〝悔いなき選択〟について悶々と考えた#2〜選択を後押しするものと夢の奴隷〜
noteでとある記事を読んでから
ずっと〝選択〟について考えまくっている
何故〝選択〟に拘って悶々と考えたか?
生きていれば常に選択をしている
意識して選択するものもあれば
意識しないで選択しているものもある
その選択の上に〝今〟があるわけだからだ
前回、選択材料としての夢の持つ可能性を
書いてみた
noteで読んだ記事で取りあげていたのは
『進撃の巨人』の21巻の
第84話『白夜』で描かれている
リヴァイくんの選択について
そう
単にリヴァイくんのことを
『進撃の巨人』のことを書きたかった
と言う側面も否めないw
念のため書くと
この『白夜』でリヴァイくんは究極の二択を
突きつけられる
・リヴァイくんの所属する調査兵団の
エルヴィンというカリスマ性があり
冷徹とも言える判断と奇抜な戦略で
全員をそれまで導いてきた団長を
生き返らせるか?
・アルミンというエレンの幼なじみで
体力面で劣るが意思が強く
頭脳明晰な新兵を生き返らせるか?
エレンに促され瀕死のアルミンを
助けようとしたその時に
団長と一緒に囮として特攻し
唯一生き残ったエレンの同期フロックが
瀕死のエルヴィン団長を担ぎ込み
アルミンとエルヴィンどちらを生き返らせるか
という選択を迫られるところから始まる
例えるなら有能な部長(上司)と有能な新人
どちらを組織のために選ぶか
究極でもなんでもなく
組織の為を思えば団長であるエルヴィンだろう
エルヴィンが担ぎ込まれた時点で
リヴァイくんも
『俺は人類を救える方を生かす』
とエルヴィンを救う事を宣言するが
確実にエルヴィンを生かすと
人払いした筈のリヴァイくんは
結局はアルミンを生かす事を選択する
(正確にはエルヴィンを死なすことを
選択する)
前の記事では
結果としてエルヴィンとアルミン
それぞれの夢の二択でどちらかを
選んだのではないかという事を書いた
それぞれの夢の詳細は
前回の記事で書いたので割愛
気になる方は前回の記事を読んで下さいw
で、今回は
白夜でのリヴァイくんの
選択を後押ししたものと
伏線の張り方の巧みさなんかを書こうかなと
何故エルヴィンをあそこで死なせたか
『白夜』ではアルミンを生かした事に
『兵長...どうして...ですか?』と尋ねた
フロックに対して
『こいつを許してやってくれないか?』
『こいつは悪魔になるしかなかった
それを望んだのは俺達だ...』
『その上...
一度は地獄から解放されたこいつを...
再び地獄に呼び戻そうとした...』
『お前と同じだ』
『だがもう...休ませてやらねぇと...』
とリヴァイくんは語った
何故リヴァイくんは
『エルヴィンの力無しに
人類は巨人に勝てない...』
とさえ言っていたのに
エルヴィンに対して
『もう…休ませてやらねぇと…』
という心境にいたったのか?
そこには数えきれなくらいの伏線がある
瀕死のエルヴィン団長を担ぎ込んだフロックは
担ぎ込むまでの状況と
自分の心情を吐露していた
『みんな殺されたんだ』
『遠くから飛んでくる石つぶてに
みんな...グチャグチャにされた』
『まだ息のあるエルヴィン団長を
見つけた時は...とどめを刺そうとした...』
『でも...』
『それじゃ生ぬるいと思った...
この人には まだ地獄が必要なんじゃ
ないかって』
諫山さんは絵はあまり上手くないけど
表情の描き方や見せ方が巧いと
よく見かけるが
フロックの言葉を聞いた
リヴァイくんのハッとした表情も
なかなか秀逸だ
〝人類の勝利〟と言うバカでかい大義名分で
エルヴィン団長を生かそうとしているが
生き続ける事が
エルヴィン個人にとって果たして
いい事なのか否かという視点に
リヴァイくん自身が気づいて
ハッとした表情を浮かべたのだと思った
リヴァイくんもフロックの気持ちが
わからないはずはない
リヴァイくん自身エルヴィンの智略のせいで
ファーランとイザベルという
信頼していた仲間を亡くしている
あの時のリヴァイくんなら
同じ考えを持っただろう
この悪魔(エルヴィン)には
もっと地獄が必要だと
しかし、調査兵団で人類の未来の為に
巨人と死闘を繰り返す中
リヴァイくんも
力では勝てない巨人を絶滅させるには
〝智略〟が必要と痛感しただろうし
その面では絶対的な信頼をエルヴィンに
寄せるようになっていた
そして、同時に
エルヴィンはリヴァイくんにとって
共に死線をくぐり抜けてきた大切な仲間
かけがえのない存在にもなっていった
だからこそ〝エルヴィン個人にとって〟
という視点にハッとさせられたのかなと思う
それまでは〝人類の勝利の為〟という
目線からしか見ていなかったから
もしくは
エルヴィン個人を思った時に
エルヴィンの〝ある夢〟が
頭に浮かんだからがも知れない
エルヴィン団長は
心臓を捧げ人類の為に巨人と戦っている
誰もがそう思っていた
もちろん身近にいたリヴァイくんも
ところが
前回の記事で書いたように
実際のエルヴィンはある重苦しい夢の為に
調査兵団に入って戦っていた
その夢とは
〝亡き父の仮説を証明する〟
と言うもの
エルヴィンが〝人類の存続〟の為
〝人類の勝利〟の為だけに
戦っているわけでないと
初めてリヴァイくんが気づいたのは
13巻の第51話で
〝巨人が元は人間であった〟という可能性が
濃厚になった時に
『じゃあ...何か?』
『俺が必死こいて削ぎまくってた肉は
実は人間の肉の一部で』
『俺は今まで人を殺して
飛び回って...ってのか?』
と、たぶん人を殺した事くらいありそうな
リヴァイくんでさえも動揺していた
その横でエルヴィンが笑みを浮かべていたのだ
以前に下の記事で書いたように
正体不明でも完全なる悪を殺すのには
なんの罪悪感も抱かなくても
相手が人間となれば多少なりとも動揺する
ところがエルヴィンは
自分の夢である父の仮説の証明に
大きく近づける事実が明らかになったことの
喜びを隠す事ができず自然と笑みを浮かべた
自分の仮説は強ち間違いではなかったと
その笑みに気づいたリヴァイくんの
『お前...何を...笑ってやがる
...気持ちの悪い奴め...』
という言葉でエルヴィンは我に返るわけだが
その場にいた皆が巨人が人間であった事に
動揺し深刻な顔をする中
笑みをもらすエルヴィンはかなり気持ち悪い
やはりその表情もある意味秀逸だ
並べて描かれているリヴァイくんの
表情からもかなりの衝撃が感じられるし
この対比は天才的だと思う
意味がわかると余計に、、、
しかし
この時点ではまだエルヴィンの〝夢〟に
ついて具体的な事は一切触れられていない
登場人物も読者もこの笑みの真意を
知る由がないのだ
この1ページは非常に良く表情と間合いで
語っているなぁと感心する
漫画で〝間〟で語ったり
〝表情〟で語るのって映像よりも難しいと思う
間合いの長さは読者に委ねられるし
一瞬を描く事はできても
表情の変化の過程を全ては描けない
ここも読者の想像力に委ねられる
にもかかわらずエルヴィンの不気味な笑みを
目撃してから
『てめぇが調査兵団やってる
本当の理由はそれか?』
という結論に至るまでの流れを上手く
描いていると思う
が
伏線とはいえ『白夜』までは
なんと8冊もある
話数にして33話もあるのだ
連載にしたらどれくらいの月日だろうか?
この謎の笑みを忘れてる...
大半の人は忘れているに違いないw
これ以降、小出しにエルヴィンの
〝夢〟が明らかになる
諫山さんは小出しに仕方も巧みだ
ただ連載という形にそれがマッチしてる?
どちらかと言うと向いてないのでは?
なんて思ったりもする
諫山さんの伏線は何度も往復して
やっと納得いく感じなので
個人的には単行本を大人買いして
正解だったと思うw
エルヴィンが自分の抱き続けた
〝夢〟を初めて語り出したのが
14巻の第55話
ピクシス司令に子供の頃の出来事を語る形で
エルヴィンは秘めていた想いを告白している
『いつの間にか父の仮説は
私の中で真実となり私の人生の使命は
父の仮説を証明する事になりました』
『白夜』でのリヴァイくんの選択には
エルヴィンが子供の時に父に質問した
〝あるセリフ〟がすごくキーになるのに
この時点では明かされていない
この時のエルヴィン少年が教室で父親に
〝ある質問〟をするシーンは
この後何回かでてくる
キーになる絵を何回も使う使い方も
巧いなぁと思う
絵に意味を持たせるのが巧いというか、、、
このシーンの絵が次に使われたのは
15巻の第62話で描かれた
ザックレー総統との対話の中でだ
55話では〝人生の使命〟と言っていたものを
ここでは〝夢〟と言っている
人類の為を本当に考えるなら
〝人〟よりも人類が尊いというのなら
この革命はやる必要がなかったのではと
後悔の色を見せるエルヴィン
エルヴィンの本心がそこにないと
勘づいたザックレー総統に
『私はこの革命が
人類にとって良いか悪いかなどには
興味がない』
『私も大した悪党だろ?
しかしそれは君も同じだろう?』
『君は死にたくなかったのだよ
私と同様に人類の命運よりも
個人を優先させるほど』
とカマかけられ
『君の理由は何だ?
次は君が答える番だぞ』
と迫られてエルヴィンは口を開く
この時あのシーンの絵を使っているが
ここでザックレーとの対話のシーンは終わる
親切に〝夢〟の詳細を説明してはくれない
7話も離れているのにw
この教室の絵をエルヴィンの夢の
アイコンとして使っている
気になる人はこの絵を最初に描いた
55話を見てねとでも言うように
で
この時のエルヴィン少年が父に質問した
〝あるセリフ〟がすごくキーになる
と書いたのですが
それが初めて出てくるのが
21巻 第84話の『白夜』なんです!
人払いをしたリヴァイくんは
迷いつつもエルヴィンに注射をしようと
注射器をあてたその時に
意識のない筈のエルヴィンが
腕を上げ注射器を撥ね除ける
この右下の構図が上手いなぁと
本当に払いのけたようだが
次に続くコマで払い除けたのでない事がわかる
それがこちら
エルヴィンは挙手をして
〝あの質問〟をしていたのだ
父を死に追いやった全ての始まりの質問
リヴァイくんの目の前に横たわっていたのは
調査兵団団長エルヴィン・スミスではなく
〝あの日〟のエルヴィン少年だった
リヴァイくんがエルヴィンの夢について
どこまで知っていたかわからないけど
注射を撥ね除けられたあとの言葉が
このセリフでなければ
まだ注射を打った可能性はあると思う
例えば『兵士よ進め!兵士よ戦え!』とかね
この時点でも漫画では〝あの質問〟は虫食いだ
『先生......に...いないって....
.....やって調べたんですか?』
この質問の全文は次の第85話で
ナイル(エルヴィンの訓練兵時代の同期)の
回想の中にやっと出てくる
この時の絵と他の時との違いは
エルヴィン少年が挙手している事だ
まるであの屋根の上での様に
しかし、コマ割りに注意して
初めてこの絵が出てきた55話を見ると
その直前のカットは挙手した手越しの教師で
『先生』と吹き出しがある
もし、最初から1コマ内に挙手した
エルヴィン少年を描かなかったのが
84話でエルヴィンが
注射器を払い除けたというミスリードを生み
次の挙手しているエルヴィン団長のコマを
より印象づける為だとしたら。。。
もう天才でしょと思うw
この構図もこれだけ見ると
払い除けたようにしか見えないからね
たぶん意識的にしているんだろうなぁ。。。
エルヴィンの最期の言葉を
調査兵団団長にまで上り詰める
エルヴィンの人生の〝始まりの言葉〟にした
エンディングへ向かい
ジークとエレンが待ち合わせをしたのが
〝始まりの地〟シガンシナ区だったり
そして、キーワードとなる
〝誰が始めた物語〟とか。。。。
諫山さんは始めが好きなのかしら?
まぁ、始めがあるから終わりがあるって
事なのかも知れないけど
この〝質問〟を聞くまでの間に
リヴァイくんはいくつかのシーンを
回想するんだけど
その一つに、伯父であるケニーの
最後の言葉がある
『みんな何かに酔っ払ってねぇと
やってらんなかったんだな…』
『みんな...何かの奴隷だった...』
『あいつでさえも...』
ケニーのいう〝あいつ〟はウーリーだけど
ケニーとウーリーの関係性と
リヴァイくんとエルヴィンの関係性は
よく似ているし
ここで『あいつでさえも』は
エルヴィンといってもいいと思う
エルヴィンもまた夢の奴隷であり
わかっていながらも〝夢〟を諦めきれず
身動きがとれなくなっていた
だから珍しくリヴァイくんが
他人の行動を選択をしたのだ
(リヴァイくんは基本〝自分で選べ〟な人)
〝あの質問〟を瀕死のエルヴィンが言った後
珍しく他人の行動を選択した〝その時〟の事を
回想するのだけど、
回想なのに、そこで初めて出てくるコマがある
それがまたズルい演出だなぁと思うけど
かなり長くなったのでそれは別で
果たしてこんな長文ここまで読んでくれる人
いるのだろうか?
いたら是非スキをw