の血を継いでるとこある。

喪があけてないのにお高め明るい色の着物、リボンも色合わせて、お高そうな帯が普段から良いもの着てるのがわかります。
パーラーの話にはっきりと「貴方と行きたい」というの強くていい。IF謎時空で何度でも行って欲しい。パフェもプリンも食べて欲しい。

尺が短いのに、ここで事後酒浴び丙江が覗き見してるのも情報がギュっとしてて良いですね。
乙米と沙代はこの地獄の真実を知っている。
丙江は恋愛沙汰と金の無心という刹那しか見ていない(それで許されている)、水木はまだ何も知らないまま、お嬢さんの押しに戸惑っている。でも向き合い方は真摯。

葉巻を投げ捨てられない水木と禁域

克典社長と水木が密談しているの、車から降りて声かけシーンで出てきた哭倉旅館でしょうか。
この部屋には木彫りの熊やデカイ王将、クジャクの羽など庶民的(でも高級)なものがあって、龍賀屋敷との差が出ている。
(しかし密談を開け放った場所でやるなとは思う。水木は囮なのか、社長が暢気なのか)

ともあれ「くさいのは長田家よ」と言っているあたり、克典は本当に何も知らない。この村で全てを知らずにいるのは、むしろ乙米に甘やかされ守られているとも思えてくる。
旦那なのに乙米に克典呼びされてるのといい、社長は長田がずっと気に入らなかったんでしょうし、あいつが乗っ取りだ犯人だ!と、村外の水木にしか言えなかったのもわかる。

そして覚悟があり、格好つけて克典社長の申し出を受けたのに、慣れない葉巻でむせる水木可愛い。どうも火すらついていない。
笑われて悔しいのに葉巻を捨てられない水木も更に可愛い。普段吸っているのが安いPEACEなのも対比として良かったです。
(たばこは戦時中や軍隊でお金の代わりだったので、破棄するには躊躇いがありそう)

そして直前に沙代から禁域の話(に入った孝三が精神壊れた話)をされたのに、ゲゲ郎が向かうのを見て躊躇いなく追いかける水木。誰かを救うのに体が先に動く系。後先考えない。人の話を聞いて。
投げ捨てようとした葉巻をちゃんと内側胸ポケに仕舞ってから船に飛び乗るのも良いです。
小舟の漕ぎ方下手なのが、南方にいたのに陸軍で船なんか触れたこともない(物資もない末期)なのが察せられます。

ねずみ男も最高。後々では闇(異界)に消えていたのに、仕事をサボるのに、姿を消さずにあえて船で寝るのがねずみ男。
異物を嫌う哭倉村に溶け込んでるあたりがコミュニケーション能力の塊。
土蔵に閉じ込められた水木のところに来た(鍵を外から開けた)のといい、今回大活躍です。

「頼むよ先生」であっさりねずみ男が掌を返すのも、彼だから説得力があるし、水木からするっとこの台詞が出てくるあたり、戦後の成長期に「先生」と呼ばれたら気持ち良くなる、ねずみ男のような即物的タイプが多かったのだと思われます。

禁域の描写は、花に溢れていた村と違い、樹木とコケと岩。赤い鳥居くらいしか派手な色はなく、しかし手入れされていることから、管理下であることはわかる。
湖の真ん中の異界に通ずる穴、とてもいいですね。
窖前の鳥居には呪の文字があるんですが、この文字が穴から見た側に掲げてあるのもいい。
封じるまじないの一種なのか、それとも恨みと呪いで自然発生した文字なのか。ここにも真新しい注連縄があるので、管理が行き届いている。
管理は裏鬼道衆にさせているのか、禁域なので常人は近寄れず長田が一人でやっているのか…。

そして妖怪大発生! わーい水木しげるの世界!!
「荒事はよすのじゃ」といいつつ、ムカデぶん投げるゲゲ郎いいですね。幽霊族にとってぶん投げる程度は荒事ではない。
(岩子さんの価値観もそのくらいの可能性ある)
荒ぶる全てに敬語を使っているので、妖怪に対する敬意があるのか、もしくはここの妖怪達は奉られる程度の「古い知り合い」だったモノ達なのか。
(鬼太郎知識がないので、オオムカデ?その他の立ち位置が不明)

水木をおんぶして、リモコンゲタ?が自在に動くのも、素足で平気で鳥居ごと飛び越えるのも、人外みが強くて最高です。
その後カッパジェットで禁域から逃げるのもいいですね。しかし水木は島にあがる時に鳥居をちゃんとくぐり、ゲゲ郎も一応鳥居の上を跳んでいるので、ある程度正しい道に沿った出入りではある。

カッパが正気で挨拶をしてから去る(湖部分には狂化の影響がない)のと、村人が崖(岸)の上から黙って見下ろしている(監視している)対比も不気味で因習村感があります。
(村人からはカッパが見えないので高速で勝手に船を使い禁域から戻った形になる。カッパと温泉の水神は同一かとも思いましたが、雨が降ってないのでおそらく別の存在
座敷牢に出入りしていた妖怪といい、この村にはそもそも怪異が多い様子

窖の影響で狂化した妖怪、禁域から出られないのはそもそも島に集められ、血桜のように元々利用されていたのかなど、村過去の想像がはかどります。

丙江の死と相棒になる二人

そして二人目の犠牲者、丙江。
高い木の頂点に刺さる丙江のシルエットに、左眼をえぐり出すカラス。

これまで、植物に溢れている村の描写で、トンビ以外は全然雀や鳩などの描写がない(というか村には動物もモブの子どもも描写されない)のですが、ここぞと出てくるカラス。水木しげる感がある。
夕闇色と黒い死体のシルエット、そしてカラスなのがとてもホラーで良いですね。逢魔時です。

遺体に向かって、ひのえ!ひのえー!!と叫んでいるの、おそらく乙米。優しい。乙米の愛情や妹への絆が察せられます。
この人幽霊族の血でも入ってるんじゃないかというレベルで、色んなものを守ってるなぁと思ってしまう。(絶対岩子さんと気が合いそう)

そしてゲゲ郎による妖怪とは何か、幽霊族とはの解説が入ります。
映画内の解説のみだと、幽霊族は妖怪に近い(けど別)、人類よりも前にいた古代種、長命、人間に狩られて数を減らした、愛情深いなどの設定が語られます。
(鬼太郎を履修している方はもっと詳しくわかってそう。背景の絵はバベルの塔?)

のちの展開を鑑みると、幽霊族は確かに狩られるし減るだろうな…と。
幽霊族、一匹捕まえたら一族郎党助けにきて一網打尽に出来そうです。
愛情が深いのもあるけど、おそらく身内にした存在を見切るのが下手。岩子さんが捕まったのもわかります。

水木の「何故俺を助けた」がいいですね。
自分は行くなといわれた禁域に躊躇なくゲゲ郎を回収しに行ったくせに、他者の善意を信じられない。理由がある筈だと問いただす。
その上相手は「人間に狩られた幽霊族最後の二人」。
ゲゲ郎が恨むべき相手(人間の自分)を助けるのは、水木の「国や他者に踏みにじられたから、今度は踏みつける側に回る」に反します。混乱もあったのかな。打算があって欲しかったんだと思います。

「憐れみをかけた」とゲゲ郎はいいますが、本当に憐れみなのか、岩子ならそうするという慈しみなのではという気もします。もしくはゲゲ郎自身もこの時点では「何故水木を助けたのか」をわかってなさそう。
しかし水木にとって「憎むべきを憎まなくてもいい、恨むべきを恨まなくてもいい」というのは後に人の世を生きていく救いになったかと

そして寝込む時弥と、側に時貞の黒い影。
この時の発熱は「時弥の魂と入れ替わり肉体を奪う」最中とのちに判明しますが、誰も側に居ないんですよね。
母親も、お手伝いさんも誰も居ない部屋で、幼子が一人寝ている。
将来の当主認定された男児がです。
周囲は殺人が横行して暗殺の危険すらあるのに。

彼の処遇は普段からそう(役割は認められるが個人に興味は持って貰えない)なのかと思いますし、過去よくあった発熱自体も「時弥はそのために作った」のであれば、魂を引き剥がしやすくし、自分とリンクさせる(魂を入れ替える、自分の業を時弥の魂に移す)準備だったのかと思います。
「たすけておじいさま」=「こんなこともうやめて」の意味だと後で知ると中々にエグいシーン。

一瞬ののちに戻る二人の場面。
牢越しの背中あわせが良いですね。相棒感あります。
ここで二人が組むことに合意して、お互いに「何が起こっても逃げるなよ」の締約を結びます。愛情深い幽霊族と、嘘はいわない水木がです。
「妻の行方とMの秘密」を等価にあげているゲゲ郎の台詞(うろ覚え)が、この時点で薄々真相に気がついているのかなという気もします。
格好いいシーンとエグいシーンの対比がとてもいい。

沙代の気持ちと墓場飲み

水木が沙代に孝三に逢わせてくれと頼むシーン。
山の中腹にたつ洋館。
和洋折衷の建築の時期で、建物が大好きな自分は滾りました。
こんなところに建築資材をよく運んだな、技術者どうしたんだろう、テラスに真っ白な木製テーブルと木製椅子。使うときだけテーブル出してるの? 上に明らかな物見塔があるのは島の監視も兼ねてる? など色んな感情がよぎります。

沙代ちゃんは、腕出し真っ白ノースリーブワンピ着てきます。可愛い。
何度もいいますが喪が明けてないし、殺人も起こる(してる)中、他者の目を無視して水木に呼び出されたとウキウキお洋服選んだのかと思うと、切ない。狂骨と相談してきゃっきゃしたんでしょうか。
水木はオシャレちゃんと褒めてあげた?

そう考えると夕方の龍賀の洋館を選んだのも、誰にも邪魔されない素敵なひとときを夢見たのかもしれません。
普段人が来なさそうなのに、お高い金彩磁器に薔薇の花まで飾ってありますし。(この村、薔薇まで栽培してるのかと驚いた)

デートだと思ってたのに孝三に逢わせてくれの申し出に、「自分を見てくれない」と傷ついただろうに「貴方も私の望みを叶えてくれるのですから」という台詞が本当に胸にぎゅっと来ます。
初見は沙代は「とつひと」に縋るしか光がなく、水木もコネが沙代しかないからお互い消去法なんだろうなと思ったんですが、多分水木この時点でうっすら沙代の背後見えてる可能性があるんですよね。
(ゲゲ郎に背負われて物理接触、禁域異界で妖怪と出会い、相棒宣言で人外と対等宣誓しているので)
(※とつひと、外つ国からきている人。この場合、実際の外国でなく、ウチではないヨソ概念)

沙代は沙代で、水木に孝三を会わせたり知りたいことを出したら「自分の穢れ」も知られる可能性があるのに、リスク含めて水木の望むことに従う覚悟がある。微かな希望を叶える努力を惜しまない、強い少女です。

そして乙米と庚子のシーン。
ここでも乙米は「早く時弥を当主に」と動揺があるので、本当可愛いんですが、庚子のイキリも最高です。姉妹で可愛い。

「おねぇ様といえども弁えてくださる?」の表情が心底、拗らせに拗らせている。言ってやった、ついに言ってやったぞー!という興奮顔が最高。

庚子は息子が当主になることを喜ぶ=窖封印を命をとしてもは当主が担うことを理解していないなど、明らかに何も知らないので、乙米は本当に夫にも、妹たちにも普段は言わず、兄と長田とだけで地獄の責任を抱えてきたのだろうと。
乙米は姉妹にむけて皆滅ぶと伝えてそれを防ぎたいのに、庚子は「今後も継続する村を誰が支配するか」の話をしている。
致命的にずれていて、庚子可愛い。

そしてあまりに絵が綺麗な、墓場での水木とゲゲ郎のシーン。
墓場に来てる水木、もしかして見えるようになってるのに一人飲みに墓を選ぶ(村人から離れる)のがすごくいい。
生きる人間より死者の方が彼とっては安心感があるのかと。ひょっとしたら、沙代の狂骨と背後の霊から逃れ考えたくて墓場に来た説もある。何なら村中は恨みのある幽霊だらけかもしれない。

宙に舞う蛍、苔むした墓が「この村自体が古くからある」「山に水場が多い」のを示唆している。
道は草がなく土むき出しだったので、山中なのに人が頻繁に行き来している様子。(裏鬼道衆が山に入ってるのか、山が整えられているので林業関係なのか)

なお石墓はあるのに寺はない。この村は神社しかないあたりも独特です。遺言のシーンでも数珠や坊主、仏壇もないので、仏教の入る余地がなかった村なのかもしれません。
墓石で読めたのは、穴川家、秋山家、今川なんとか。
(友人の報告では朝比奈、今川、秋山とのこと。もう一度観て確認したい)

この場面は本当に画面が綺麗です。そしてつるべ火が可愛い。
顔も挙動も可愛いし、もう慣れてきて驚きもしない水木もいい。
ヨソモノの移動を把握して山中に不審な明かりが見えてると思うんですが、村人も裏鬼道衆も一切来ないのも因習村感。
(怪異だからつるべ火見えてないのかもしれないし、ゲゲ朗が結界でも張ってるのかもですが)
(なおつるべ火が青い炎なの、これも恨み系のネガ炎なんでしょうか)

いぇーい、男二人の恋バナ。
「真剣な気持ちを弄ぶな、それだけはやってはいかん」が、ゲゲ郎の愛情深さと真摯さが伝わりますし、ゲゲ郎の実直さとスタンスを水木が理解するシーンでもあります。
「こいつは負け犬だな」という評価を水木自身も恥じていそう。

その後ゲゲ郎の泣き上戸が判明するのもいいですし「怪異のくれた酒を共に口にした」「口にした煙草を共有した」(唾液のついた供物を人外に捧げた)のが、水木が完璧に「見えるようになった」理由の一つかなと思います。

そしてゲゲ郎の語る岩子さんが、生き方ひっくるめて美くしい人。
人間を愛して人間に寄り添い、人間の文化を堪能して社会で生きる。
戦争があったので、楽しいことのが少なかった時代だと思うのに、それでも岩子さんは愚かさを含めて人間を愛し続けた。
自らを狩る側に混じるの、あまりに強い。
観客も、岩子が見つかって欲しいと強く感情を揺さぶられるので、シナリオ的にも魅せ方が上手いです。

「誰しもいつかは運命に巡り会うのじゃ」が、沙代さんのことを思い起こさせますし、水木自身の「運命」も気になります。
この、運命に巡り会いはするが上手くいくとはいっていないのが絶妙です。

VS長田バトル(その洋館を壊すな)

沙代の実行力が凄い。龍賀の女。直後に孝三との面会が叶います。
またしても山中洋館ですが、連絡役にねずみ男なのも良いですね。お金さえ払えば優秀な安心感がある。

車椅子の孝三が悲鳴をあげて怯えるんですが、禁域の島自体が光ってます。大分封印が緩んできている模様。
この時点で時貞の遺体はもう禁域で巨大な顔写真(の横の屋根)に飾られているのかと思うと、なんともシュール。

長田の解説とあわせて「岩子は龍賀が確保している」「禁域は龍賀が管理」「狂骨を操るのは裏鬼道の外法」「狂骨に襲われると記憶がなくなる」「心が壊される」「失った記憶は夢で断片的に見る」「幽霊族は裏鬼道が狩ってきた」ことが判明。

孝三さん絵が上手い。すごく上手い。それで食っていける。是非現代IFでSNS絵師やって欲しい。
なおゲゲ郎は孝三に対して「この者を知っているのか」と言い、後の血桜での再会ですら「おまえ」と呼んで岩子と名を話すのは水木に対してだけなのがエモいです。名前はゲゲ郎にとって重いんでしょう。

長田の開眼と裏鬼道衆との戦い、アクションが最高、画面映えします。疾走感もあるし、派手派手です。
ゲゲ郎が人外の戦闘法と筋力で良いんですが、裏鬼道衆は長田以外がずっと物理であれ?となります。鈍器、仕込み刀、銃など。あれぇ?
村に妖怪がこれだけいるのに、神秘、随分と失われてるんじゃないでしょうか。
実際映画中「人間」で明確に神秘を操るのは、時貞、長田、沙代だけです。
その長田ですら、地下の採血施設で水木と沙代の接近に気がついていない。

時貞が稀代の天才を自称してましたが、文化の発展と共に、周囲が異能を失っていっただけで、過去(窖システム構築した数百年前)からしたら、大した術士でない可能性があります。

裏鬼道の方々、長田もですがみんな鬼面&制服に赤いカツラなの良いですね。それキメ服なんでしょうか。
修験道や山臥系に見えますが、代々昔からのものなんでしょうか。
なおここで目を開いた長田がみられますが、石田彰全開で趣深かったです。一方的なの楽しそうね。まさかこのシーンがグッズ化するとは。

そして壊れる洋館。やめてやめてあの時代の建築だよ! 木製で各所に日本の建築がありつつ海外から学んだりして建てた貴重な洋館。しかも山奥のレアもの。
ぁあああ、壊れる手すり、床、崩壊していく建物。これだから人外は!

もちろん戦闘は格好良いし、花瓶と薔薇含めて、いかにもな金持ちの物が壊れていくカタルシスもあります。
なおここで長田が操る狂骨は「牙があるので幽霊族」「目が塞がれている(多分全力狂骨では制御出来ない)」「呪的加工した幽霊族の頭蓋骨(下顎無)が必要」「赤い髪があって裏鬼道バーション」「デコの文字がなんか蒸みたいなの」であることがわかります。
あの文字なんだかわかります…? 窯?蒸?
スチーム長田と脳内で解釈して困りました。梵字系かと思いつつも違いますし。
(友人は「鬼」の文字に「火」(よつてん)なのではとのこと)

時貞もですが、呪具がないと狂骨制御が出来ないので、のちの沙代の桁違いな才能(同期のみで意思を伝えて制御可能)がわかります。
人外を相手に戦い、捉え、ドヤる悪役糸目な長田、すごくいいですね。おん!

なおここで塔の上からスナイパーの裏鬼道衆と銃が出てくるのも、今後の布石で良いです。荒事専門職の裏鬼道よりも、のちに水木が使う方が優秀なあたり、流石水木ー!となります。
しかし本当にひたすらに、裏鬼道衆が物理一辺倒。

水木と乙米と嘔吐シーン

ゲゲ郎が狂骨の中に幽霊族をみて、戦闘力を無力化されて捕まり、長田は獲物をいそいそ乙米の元に持って行きます。猫かな。

ここの乙米が、ものすごくキツい。
初見だと最悪な言動なんですが、のちの時貞と状況をみるに、これを言うしかない世界で生きてきたことが本当に地獄。
むしろ余所者でリスクの水木を生かして帰そうとするのが、以前血液銀行社員を殺した(または屍人にした)時貞との差で、乙米の甘いところ。
煙草吸ってるのも精神安定や気合いを入れる意味なんでしょう。必死に立つ龍賀の女は可愛い。(対比で沙代のマジ強さがわかる)

「少し躾が必要なようね」も後に時貞が同じ台詞をいうので自然に覚えるほど乙米も躾られてきたのだとわかってエグいですが、「忘れなさい」「沙代は時弥とつがわせましょう」「お父様のお気に入り」「お父様の子を孕んでいれば」などの「人権がなく産み腹でしかない龍賀の女」は乙米がその年になるまで受けてきた仕打ちそのものであり、「孕んでいれば」は「もう寝所に呼ばれず役割を果たしたことになる」(漸く自己に意味と価値が発生する)のでしょう。

「当主の相手は誉れ」なのも、苦しさがすごい。乙米はそう思うことでしか、自我を保って生存出来なかったし、それを間近で見てきて宣言を聞く長田もしんどい。

そして一族の事情を察して嘔吐する水木。頑張って平静を保とうとしたのに、近親相姦やレイプを知って嘔吐までいくのは、軍隊で何かあったのだと思われます。
(本人なのか、戦場でのレイプ目撃なのかはわかりませんが)

至極真っ当な水木感性による「こんな醜悪な一族に憧れていたなんて!」「あんたたちは人間じゃない!」の叫びに、乙米より長田がピクっと反応するのいいですね。
これを醜悪だと非難できるのはそれ以外の場所で生きているから。
産まれから醜悪さに穢され、受け入れ、染まることでしか守れないものや人生があるなんて、水木にはわからない。想像も出来ない。
裏鬼道衆が首元に刀を突きつけているの、長田の目配せかなという感がとてもいい。(水木が「乙米様」呼びしたのも気に入らなさそう)

また水木の過去トラウマシーンで軍の参謀殿が「大義の為なら本望だろう」「幸せだと思え」というのを部下に気圧されながら震えて発しているのと、ほぼ同じ台詞を水木に朗々と真っ直ぐに告げる乙米で、覚悟の差が凄い。
自己暗示で「世界はそうであるべき」と自らも犠牲者として生きてきた乙米と、自己保身建前上の「お前らは大義のために死ぬるのだ」の差。
(その後参謀殿が生存者の存在を報告してるのを「見ている」記憶があるので、あの後皆で逃げたか誰かが上役を殺したかだろうなとは思います)

時麿の日記と庚子

蝋燭が複数ある燭台があり、書物が積み上がるなど、努力して籠もって生きてきたのがわかる時麿部屋。
すかし窓の模様が周囲は鱗で龍、中心が鬼(ツノがある)に見えました。
パンフで確認すると龍賀の家紋で、囲む龍鱗と三本の鬼の角ですね。
やはり龍賀の家の興り、そもそもが「とつひと(鬼)」が龍神と結婚した系なのでは。
孝三の件も「龍賀でなければ死んでいた」ですし、突出した霊力といい、元々は人外の家系に見えます。

日記(哭倉窖日記?タイトルが読み切れない)を掘り出した沙代に、やってきた庚子が「弁えろ」と迫りますが、そもそも庚子はここに何をしにきたのか不思議です。当主の心得でも探しにきたの? それとも明かりがついているから確認に来たんでしょうか。
沙代もメンタル(狂化)がギリギリだったのか「邪魔をしたから」と目のハイライト消えて庚子を殺します。判断が早い。
まぁ、東京にいけるかの瀬戸際で邪魔者排除を躊躇しないのはわかる。強い。意思がブレない。

狂骨による殺し方の工夫が(因習村的で)いいですね。屍人が散々首を切られていたようなので、意趣返しかもしれません。
順番的には独鈷で貫く(道具に作用するポルターガイスト)、空に打ち上げて貫く(人間全体へのポルターガイスト)、首切り(人体を直接害せる。刃物があったように見えないので狂骨の爪?)と徐々に力が増している感もあります。

ねずみ男に土蔵をあけて起こして貰い、日記を渡されて外で読む水木。
見る限り田んぼの中なので村外に近い場所なのか。
分厚い日記を手で引き裂いている(しかも和紙)あたり、もう水木も人外化が進んでる感じがします。

ここで「持って帰れば役目を果たせる(出世できる)」のに、それをしないのを明確に選んだのも分岐点だったんでしょう。
水木の記憶にしかなくなった哭倉の真実が、後に記憶を失うことで全てが無かったことになるのも、時弥の「覚えていて」との対比ですごくいい。
この村も業も人の悪事も、成したものたちは全て忘れられるのです。(ねずみ男だけは覚えていますが。そして現代において、記者の山田が「ゲゲ郎と鬼太郎を通じて」残しますが)

沙代という少女

沙代ちゃんいいです。最高。
「もう猶予がない、逃げましょう」と水木に迫る沙代。
この猶予がないのは「自分が村を滅ぼすまでの猶予」なんでしょう。
躊躇無く庚子を殺したことに、沙代自身もこのままだと自分は完全に人外になると焦っていたのかもしれません。
水木がもう沙代の背後が見えているのに、それでも一緒に逃げようと決断するところもいい。

トンネル入り口で手を離し「ここから先は一人で先にいってください。必ず後から行きますから」というの、一周目は「水木が村から出たことないお嬢さんを夜の山道一人で行かせるか?」と違和感でしたが、狂骨が見えているなら、危険は無いと判断したんでしょうね。

沙代の「どこまでも一緒に」というの、覚悟がガン決まっていていいです。
理想ルートだと「ゲゲ郎だけ助けて三人で逃亡」だったのか、もうこの時点で水木共々村を滅ぼして一緒に死ぬ覚悟だったのか。

ストーリーとは前後しますが、私は沙代ちゃんが好きです。
一番時貞翁と似ているのは、結局沙代に見える。
沙代ちゃんには、全てを切り捨てる強さがある。
時弥もいるけど一人で逃亡したい、もしくは乙米も時弥も含む全てを滅ぼしたい。
ここで時弥的な存在(兄妹と長田)を切り捨てられないのが乙米で、自分で力を得て自分で振るうのが沙代。
乙米は所詮、長田という他者と龍賀の権力であり、自力では力を持っていない。

真正面から水木(好きな人)を見るのが沙代。
守るために前を向いて敵(父親含む)を見るのが乙米。
なりふり構わず力業で記憶に残るのが沙代。
なりふり構わず恨まれてでも、大切なものを手離さないのが乙米。

水木がトンネル前までは手を取って送ってから、沙代だけでも逃がそうとするのがいいですよね。
水木はゲゲ郎への「逃げない」という言葉を守って嘘をつかない。しかしここまで来るのはゲゲ郎に言われた「真剣な気持ちを弄ぶな」に対する返事でもあります。
この時の「きっと後から行きますから」は自分の生死に言及していない。
非常に水木だと思います。助けますでもパーラーに行きましょうでもなく、後から行く。

沙代が「幽霊族の人を助けにいくのですか」も、全てわかっているのがすごくいい。運命の人だと定めて、どこまでも一緒になので。
ここで既に「じゃあもう一緒に死のう」なのかもしれないですが、少なくともこの時は水木が自分を見てくれている。
だから水木の意思を尊重して、けれど自分のしたいこともする「一緒に」なのです。強い沙代ちゃん。

地下採血施設と滅ぶ村

ストーリークライマックスです。ここまで龍賀がしてきたことの答え合わせがされていきます。
非道さがわかっていても、視覚的インパクトで、龍賀め!となる光景。
通路脇に無造作に積まれたゴミ(攫った人達の荷物)に、汚れた人形があるのが、捕まって以来長く搾取されている親子が示唆されて、胸が痛みます。

しかし「手足は要らない切り落としなさい」の乙米さん、もうだいぶ判断力落ちていて可愛いね。
暴力によるカタルシスというよりも、怖いので逃げないようにして安心したいというのが見え隠れします。
どう考えても血液採取なら手足があった方が保持血液量が増えると思うんですが、水木が夢でみた「屍人が逃げ出して裏鬼道衆が斬首する」事件があったから、逃がしたくないのが大きいのかもしれません。屍人は寿命ある程度長そうなのに、攫ってこなきゃいけない程、結構逃げてるの?

ゲゲ郎がやめろ!と怯えるのもとてもいい。人間にしてやられるのも狩られるのも直接的な恐怖としては、強い存在としては近年珍しそう。ゲゲ郎の腕はもう、誰かを抱きしめる腕だからね…。

そして裏鬼道衆を倒して銃を奪い、弾丸を斧に当ててくる水木。(水木の足下に裏鬼道が倒れてるのが見えます)
この暗さで単発銃をピンポイントで動く斧にあてるの、だいぶ人外。

この強さからの、沙代の喉元に突きつけたメスが震えているのもいいい。
戦争の特攻突撃ですら「殺す」ではなく「俺を殺せ!」というほどの水木。
まぁ沙代の背後に狂骨と龍賀兄妹が見えているので、そういう意味で怖いのもあるかもしれません。
狂骨絶対「あ゛?」みたいな顔してそう。

先だっても書きましたが、水木と沙代が来るまで長田も含めて気がついていないんですよね。ゲゲ郎に注視しすぎて気配を読めてないのか、水木がもう人の気配ではないのか。
乙米が震えた刃先をみて、勝ちを確信してベラベラ告白しだすのも良いです。喋っちゃう小物感。
言葉を交わさない躊躇ない暴力を選択できない。
乙米は言葉でしか周囲を圧倒できない
、沙代を取り戻し、水木を生かして返す気がある。純粋悪になりきれない。乙米は沙代を守る気がある。

そんな甘さだから水木に「だから沙代さんは妖怪に取り憑かれて…!!」と殺人を示唆されて動揺するのがまた可愛い。
人外のしたことに見えるのに、霊力が高い娘が実行犯だと少しも思わなかったの、身内への欲目すぎる。愛が深い。

沙代もいいですね。
最終的に全てを滅ぼそうとする切っ掛けは「水木がこちらを見てくれなかった」こと。
運命の人が、龍賀の血でなく自分を見てくれるか」が沙代には何よりも大事だった。人としてある最後のよすがだった。
ここまで水木が沙代に会うためでなく「龍賀の秘密を知るため」であっても「自分と行かず友人を助けに戻る」でも我慢して努力してきた最後の線が切れます。

いやわかる、頑張ってきた。ここで目を逸らされるのは切れても仕方ない。
これだけ頑張っても、我慢しても叶わないなら、もういい!となるのわかります。

沙代の主観では「自分が汚いから、価値がないから水木は目を逸らした」と感じていそう。悲劇すぎる。

でも違うんだよ。水木は見ないことが優しさだと思うタイプで、地獄を沢山目にして、うつむいて目を逸らし、死にたくないと空を見上げるでも海の遠くの故郷をみるでもなく、ただ下を向くことで生き延びてきた人間なので、致命的に沙代とのすれ違いが起きている。

沙代はあくまでも地獄ではあるが、戦争の中でも豊かな村内で敬われ、モノに溢れて、飢えては来なかった人なので。
沙代には力があり、水木にはなかった。その差。
ちゃんと話し合えば本当は分かり合えたけれど、そんな余裕なんて誰にも無かった。

あと多分、目をそらしたのは沙代からでなく、その背後からじゃないかなと思っています。近いよね。

そして泣きながらの哄笑と共に、沙代の無双が始まります。
髪が解放され、ラスボス感も出す沙代。顔がいい。
屍人も開放されて恨みのエネルギー(蒼い炎)となり、狂骨が無数に発生します。このシーンいいですね。

沙代は明確に言葉と共に乙米に殺意を向ける。
あの明確な殺意、妬みもあると思います。
乙米からみれば沙代は地獄の中でも恵まれて、表面的には辛くあたりながらも守ってきたと思っている。
でも沙代からは乙米はずるいし加害者で、村を仕切る祖父を肯定する悪。
物心ついた頃には乙米はもう寝所に呼ばれていませんし、自分だけがお爺様に嫌なことをされ、乙米は守ってくれなかった敵です。
沙代は乙米に愛されたかった。乙米は愛していたのに、まともな愛を知らないため、沙代に伝える方法がなかった。

時弥を見捨てているのも「時弥はそんな目に遭っておらず自分だけが汚された」という感覚もあるのかもしれません。
あと乙米には長田がいるの、沙代は憎いのでは。
「運命の人」に拘ったの、乙米の側に利害無関係でずっと(異常な)忠誠がある長田がいたのも影響があるのかなと。

村人モブな年寄りが三人集まって命乞いしても狂骨が躊躇なく殺すのも最高。お前らはそうやって命乞いした人を、幼子含め屍人にしてきたのだ。
裏鬼道衆がさくっと殺される中、乙米は戦闘能力がないのに一瞬いなしています。龍賀の血筋素晴らしい。

長田が一番善戦しますが、乙米に気を取られた瞬間、囲まれてヤられるのもいいですね。
ゲゲ郎をボコった狂骨操作、骸骨(呪物)がなければ何もできない、物理しかない、所詮神秘からは距離が空いた時代の人間です。
「奥様! 乙米さま!!!!」の血を吐く悲痛さが最高。
監督曰く
生涯初めて乙米の名を呼んだ」ときくと、大変味わい深い。

乙米が最期、左眼を抉られて死ぬのも絵的に素晴らしすぎます。
左眼は未来の示唆。それを完全に奪われ、滅び行く周囲をみて(しかし長田は目に映らず)血を噴き出して死ぬ。良い悪役。演出が天才。

そして村中が狂骨に襲われて燃えるのも最高です。数百年、無数の狂骨を生み出し恨まれるだけのことしてきた村。燃えてしまえ。
水木に(ある程度)優しかった克典社長も自分で車運転して自爆するので罪悪感なく見守れます。
誰も救おうとしない、自分だけが車で脱出しようとする身勝手さと、運転の下手さも普段から運転手に丸投げしてきた怠惰を示しています。高笑する孝三を轢くのもまたヨシ。
克典と孝三だけは狂骨に直接殺されていないことが、他の村人は直接襲われる理由があると強調されています。

バケモノとはなんだったのか

沙代が水木の首を絞めるの、思わず章をわける程度にグっときました。
狂骨に全てを滅ぼさせ、乙米も長田も狂骨に襲わせているのに、運命の人の喉は自らの両手で絞めあげる少女。
沙代は水木が好きすぎる。いやわかる、わかりますけども。
時弥の「忘れないで」と同じですよね。
(パンフでもそういった記述があり解釈一致したとニコニコしました)

これでやっと水木は自分を正面から見る。
自分を見ないなら、見ざるを得なくするのが沙代
。強い。好き。泣きながらも水木をガン見です。
必死に抵抗をしようとするものの、胴への攻撃など沙代を害することはしない水木も好き。

そして滅び方もいい。
長田が最期の力を振り絞って、背後から仕込み刀で沙代を貫きます。
何よりも大事な乙米を目の前で奪われ、全てを捧げ、手を汚し続けても、結局何も守れなかった長田の最期の呟きが「バケモノめ…」なの最高。

狂骨を操る姿が、死にゆく長田の中では時貞と重なっていたのでしょうか。
あらゆる大切なものを奪われ続けた長田少年から、積年の感情を込めた呟きに見えました。

そして沙代は他と違い、蒼く燃えた後灰になります。
水木が全力泣きで崩れ落ち「すまない」と泣くのも良し。
良かったね沙代、貴方は死んでから泣いて貰えたよ。救いたかったと悔やんで貰えて、沙代が望んだ「せめて水木の中に残る」が叶っている。
(灰に水木の涙が混ざっていそう)

赤い鳥居と金屏風と菱餅と

長田が事切れるとゲゲ郎を封じていた札が効力を失い、ゲゲ郎は自分で拘束を引きちぎり自由の身に。
水木も、すん…っしながら、「遅くなってすまなかった」と秒で切り替えるところが水木です。戦争では泣き叫んでも敵は待ってくれない。

斧を手にして(それゲゲ郎の首落とそうとしてたヤツじゃない?)鍵を壊し、二人でスピード感溢れる疾走シーンです。格好いい。
ゲゲ郎がダメージ回復してないようにも見えます。
それにしても高低差がある崖に続く千本鳥居で、人間(多分)の水木を走らせる距離だろうかとも思いますが、相棒で対等なので自分でさせているのかな。

そして辿り着く窖の底、龍賀の秘伝。
血桜と湖が非常に綺麗
ですが、場違いな金屏風とその前にある舞台、時貞の巨大な顔写真。自分の顔写真飾りすぎでは。自己肯定感高い。銅像を建てさせるタイプ。

辿り着いた水木は頭痛に、鼻血も出ますが意識消失までいきません。
常人では耐えられない筈なので、やはり(背後霊の?)守護、または人外化の傾向がありそう。

この金屏風に唐突な菱餅と屠蘇(白酒)、雛祭りを模してるのかと。
厄を人形に乗せて流す厄移しの儀式。魂の入れ替えによる、自らの「業」を他者(時弥)に背負わせるもの。
まだ菱餅食べてるところをみるに、魂移しの外法は完全に完成していない。
頭部だけが時貞に見えたのはそういうことかもしれません。

ところで時貞の遺体をここに運んだの誰なのか。
地下の社に金屏風、写真、菱餅や酒までは事前に用意できても遺体は無理では。長田…?
正座で屋根に座らせろと言われて設置したの、面白絵面です。
もしくは元から窖の底で魂を抜いていて、見つかった遺体の方がフェイクなんでしょうか。

なお時貞は「時弥は今頃地獄で鬼に」云々と語っていましたが、時弥の魂は狂骨として在る程度に現世に残っていたわけですし、この辺りも自己評価ほどに時貞は稀代の術士でもないのでは?と感じます。薬学の天才も怪しくなってくるレベル。

この緊迫シーンでゲゲ郎が「時ちゃん」呼びするのもいいです。幼子は守るモノなんですよね。水木も「自分の孫だぞ…!」というの、常識的で好き。

友達はここの時貞が憎みきれない、台詞回しがテンポ良くて好きといいますが、私は嫌いだけどテンポ良いのは認めます。
やっつけられる悪役で人非人としては完璧。
時貞は「人間ああはなりなくないのう」「幽霊族はバケモノ」などと言いますが、いやそういう貴方が十二分にゲゲ郎よりもバケモノだという。

時貞の金色の瞳は、おそらく竜眼。
龍賀というように、元々は龍神関係の血が入っていそう。
シルエットが小さな翁なのは水木ワールド的にぬらりひょん(悪役)のイメージがあるのでしょうか。
また時貞が操る狂骨には鬼の角があり、下半身が蛇(または龍)のようになっています。狂骨は操作者を模した姿をとることから、時貞は鬼と龍の因子があると解釈しました。
お前が一番馬鹿にしていた「バケモノ」は、お前だ。

因習村、血桜回答編

さておきここからは、血桜オンオフが始まります。
「湖に沈む無数の幽霊族の遺体」「血を吸い上げる血桜」「少しずつ龍を模した金の壺に溜まる血」「窖は封印」「長期の苦痛を与えることで狂骨に成る」「岩子は生存しているが血を吸い上げ中」などが、時貞から示されます。

因習村ミステリなのに、解決編じゃないんですよね。回答はあるんですが。
「時貞は時弥の肉体を奪った」「自分は日本を救っている(つもり)」「周囲は凡夫で不甲斐ない」「沙代は惜しかったが代わりは作れる」(手前の地下施設で起こったことを知っているが、時貞は干渉できていない)「封印がうっかり解けるところだった」あたりもベラベラ開示してくれます。
「血桜は水中の根含めて操作可能」なのもわかります。

いやそこまで精密に操作できるなら、岩子に栄養剤与えて肥育した上で血を取ればいいのでは…?
というか苦痛を与えて狂骨を増やすと窖封印が解けかけるので、むしろ狂骨溜まりすぎた現状、減らした方がいいのでは…?
時貞、過去のシステム維持はしつつかろうじてメンテが出来てるだけで、新規でシステム構築が出来ないタイプのエンジニアですね。
コメントは古文書なりで残ってそうですのに。
明らかに狂骨は増えすぎてもう容量ギリギリまで使い切ってます。

水中、血桜の根元に無数の遺体をみて、ゲゲ郎は半狂乱で岩子さんの捜索。ついた時点で鼻血出た水木の方を振り返りもしないのも、水木が自分の判断で桜の根を切り始めるのも好き。

水木が桜から噴き出た血塗れになっているので、ここで致命的に人外化が進んでいそうです。
ついさっき、乙米の解説きいてたのに返り血気にしないの? 男前! 人の話と忠告をきかない!
咳き込みはするものの、直接投与に近いのに幽霊族の血で死なないあたり、ゲゲ郎に関わって半人外→耐え切るなんでしょうが、天狗の酒を飲んで清められていた辺りも意味を持ちそう。屍人にならずに良かった。

時貞がこれ以上桜を傷つけるなと桜を操作、岩子の浮上と共に血桜から色が抜け、湖が血に染まります。血桜から赤色オフ。
絵的には綺麗なんですが、ここが何度見ても解釈がわからない。
現状の血桜での吸い上げ対象は岩子のみ? それともカピカピのご先祖様たちも、一応年間数ミリリットルは吸い上げてるんでしょうか。
(私の中での結論としてはしてそう)

水面より高くあげると花びらから血が抜けるのは水木が根を切って傷つけていたからでしょうか。今回一番謎なのか血桜。
鬼太郎を履修している方々は「血桜」という設定を知っているのかもしれません。絵的に映えるシーンは多くとも、今回だけでは私は良くわかりませんでした。
(この文は映画での感情をそのまま書いているだけなので、早く他の方の知識と解釈、感想が読みたい)

時貞が見せた金の壺(龍モチーフ)に溜まる血液は、ぽた、ぽた、程度でした。
壺の回収&取り替えはどの程度のペースなのかわかりませんが、そんな量なら、幽霊族なら増血剤入れて普通にとれるのでは…? 体重あった方が血液増えるし太らせた方が良いのでは? など疑問がありますが、元々窖システムの設計が「恨みのエネルギーを集める」ことと、時貞が他人が惨めなのをみて喜ぶタイプなので、わざわざ血桜に吸わせているのでしょうか。

そして感動の再会。
岩子の右眼は塞がっていても、半分開けた左眼が残っているのが印象的です。まだ未来は完全には閉じていない。
ここでも「おまえ…!」と呼ぶゲゲ郎。徹底して敵の前で岩子の名前を呼ばないのいいですね。

お腹に宿る鬼太郎の存在をゲゲ郎の耳元に囁くのは、美しくも涙を誘います。
音声なしの演出なのに観客に伝わるのもすごいですよね。

さて、時貞無双で「気色の悪いバケモノめ」「どうせカスのような人生じゃ」「日本の未来は明るいわい」「だが残念!そのややこは儂のもの」等、時貞の最悪煽り(だがテンポがいい。ラップバトル強そう)に悔し泣きする岩子。
ヤっていいと思いますその爺さん。
観客のヘイトを煽るのも非常に巧い。こいつは倒さないと駄目だと思わせてくれます。
勝利確信でテンションあがちゃってる感を出せる声優さんも天才。
「少し躾が必要なようだ」で、乙米にそれを強いてきたのはお前かそうか、口癖になるくらい繰り返したのかと微笑んでしまいます。

やっちゃえゲゲ郎!

ボス狂骨バトルと時貞の末路

無数の狂骨が合体することで最大サイズの狂骨発生。ラストバトルですが、この時に時貞の持つ呪物な骸骨、長田のより大きめサイズに見えます。
なお牙があるので多分幽霊族。
額の文字は龍でしょうか。総合的な管理が出来るあたり、これは代々引き継いできた頭蓋骨で、管理者キーかな。

時貞狂骨は先述の通り、額には鬼の角、下半身は蛇(龍)と、下半身まで骨で実体化しています。
対するゲゲ郎は既に傷がある状態からの戦闘スタート。治りが早い筈なのに消耗から開始しているのがわかります。

以下戦闘箇条書き(情緒が揺さぶられて記憶が怪しく、時系列違っていたらすみません)

・周囲の狂骨を集める
・ボス狂骨発生
・ゲゲ郎接戦で負ける
・血桜がゲゲ郎を掲げて一部花びらが染まる

この時ゲゲ郎は根っこでなく花びらに囲まれ、その周囲は赤く染まっています。(カメラが引くと周囲以外は白いまま)
胸を怪我していますが、あの傷の出血量で染まるのがあの程度の花びら範囲だとすると、全部染めるにはゲゲ郎丸っと一人分くらいで足りそうな気もします。いいとこ1.5ゲゲ郎?
岩子さんの体重だと多めに見積もって、2岩子から3岩子でしょうか。

さて前の場面で水木は、感動シーンなゲゲ郎岩子を尻目に、虚ろに一人倒れていましたが「儂は諦めが悪いんじゃ」「そしてそれは儂の相棒もな!」で、フラつきながらも舞台に上がってきます。
あの手前に死体っぽい水木が倒れてる絵が本当に良かったです
見向きもしない、助けもしない視野の狭いゲゲ郎。信頼であり、直情であり、求めてきた岩子に必死なのがわかります。

血塗れで斧の音を響かせて階段を登ってくるの、一見悪役。
意識を一旦失っても、けして斧を手放していないのも最高。
ギリギリなので斧を持ち上げるのすらしんどいのも最高。
この辺りのシーンを語り始めると、どのオタクも語彙が消えそうですが、時貞の愚かさ(浅はかさ)と、水木の愚かさ(善性)のぶつけ合いが本当にいい。

時貞「会社を2、3持たせてやろう」のあたりではもう、水木が側にいるのをあまり気にしてない。
見るからに水木がフラフラなのもありますが、時貞は「克典が死んだので代わりに良い、耐性があるなら窖の番もさせよう」程度で、水木をコマとしてしか見ていない。
時貞、この誘いで人間が頷かないわけがないと思ってるんですよね。誘いをかけた時点で水木はもう片付いた問題。
彼の価値観では美女と御殿、金と権力が何より最上位。
それを蹴るなんてあり得ないわけです。

水木にとっては、村に来る前は全てを賭して目指してしたものが、目の前にある。
踏みつけられないよう、搾取されないよう、搾取する側になる。権力と金を手に入れるために、戦後生きてきた。

でも返答は「あんたつまんねぇな!」
過去の自分含めて、つまんねぇと切り捨てて、愚かであっても誠実であること、もう死ぬにしても刹那のために努力することを選択する。

は? という表情の時貞いいですね。
もう斧の攻撃範囲なんですよ。
慌ててずり下がりながら狂骨暴走の危険性を説くなど、彼のロジックとしては正しい説得をして、しかし全く水木に響かないのもいい。
水木のいう「ツケは払わなきゃな」は、龍賀と国だけでなく、自身にも当てはまっている。
しかし骸骨壊す時、良い顔してますね!

舞台への階段に座って、なんでもなさそうに折れた奥歯を投げ捨てるのも素敵です。水木、怪我をし慣れている。
彼としてはもう自分の役(人間に出来ること)は終わって、あとはどうなってもいいし、ゲゲ郎の番なんでしょう。

そして時貞の負け方がいい。
ここまで圧倒的強者でライムにのって煽り散らかしていた癖に、結果的に油断による呪具破壊という、ほぼ自爆で死にます。

狂骨の龍賀への恨みは凄まじく、制御を離れ暴走したら、まず時貞直行。自分の巨大な顔写真に縋り付いて「哀れな年寄りにぃ~」なのも、声優さんが巧すぎる。

時貞は最期まで、調子に乗りまくった別ルートねずみ男のような印象でした。
人の世で成功してしまったからこそ、狭い村を王国にして、徹底的に選民意識を持ってしまった男。
木片と共に咀嚼され、金の珠(冒頭の襖絵で龍が持っていたのが想起される)になって、排出される。あまりに情け無い最期。
殺されないのは肉片と目玉と共に、業を煮詰められた様子です。

数百年分の全狂骨が味わった苦痛のツケを払い終えたら、時貞は開放されるんでしょうか。

ラストバトルとちゃんちゃんこ

時貞を殺したのに狂骨は止まらない。それはそう。
元凶の村と龍賀を滅ぼしました。終了! とはいかないのは「狂骨」という名持ちの特性に押し込めてしまったからなのでしょう。
恨みを持ったとしても全部が全部、屍人も含めて狂骨のみに変化するのはおかしいので、窖システムの設計上、狂骨への変化をガイドされている筈。
(わざわざ側面を石壁にし、巨大な井戸に見立てるなども含めて)

ここからはボス狂骨とゲゲ郎のバトルですが、ゲゲ郎は既に傷を負っている状態。それでも岩子を庇いにいくのがゲゲ郎です。

もうダメだという刹那に響く「まだ産まれていない鬼太郎の泣き声」。
奇跡の演出なんですが、あれは鬼太郎自身の努力なのだと私は解釈しています。彼の未来の先払い。未来にあり得る産声なのだと。
(産まれた鬼太郎が左眼がないの、ここで未来を先払いした代償だと仮定すると非常にエモいので)

そしてテンションMAXのまま、ご先祖様たち張り切りモード。
霊力か霊毛かは謎ですが、口から出す?! なんで?!
画面上に金色の光が溢れる感動シーン。
(湖に沈んでいた幽霊族たちの肉体はなんとか生きていた、でいいのでしょうか。人間で言う屍人みたいな、狂骨になるギリ手前?)

幽霊族愛情深いどころでない。根性がすごい。孫だ子孫だのお祭りで、金光の珠で狂骨を飲み込みますが、最終的に狂骨を滅ぼし飲み込んでなお、蒼い炎(恨みの方)は消えていない。
蒼が黒に、金が黄色になって、ゲゲ郎にちゃんちゃんこが巻きつきます。縞々の理由をここでつけたの天才すぎると思いました。
狂骨も含め先祖の力だが、幽霊族が積み重ねた苦しみや恨みを消しきれるものではない。でもその恨みも含め、生きている子孫を守るための力になる。
全力HAPPYにせず、地獄があったことを残すの、すごくいい。

時貞が死にボス狂骨が消えると、血桜が湖に倒れ込みます。真っ赤な湖に白い桜の花びらが散り、湖の水はどんどん引いていきます。

「一度生じた恨みは消えない」と解決しようとするゲゲ郎に、「いいじゃないか、やらせておけ」と返す水木。
国と人を見切っている水木と、これからの人の世を信じてみようとするゲゲ郎が対照的です。
永劫ともいえる時間人間が嫌いで憎んでいたゲゲ郎が変わったのは、岩子が愛で素地を作り、たった数日水木と過ごしたから。
ここに至って、水木もゲゲ郎も価値観がすっかり変わっているの良いですね。濃い数日でした。

周囲が崩壊する間に、ちゃんちゃんこを水木に着せるゲゲ郎。
この時点でもう、自分より他者を優先する幽霊族。
か弱い人間(水木)を守るために着せるのがゲゲ郎。
相棒の大事な人(と赤子)を守るのに、岩子に着せるのが水木。

「約束しろ、生きて戻ると。必ずだぞ」
「ああ、はよういけ」

言語化された約束、人外の誓約。
岩子との会話は「鬼太郎を守ってくれ」があったとしても「生存」の約束が出来ていないので、このやりとりは確かに意味があったんじゃないでしょうか。
ここまで結構な戦闘でしたが、水木は岩子を抱いて崩壊する窖から走っていきます。体力お化け。
この時点で既に岩子がちゃんちゃんこを着せられているあたり、本当に人の話をきかない。
そしてやはり大分人外化している気がします。
常人の体力で、死にかけた後に人一人抱えて全力ダッシュは出来ないので。

見送るゲゲ郎が、水木が離れたらグラつくのも、彼の矜持を感じていい。

「それに友よ。お主が生きる未来、この眼で見とうなった…!」

かっっっこいい!
私としてはもう、哭倉村も血液銀行も経て、国も滅んでいいんじゃない? くらいの思いはありますが、ゲゲ郎が見たいなら仕方ない。

湖の赤い水が底にある小さな穴にぐんぐん吸い込まれていきます。
水位が減ってたのこれか!

出てくるのが数百年前に組まれた窖システムの根幹なんでしょう。
血桜が穴を塞ぐ役割を持っていたんでしょうか。
水の抜け具合からして窖はまだ下、地下空間があるようです。
世界観的にはこの穴地獄直結なんでしょうか。それとも単に封印を二段階にして、地下に押し込めているだけ? 何故水が吸われるのに渦を巻いてない? 骨タワー水流にビクともしてないのなんで? 設定が、設定が知りたい!

そしてあらわになるのは、複数の頭蓋骨でタワーが組まれ、周囲には人骨が円上に並べられる形の封印。

少なくともタワーの頭蓋骨には牙はなく、ちょっと小さめなので数百年前の「人間」なのかなと。
肋骨などの詳細が見られていませんが、一番上の頭蓋骨の左眼にどこかで見た独鈷が刺さっており、時麿と同じ状態になっています。
(解剖学詳しい方は、骨を見てもっと情報がわかりそう)
(なおこれで窖システムを作ったのは龍賀の祖先なんだろうなと思いましたが、独鈷ガチ勢ではないので、全部同じ独鈷に見えている可能性もある)

ゲゲ郎が覚悟と共に独鈷を引き抜くと、穴から一気に溢れ出る狂骨と恨みのエネルギー。
数百年かけた蓄積と恨みの再生産の末の呪いが、一気にゲゲ郎を蝕んでいきます。しかし体が腐っても死なないのがゲゲ郎。強い。
「やはり無事ではすまんか…」と、わかっていた風なのがまた、彼の覚悟が伝わってきます。

無数の犠牲で繁栄を手にした龍賀と、ゲゲ郎の犠牲で成り立つ日本の未来。

ゲゲ郎自身が選んだとはいえ、何も正しくない。
我々は知らない犠牲の上で現在を生きている。

ゲ謎が徹頭徹尾、人間と現実の醜さ、全てがHAPPYではない世界の理不尽、やるせなさ、その中で選ぶことが出来る個々人の未来を描くのがとても好きです。

現代を挟んでからの顛末説明

構成が、構成が天才! 脚本家の方は一生分のカエルの目玉を贈呈されて欲しい。伏線回収と回答編に戻るのですが、本当に秀逸。

現代に視点が戻り、降りしきる雨の中「全ては70年前の出来事」「現代で雨が降っているので龍神(水神)の加護が発動中」「鍾乳洞の底に消えたスーパーボールは時貞」「時貞にはまだ自我がありコミュニケーション可能」「哭倉村は廃村に」「鳥居の傷は狂骨が暴れた跡」「記者が地下に落ちたのは、鎧があったので龍賀の屋敷跡」「汚れた人形があった場所はかつての採血施設」「採血ベッドが吹き飛ぶほどの何かが地下であった」「現代でも日本は無事」など、あらゆることが繋がります。
(全然関係ないけどあの市松人形すごく頑丈なので、何か怪異かな)

もう「今ここに鬼太郎がいて、無事に成長して、喋って、動いている」のが、感動。生きていてくれてありがとう。
冒頭で警告に来た鬼太郎とイメージが全然違います。
猫娘可愛い。友達も仲間もいる!
岩子とご先祖様の感情を思うと、息をしているだけで尊い。祝福と希望の子よ。

「今日はあの男も来ておるかのう」で水木は現在姿を消しているのがわかりますが、これは6期鬼太郎での設定?かな。
そして地道に残った狂骨を祓い続けて70年。
最後に残ったのが時ちゃんです。

「待て鬼太郎待!」で鬼太郎がピタっと攻撃を止めるのもいいですし、打って変わって「そうか、最後に残ったのはお主だったか、時ちゃん…」と呼びかける声の優しさが染みます。

もうこのあたりで情緒が振り切れていて、周囲から嗚咽をかみ殺す音が聞こえてきます。わかる。
名前を呼ばれた瞬間にモブ狂骨から「時ちゃん」に戻るのも本当に良い。
名を口にするかどうかも、ゲ謎では重要なファクターですね。

「あれから70年、相変わらず人は争い続けておるよ」と静かにゲゲ郎に言われて、それ。としみじみしてしまう。
そしてあの直情的で、泣き上戸で、視野の狭かったゲゲ郎が、親の顔として時ちゃんに接するのがいいです。鬼太郎と共に70年でゲゲ郎も成長している。
相変わらずおためごかしは言わないけれど「でも、儂らには鬼太郎がいる」と語りかける。

鬼太郎が当たり前に「時ちゃん」呼びしているのが、繰り返しゲゲ郎が時ちゃんのことを語ってきたと判りますし、「何か僕に出来ることはないだろうか」と誠実に問うのが、良い子に育っていて最高。

それに対して切なく「覚えていて…」というのが、もう。
時ちゃんが望んだのは、誰かの記憶に残ること。
狂骨に墜ちてなお、恨みではなく、たった数日、ほんの少し話したゲゲ郎に託すものがそれ。
時ちゃん、龍賀の中で一番人間が出来ている。
この場に記者がいるのもいい。覚えていて、記録し、広める第三者として山田がいる。こんな廃村まで来てくれてありがとう。

時貞がいったように時弥の魂が地獄に落ちていなくて良かった。
時弥、霊力強い。
そのまま成仏する時に沙代が迎えにくるのもいいです。
沙代、全然魂が消滅してない!
肉体が燃え尽きて灰になっているので、狂骨化もしてない。
初回は素直に感動したのですが、二回目以降、あれもしかして水木の背後に憑いてます? それともあの世と現世行き来してらっしゃる? など、タダで死なない龍賀の女を見た来たがして、ふふっとなりました。
沙代も独善で孤独で苛烈ではあるんですが、愛情深くて優しいんですよね。
(水木が「必ず後から行く」といったので、地獄永住はちょっと…と根性出した可能性もある)

そしてそこから時代を戻し、70年前の顛末を描くのが天才。
こっちを先にしないんですよ。すごいしか言えません。ギミックをコテコテに挟んで、しかし別になんとなく見ていても断片情報で充分面白いという。

雨が降りしきる山道で、水木は消防に発見されます。
ちゃんちゃんこを脱いでいたため、記憶がなく、白髪化。
付近に岩子さんの姿はなし。

おおお、雨が降っている。
これ、村に溢れた狂骨を鎮めるのに、水神含めて妖怪大戦争が起こった可能性に萌えます。
島にはオオムカデはじめ、戦闘できる妖怪が沢山いましたし、ゲゲ郎は窖の内部の呪いを抑えるのに手一杯。
妖怪たちは、窖システムが無くなって正気を取り戻してるでしょうし、なんなら黒い影になっていた龍神(水神)も実体を取り戻しているかもしれない。
岩子さんは妖怪達に助けられたのかもしれないし、ワンチャンちゃんちゃんこパワーで復帰して戦っていた可能性もある。
(窖の中はゲゲ郎、外は岩子の共同作業を夢見てしまうオタク。ご先祖様の激重愛情なら妊婦じゃ絶対守れー!となりそう)

「人知の及ばぬところで解決し、村から狂骨は溢れていない」「だが水木は何も覚えていない」「しかし感情だけが残っている」のだけが観客にわかること。

「なんでこんなに悲しいんだ…」が突き刺さります。
水木が、いい人だからだよ。

エンドロール

この演出考えた方本当に天才。
監督はスタッフ共々お腹いっぱい山盛りの白米を食べ、ふかふかお布団で寝て欲しい。すごい。劇場で誰も席を立たない。

墓場鬼太郎のタッチ?原作絵?で、人魂に導かれる水木。
あの人魂おそらく水木背後の人たちですよね。わざわざゲゲ郎との再開をさせてくれる、お節介な人魂。優しい。

原作準拠描写なんでしょうが、エンドロール時点ではもう、あのタッチでも岩子さんがチャーミングに見える不思議。可愛い。
再会時ゲゲ郎のおててがHEYみたいなポーズなところも可愛い。
もう洗脳されきって、再会が嬉しそうに見えるバイアスがかかっている。

しかし必死に廃寺から走って逃げる水木。記憶がないので仕方ない。
刹那でも顔を見て再会できて、ゲゲ郎も岩子も本当に嬉しかったと思います。
逃げ出す寂しさがあったとしても、水木の無事を見られたので。

ただ、死にポーズは岩子とゲゲ郎が離れているのか解せない。
絶対ゲゲ郎岩子さんから離れなさそうなのに。何故二人ともあのポーズと位置。
岩子さんは鬼太郎を産もうとしている体制なんでしょうか。
(原作がそうだからというだけの理由なのかもですが!)

そして二人の遺体を見つけ、岩子だけ抱えて埋葬する水木。
記憶にない相手なのに、ちゃんと素手でお姫様抱っこして、石も卒塔婆も用意する男。善性がすごい。お人好しめ。
ゲゲ郎の方は重いから運べないよね。

そして土に埋めた暗転で、原画調からアニメタッチに戻るのが天才。あまりに自然で初回は絵柄の切り替わりいつだった?となりました。
才能とセンスがすごい。最後まで観客に息をさせない。酸素ください。

突然雨が降りしきり、雷がなる中、鬼太郎が墓から這い出してきます。
天候的に、村にいた「古い知り合い」の龍神(水神)が鬼太郎の生誕を守護・祝福しに来ている可能性があります。
原作だと不気味な雷鳴と雨の墓場なんでしょうが、哭倉村を経ているので、雷も雨も守護を想起させる形になっているのが巧い。

なお水木の髪色がここで判明しますが、真っ白には見えないが、黒髪に戻っている風でもない。
白よりはちょっと暗い程度に見えるので、白髪を人間社会で生きるのに染めているのかもしれません。

刹那の葛藤の末、鬼太郎を墓石に叩きつけようとして、しかし愛しそうに抱きしめるの最高。
記憶は失われても、残ったものは確かにあって、墓場の鬼太郎から世界線がズレたのかなと思っています。
(しかし墓場鬼太郎を履修してないので詳細はわからないです。違ってるかも)

全てが終わり、やっと明かりがつくと、観客がみんな呆然と荷物をまとめ、無言のまま席を立つ。時折すすり泣きが聞こえるのがすごいです。
すごいものを見てしまった一度目の衝撃、忘れられません。

物語全体への感想

この物語は幾重にも重なりながら、結局は心折れそうな世の無情と、その中にある一筋の希望を描いていて。

正義は報われない。愛は報われない。
滅ぼされながら人を愛してきた岩子は結局、捕まり搾取され、最期に安寧を得たとはいえ死んでいく。

出世を捨て、友人の為に立ち上がり、正義を成した水木。
ちゃんちゃんこを「相棒の愛する人」に着せることで、記憶を失い、白髪になり、それは異形を嫌う人間社会ではマイナスになる。

哭倉村は遙か数百年前から、血桜に血を吸わせ、無数の恨みを買いながらも数百年間は発展し、龍賀はこの世の春を謳歌してきた。
時貞は金の珠に集約されて業を支払い続けているけれど、70年経っても自分で動いてしゃべれるだけの自我がある。

争いを嫌い、愛情深い幽霊族は鬼太郎(+目玉)を残して滅んでいるし、全てを引き受けたゲゲ郎は妻と肉体を失った。

それでもゲゲ郎を助けに向かった世界線の水木は鬼太郎を愛したし、記憶がなくとも「バケモノの子」を抱きしめた。
次代の鬼太郎は、ゲゲ郎と猫娘と一緒に人間を理解し、近づきすぎないまでも共生を探っている。

墓場の鬼太郎とはまた違う世界線があり得る、忘れても指先に残るモノで、ほんの少しだけでも世界を良くしていけるという希望。

世界は無情で、人間は愚かで、勧善懲悪なんて滅多になくて、正義は後付けで、必死の努力は実らないことが殆どで。
咳き込む我が子を隣から見ていることしか出来なくて、助かろうとしても蒼く燃え尽きて、運命の人は自分を見てくれなくて、苦難の末に助かっても子どもを見るまで生き延びることも難しくて、世界は常に変わり続けていて。

冷たい雨は加護なのかもしれないが、それで人間は冷え込んで。けれど指先の雫が次代の希望につなぐこともある。

設定や構造含めて本当に上手いなと思います。
無責任な希望は描かない。戦争がいかに愚かで、しかしそれで利益のある人間や社会もしっかりと描いている。

あとは、こんなに罪悪感のない村焼きもそうそうない
いいよね、滅びてしまえ、廃村になるのも納得の村人全員が邪悪。システムも邪悪。代々犠牲がなくては生きられない里は滅していい。
と感じるのも短絡的な人間の愚かさで、犠牲がない社会は存在しない。その矛盾を呼び起こすの含めて、すごく好き。

そしてゲ謎が魅力的なのは、人間が誰も完璧ではないし、純粋に悪でも善でもないところ。
映画の中だけでいうなら、時弥、鬼太郎、猫娘、記者の山田は善かな…。

時貞ですらほぼ悪であっても、村人にとっては簡単なお仕事をするだけで富と繁栄を約束してくれる「良いリーダー」でもあるわけです。
犠牲になってるの、主に身内と村外モブですし。自分には関係ない。丙江さんが乙米の指示する殺人を流すのと同じです。

龍賀の兄妹はマトモな形ではないが愛情は確かにあるし、沙代はお嬢様と大切にされてもストレスで全てを殺すし、時弥は無力の末に狂骨化。

そもそも龍賀の遺言書を読むシーン、分家衆が揉めて我先に弁護士をもみくちゃにします。儀式の場で龍賀の客なのに、乙米も時麿も案外なめられている。支配でなく、共犯関係なのがわかります。

また長田は乙米のためなら何でもしますが、愛や善性、気遣いがないわけではない。
裏鬼道の朴訥(で暴力的)な人達も、汚れ仕事をやらされているのに、長田は好きそうに見えますし、この村以外では居場所がなさそうです。

こうして人間故の多面性をもつ悪と戦い、抗うのが深みと旨味があって最高です。人間の敵は最終的に人間。
水木もゲゲ郎も別に完璧なヒーローではないからこそ、観客の思い入れが深まります。
いや本当に、時貞にトドメを刺したのが人間の水木なのは最高でした。

追記してまで言いたかったこと

そしてとても大事なこと。
ゲ謎は、二周目以降になると物語が全く違って見えてきます。
初見では短絡的に悪だと決めつけたものの事情が見えてくる。
知識が増えたり、知ることで、人はものの見方が変わる。
許せなかった相手に憐れみを持てたりする。
知ったところで許せないものと、選別が出来る。
経験することで、純粋な憎しみに囚われなくて済む。
水木と同じ、価値観の変遷を観客が体験するのです。
初見だけでも充分面白いのに、このギミックは天才だと思います。

【オマケ】窖システムの考察。そしてつよいぞ岩子さん

最後です。お疲れ様でした。
ここは入らなかった考察未満をモゴモゴ語ります。オマケなので読まなくてもOK。ともかく窖システムと血桜が謎だったので、映画のみの情報で整理してみます。

龍賀の血筋、鬼と龍神から発していて、一番最初の窖システムは悪意だったのかもわからないと思っています。
狂骨と龍賀の血筋、沙代を見る限りすごく親和性が高い。狂骨が「恨みから生じるもの」であるのなら、それを操る(制御して暴れないようにする)の、本来なら成仏させる方向性にも向けられます。
時弥の狂骨を沙代が成仏させているので。
また沙代の狂骨で屍人(他の妖怪)を即座に狂骨化しているので、かなりコントロール性がある。

窖システムは

【第一段階】真の呪いがある巨大な地下(湖の水が全て吸い込まれるような空間)を塞ぎ、破裂しないよう一部に穴をあけ(本来のいわゆる井戸)、その上に頭蓋骨タワーと骨アート+独鈷で呪いを封じる。※水流に負けない頑丈さを誇る
【第二段階】更に水を張り地底湖を作り(水神の親和性)、血桜で穴を塞ぐ。血桜は血液を吸わせ続けて維持する。
【第三段階】その湖の上に、巨大な井戸に見立てた穴を地上まであけ、封印結界を施す。
【第四段階】島を禁域にして鳥居で結界を貼り、地下には狂骨、地上には他の妖怪を閉じ込める。
【第五段階】更に天然の湖で囲む。鍾乳洞からのアクセスも封印がある。山上の神社から監視する。

という、水を媒介に数段の入れ子構造にするほどの「何か」を封じているんですよね…。
そして神社では儀式として白兎の血を捧げている。
元は血桜を維持するために生け贄が必要だったのかなと想像します。
動物や人間だとすぐカピカピになってコスパが悪いので、裏鬼道衆を手元において、幽霊族を血桜に捧げるのもまぁわかる。
人間は攫うにしても、騒ぎになると面倒ですし。実際ご先祖様はカッピカピでも生存?はしていましたし。


岩子が行方不明になったのが5年前(多分)。
戦後10年経過、戦中には既にMが存在する。
なのでMを作るのに岩子以前に幽霊族の血が必要。
ご先祖連中はカピカピでも少量の血液採れた=ギリ生存と仮定しています。

窖システムの構造的に予想できるのは
①最奥の呪いを狂骨の形にして少しずつ吸い上げ、龍賀が昇天処理する、浄化システムだった
②生け贄を作り、エネルギーと狂骨を有効活用する利己的システムだった
③日本破壊を夢見て狂骨パワーを貯め続けるテロシステムだった
などがパッと思いつきます。
どれにせよ、裏鬼道衆が居着いた時点で、村全体が外法を使う悪であったことは間違いないですが。

しかし②であるなら、狂骨は日々の労働に使ったほうがコスパ良くないです? 工事、農業、林業など、力はありそうですし。

というわけで、沙代に狂骨がすんなり力を貸しているのも鬼太郎でいう「ご先祖様が力を貸す」のネガティブバージョンな可能性もあるのではという気もします。結局本人が忌み嫌った、血筋故の力というか。

そして最後に、岩子さんはゲゲ郎よりも強いかもと、spoon.2Di vol.106インタビューで語られていたのもチラっと見かけたので、あまりに良すぎて皆さんに共有します。
ゲ謎、女性キャラも全員良すぎます。

感想を書き終わったので、これでやっとインタビューや他の方の感想が読めます!
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
貴方も良いHAPPY哭倉ライフを!

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hiyori
紅茶代、最近ハマりだしたコーヒー代、あとはカカオティ代になります。 大体お茶です。誘惑に負けるとお茶菓子になります。

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