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耳鳴り

聴力が時々少し弱る。

4年半ほど前、低音障害型感音難聴という、漫画に出てくる必殺技みたいな長い名前の難聴に罹った。
キィーーンという大きな耳鳴りと共に左耳が塞がる感じがした。それが何日も続いた。耳鳴りは何種類かの音が重なって聴こえる。ピィーとかヒィーンとか。音階的にはファソラ辺り。それから、トンネルの中にいる時みたいにゴオーッと風が動くような音もする。周囲の音は聞こえづらいのに、自分の声が耳の中で反響してやけに大きく聞こえる。診察室での問診の間、酷くそわそわした。

検査をすると、会話を聞き取るのに必要な低音の領域の数値が悪かった。その時に分かったのだけれど、普段から最も低い音の聞こえがよくない。
鼓膜は綺麗で、中耳炎でも内耳炎でもなかった。耳の奥にある蝸牛の形をした器官の不具合なのだそうだ。かかりつけ医のおじいさん先生はすごく心配そうにしながら、「紹介状を書くから診てもらってね」と言った。

紹介された先で、改めて検査した結果、難聴の診断が下りた。待合室で疾病名を検索してみると、「めまいのないメニエール病とも言われ、再発する場合も」とあった。まずメニエール病がよくわからない。世の中には本当に様々な疾患がある。病いになる度にそれをまた一つ知る。半ば感心しながら、耳の閉塞感に半ば不便を感じながら、処方されたステロイドを服用して治した。

それから月日がめぐり、去年になって、今度は右耳の耳鳴りと閉塞感が酷くなった。覚えがあるぞ、この感じ。任せろ。とばかりに耳鼻科へ向かう。その道すがら、不意に視界がグラグラと揺れた。目眩だ。まっすぐ歩けない。恐る恐る一歩を進む。

医師は検査の結果を私に見せながら、

「30より下方向にグラフが行くと軽度の難聴。会話に必要な領域が30より少し下回っているね。軽い突発性難聴かメニエール病かもしれないね」

と言った。

最近もまた、左耳に同じ症状が出たので診てもらったところ、同様に軽い難聴もしくはめまいがあればメニエール病との診断が下った。

そんな感じで 、耳の聞こえが時々少し悪くなる。

日々の中で、音楽やラジオを聴く時はスマートフォンから直接鳴らしている。イヤホンはあまり使わない。それでもこの先も聴力はちょっとしたきっかけで浮き沈みするのだろう。

人の体は少しずつ、自然に任せて衰えていく。その流れとはまた別の、少しはやい速度で私の聴力は落ちていくのかもしれない。それでもお医者さんに診てもらって、おくすりを出してもらって、大事に使っていければそれでいい。

夜、眠る時に耳を澄ませるといつも耳鳴りがしている。世界は全くの無音ではないのだ。自分以外の皆はどんな耳鳴りの音を聴いているのだろう。メロディのように聴こえる人もいるのだそうだ。人の体は不思議だなんて思いながら、ウトウトと眠りにつく。


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もちだみわ
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