梅の行き先
梅干を自分でできるって知ったのは、
結婚してからだった。
いつもスーパーで梅干を買って食べていた私は、
夫の実家で義弟がつけた梅干と梅酒を
いただくなんて予想もしなかった。
お義母さんも義弟も夫も梅干と梅酒を
自分で作っていて、今年はどうだったとか
話しているのをみると、自分は本当に
異世界から来たのではと思うときがある。
まったく話についていけないのだ。
毎年、義母から大量の梅が届いて
夫がそれを梅酒と梅干しにする。
この行程を横で見ると本当にできるから
あら、ふしぎ。
まあ考えてみれば梅干しや梅酒を作る人は
プロだけれど同じ人間だもんなと納得した。
夫は、あまりお酒が得意ではない。
じゃあなぜ梅酒を作るかというと私の母のためだ。
私の母は、梅酒が好きで調子が悪いと梅酒を
飲むというルーティーンを組んでいるらしく
それを聞いて一度夫が作った梅酒を渡すと
いたく気に入ったので毎年夫は、母のために
梅酒を作ってくれている。
今年も梅酒を渡し、幸せそうに「あ~おいしい」と
梅酒を飲む母を見るとうれしい気持ちと
ふしぎな気持ちでいっぱいになる。
母を幸せにしているのが自分ではなくて
夫だからだ。
でも夫が私の母を大切にしてくれているのは
とてもありがたい。
今年も梅が届いた。来年のために夫はまた
梅酒と梅干しをつくる。義母から送られた
梅は、夫を経由し母に渡る。この梅の循環が
ずっと続けばいい。